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【嚥下障害と肺炎リスク】認知症患者さんに必要な日常ケアとは
誤嚥性肺炎とは?認知症患者さんに多い理由
誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は、食べ物や唾液が誤って気道に入ることで発症する肺炎です。
特に高齢者、そして認知症を持つ方に多くみられ、命にかかわることもあります。
実は、認知症患者さんが肺炎を起こしやすいのには、いくつか理由があります。
最近発表された研究では、**口腔衛生不良(口の中の清潔が保てないこと)と嚥下障害(うまく飲み込めないこと)**が大きなリスク要因であることが明らかになりました。
これらは日々のケアで改善できる可能性があるため、正しい知識と対策がとても重要です。
口腔衛生不良と嚥下障害が誤嚥性肺炎を招く仕組み
認知症が進行すると、日常生活の自立が難しくなり、歯みがきやうがいなどの口腔ケアが不十分になりがちです。
その結果、口の中に細菌がたまり、唾液や食べ物を飲み込むときに、これらの細菌が肺に入り込んでしまう危険が高まります。
さらに、嚥下障害があると、食べ物や飲み物がうまく食道に送られず、誤って気管に入りやすくなります。
特に意識がぼんやりしていると、むせる反応(咳反射)も弱くなり、異物が肺に入り込みやすくなるのです。
今回の研究では、実際に認知症患者さんの入院データを分析し、肺炎を発症した方は、発症しなかった方に比べて、口腔衛生の悪化と嚥下障害を持つ割合が明らかに高かったことが示されました。
誤嚥性肺炎を防ぐためにできること
誤嚥性肺炎は、正しいケアで予防できる可能性があります。
具体的には以下のポイントが重要です。
- 毎日の口腔ケア(歯みがき・舌みがき・うがいなど)を欠かさないこと
- 嚥下機能のチェックを定期的に行い、必要に応じてリハビリテーション(飲み込み訓練)を受けること
- 食事形態を工夫(やわらか食やとろみ食など)して、誤嚥を防ぐこと
- 脱水防止のため、こまめに水分補給を行うこと
- できるだけ意識レベルを保つ(日中の活動を促す、昼寝を短くするなど)こと
また、今回の研究では、身体拘束や移動能力の低下も肺炎リスクに関係する可能性が示唆されています。
たとえ重度の認知症であっても、なるべく自然な生活リズムや身体の動きを保つことが、健康維持には欠かせません。
まとめ:日々のケアが命を守るカギ
今回の研究から、認知症患者さんにおける誤嚥性肺炎は、単なる「年齢のせい」ではないことがわかりました。
口腔ケアの徹底と嚥下機能の維持が、肺炎予防にとても重要なのです。
家族や介護スタッフの皆さんにとっては、毎日の小さなケアが患者さんの命を守る大きな力になります。
もし口腔ケアや嚥下障害について不安がある場合は、早めに医療機関に相談しましょう。
当院では、認知症患者さんの肺炎予防に力を入れ、口腔ケア指導や嚥下リハビリテーションにも対応しています。
少しでも心配なことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。
【引用文献】
Funayama M, Koreki A, Takata T, et al. Pneumonia Risk Increased by Dementia-Related Daily Living Difficulties: Poor Oral Hygiene and Dysphagia as Contributing Factors. Am J Geriatr Psychiatry. 2023;31(11):877-885. doi:10.1016/j.jagp.2023.05.007
