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一般内科生活習慣病(高血圧・糖尿病など)

2型糖尿病の予防法、どれが効く?21年研究が示す答え

糖尿病は防げる時代へ ―21年の追跡研究が示した予防効果とは―

2型糖尿病は、生活習慣の工夫や適切な治療で「予防」できる時代になりつつあります。
そのことを明確に示したのが、アメリカで行われた「糖尿病予防プログラム(DPP)」という長期研究です。

この研究は、生活習慣改善(運動・食事)やメトホルミンという薬による糖尿病発症の抑制効果を、なんと21年という長期にわたって追跡した世界的にも貴重なものです。

本記事では、この研究の最新結果をもとに、糖尿病予防について【生活習慣】【薬の効果】【個別化】の3つの視点からわかりやすく解説します。

生活習慣が糖尿病を遠ざける

研究では、プレ糖尿病(糖尿病予備軍)の方を対象に、「週150分以上の中等度の運動」「体重の7%減少を目指す食事管理」などの「集中的な生活習慣介入(ILS)」を実施しました。

その結果、最初の3年間で糖尿病の発症率は58%も減少。
21年間の追跡調査でも効果は持続し、糖尿病を平均3.5年間遅らせることができました。

このように、適切な運動と食事管理が長期にわたり「糖尿病の発症を先延ばしにする」効果があると確認されました。

薬も有効な手段:メトホルミンの長期効果

一方、食事や運動が難しい方に対しては、糖尿病治療薬「メトホルミン(850mgを1日2回)」を使用。
この薬は日本でも広く使われており、血糖を下げる作用があります。

DPP研究では、メトホルミン群も糖尿病の発症を平均2.5年間遅らせる効果があり、発症率を31%低下させました。
21年間の追跡でも、効果は完全には失われず、特に「若年層」でより高い予防効果が見られました。

薬だけに頼るのではなく、生活習慣と組み合わせることが望ましいですが、状況に応じた「現実的な選択肢」として非常に重要です。

一人ひとりに合った“予防”を

この研究が示したもう一つの重要なポイントは「効果の個人差(ヘテロジェネイティ)」です。

たとえば、以下のような傾向が見られました:

  • 空腹時血糖やHbA1cが高い人は、生活習慣改善による予防効果がより高い
  • 若年層ではメトホルミンの効果がより持続的に見られる

つまり、糖尿病のリスクや体質に応じて、「誰にどの方法が合うか」を考える“プレシジョン予防(個別化医療)”の考え方が今後ますます重要になります。

まとめ:糖尿病予防は“今”始められる

今回の研究は、生活習慣の改善や薬の力によって、糖尿病の発症を平均2〜3年遅らせられることを21年にわたって証明しました。

しかも、介入の効果は「最初の数年に大きく現れる」ため、早めの取り組みがとても重要です。
「糖尿病予備軍」と診断された段階から予防を始めれば、将来的な健康リスクを確実に減らすことができるのです。

【当院では、糖尿病の早期発見と予防に力を入れています】

那覇市の「シーサー通り内科リハビリクリニック」では、血糖・HbA1cチェック、内臓脂肪CT、運動指導、栄養相談などを組み合わせた糖尿病予防プログラムを提供しています。
生活習慣改善が難しい方には、薬物療法を含めた個別対応も可能です。

気になる症状や健診結果がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

【参考文献】

  • Knowler WC, Doherty L, Edelstein SL, et al. Long-term effects and effect heterogeneity of lifestyle and metformin interventions on type 2 diabetes incidence over 21 years in the US Diabetes Prevention Program randomised clinical trial. The Lancet Diabetes & Endocrinology. 2025. https://doi.org/10.1016/S2213-8587(25)00022-1
  • 米国糖尿病予防プログラム(DPP)およびDPPOS研究