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脳神経内科

そろばん教育が子どもの脳を鍛える!視空間ワーキングメモリへの効果とは?

そろばん学習で子どもの記憶力が向上?最新研究で明らかに!

学校の授業以外で「そろばん」を習わせるご家庭は少なくありません。
実は、そろばんには計算力を高めるだけでなく、「視空間ワーキングメモリ(VSWM)」という記憶力の一種を伸ばす効果があることが、最新の研究で報告されました。
今回はその研究内容と、そろばんが子どもの脳に与える影響についてわかりやすく解説します。

視空間ワーキングメモリとは?

視空間ワーキングメモリ(VSWM)とは、目で見た情報や物の位置を短時間記憶して処理する能力のことです。
たとえば、「買い物リストを頭に思い浮かべながらスーパーを歩く」「地図を見て道順を記憶する」といった場面で使われます。

このVSWMは、子どもの読み書きや数学の基礎能力にも深く関係しており、発達段階で鍛えることで将来的な学習にも良い影響を与えることが知られています。

研究の内容と結果:そろばんで記憶力がアップ?

今回の研究は、ガーナの小学校に通う9~11歳の児童200人を対象に行われました。
以下のような方法で検証されました:

  • そろばん学習を行ったグループ(90名)
  • そろばん学習を行っていないグループ(100名)

両グループに対して、以下の3つのテストで記憶力を測定しました。

使用テスト内容
Raven色付きマトリックス図形の中からパターンを読み取る力を測る
数字記憶テスト数字を前後で記憶して再現する
文字消しテスト指定された文字を多数の文字列から素早く見つける

その結果、そろばん学習を行った子どもたちの方が、視空間ワーキングメモリの向上が明らかに見られました。
とくに数字記憶テストでは、4ヶ月間で大きくスコアが伸びたことが統計的にも確認されました(p = 0.001)。

なぜそろばんが脳に良いのか?

そろばんを使った計算では、単に指を動かすだけでなく、頭の中に「イメージ上のそろばん」を思い浮かべて計算する訓練が行われます。
この“空間を使った記憶”が、視空間ワーキングメモリを活性化させると考えられています。

また、こうした訓練を続けることで、前頭葉・頭頂葉・後頭葉など脳の複数の領域が活性化し、結果的に計算力だけでなく、集中力や記憶力の向上につながることがMRI研究でも報告されています。

まとめ:教育現場への示唆と今後の可能性

この研究から、そろばん学習は「計算の道具」という枠を超えて、子どもの脳の発達、とくに視空間ワーキングメモリの向上に有効であることが示されました。
学校教育に取り入れることで、より効果的な学習支援が可能になるかもしれません。

また、今後はより長期間の観察や異なる年齢層での検証によって、そろばん教育のさらなる効果が明らかになることが期待されます。

【参考文献】

Ansah EE, Nyarko NY, Kumador DK, Owusu-Bempah J, Mahama S. (2025). Visuospatial working memory of abacus trained and untrained children. PLOS ONE, 20(6): e0325525. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0325525