ブログ
認知症=治らないは誤解?治療可能な認知症を見逃さないために
治せる認知症とは?まずは知っておきたい基本
「認知症=治らない」と思っていませんか?
実は、治療によって改善が期待できる「治療可能な認知症(treatable dementia)」というタイプが存在します。
これは、アルツハイマー病やレビー小体型認知症のような進行性の認知症とは異なり、原因となっている病気や状態を治療すれば、認知機能が改善または回復する可能性があるのが特徴です。
見逃されてしまうと、適切な治療が遅れて生活の質(QOL)が大きく低下するおそれがあります。
しかし、早期発見・早期治療ができれば、社会復帰も目指せるケースがあるのです。
代表的な治療可能な認知症の原因
【ビタミン欠乏性認知症】
ビタミンB1(チアミン)やB12の欠乏は、脳に深刻な影響を与えることがあります。
特にB1欠乏によって起こる「ウェルニッケ脳症」や「コルサコフ症候群」は、重症化すると記憶障害や錯乱を引き起こします。
【甲状腺機能低下症】
甲状腺ホルモンが不足すると、うつ状態や記憶障害が現れることがあります。
薬でホルモンを補うことで、症状が改善することが多いです。
【正常圧水頭症(NPH)】
脳の中の髄液がたまりすぎて起こる病気です。
「歩行障害」「尿失禁」「認知機能の低下」の3つが特徴で、脳室に管を入れて髄液を外に逃がす手術(シャント術)で症状の改善が期待できます。
【慢性硬膜下血腫】
頭部外傷の後などに、脳の表面にじわじわと血がたまり、脳を圧迫する病気です。
手術で血腫を除去すれば、症状がすみやかに改善することもあります。
【うつ病による仮性認知症】
高齢者のうつ病では、無気力や記憶力の低下が前面に出て、「認知症に見える」状態になることがあります。
抗うつ薬や精神療法で回復が見込めます。
どうすれば見分けられる?treatable dementiaのサイン
【急に症状が出たときは要注意】
進行性認知症はゆっくりと悪化していくのに対し、治療可能な認知症は数週間〜数か月で急に認知機能が低下することがあります。
「急に物忘れがひどくなった」「急に寝たきりになった」などの場合は、医療機関での早期検査が大切です。
【歩き方や排尿にも注目】
正常圧水頭症では、「歩幅が小さく、すり足のように歩く」症状や、トイレの回数が急に増えるといった運動・排尿の変化がヒントになります。
【薬やサプリ、飲酒歴の確認も重要】
慢性的なアルコール摂取や自己判断によるサプリの多用も、ビタミン欠乏を招くことがあります。
家族と一緒に、生活習慣や服薬状況をしっかり確認することが大切です。
見逃さないために:検査と治療の流れ
treatable dementia を疑う場合、次のような検査が行われます。
- 血液検査:ビタミンB1、B12、甲状腺ホルモンなど
- 頭部MRIやCT:慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症の確認
- 心理検査:うつ病やうつ状態の評価
- 髄液検査(必要時):髄液圧の測定やアルツハイマー病との鑑別
原因に応じて、薬物治療、栄養補充、外科的処置、精神科的介入などが行われます。
早期の対応で症状が改善することが多いため、「年のせいだから仕方ない」と思い込まず、一度は専門医の診察を受けることが重要です。
まとめ
治療可能な認知症(treatable dementia)は、見逃さなければ回復のチャンスがある認知症です。
「最近、急に様子がおかしい」「うつっぽいだけかと思っていたけど物忘れも出てきた」など、気になる変化があれば、早めに医師に相談してみましょう。
【引用・参考文献】
- Victor M, Adams RD, Collins GH. The Wernicke-Korsakoff Syndrome.
- Relkin N. Normal Pressure Hydrocephalus. N Engl J Med.
- Tan IL, et al. Treatable causes of dementia. Nat Rev Neurol.
- 日本認知症学会「認知症疾患治療ガイドライン2023」
当院の取り組み
那覇市の「シーサー通り内科リハビリクリニック」では、専門医がtreatable dementiaの早期発見と治療に取り組んでいます。
早急に頭部CT・血液検査・心理検査などによる総合的な評価にとりかかります。
「治る認知症かもしれない」と思ったら、どうぞお気軽にご相談ください。
