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片頭痛の市販薬に頼りすぎていませんか?〜日本の最新調査で見えたリスク〜
市販薬に頼りすぎる片頭痛患者たちの実態
最近の大規模な全国調査(OVERCOME Japan第2研究)により、片頭痛患者の約73%が市販薬(OTC薬)を使用していることが明らかになりました。
とくに驚くべきは、そのうちの多くが処方薬よりも市販薬を多く使用していたことです。さらに医師と市販薬の使用について話した人は全体のわずか14.6%。この結果から、多くの患者さんが自己判断で片頭痛に対処しており、医療とのつながりが希薄になっている現状が浮かび上がりました。
市販薬の利点は、すぐ手に入る・手軽・安価といった点ですが、繰り返し使用することで「薬物乱用頭痛(MOH)」を招く危険があります。
薬物乱用頭痛(MOH)とは?そのリスクを解説
薬物乱用頭痛(MOH: Medication Overuse Headache)とは、頭痛を抑える薬を月に10〜15日以上使い続けることでかえって頭痛が悪化する状態です。
これは、「市販薬が効かなくなってきた」「薬を飲まないと不安」といった状態に陥ることで生じます。特に、NSAIDs(ロキソニンなど)や複合鎮痛剤を多用する人に多いとされ、今回の調査でも市販薬を月に10日以上使う人のうち約30%がMOHの疑いがあるとされました。
MOHは一度起こると慢性片頭痛(CM)へ移行するリスクも高く、通常の治療では治りにくくなる可能性があります。
ですので、頭痛の頻度が月に10日以上ある方や、市販薬を頻繁に使っている方は要注意です。早めに専門医に相談することが予防の第一歩になります。
片頭痛治療の新時代:専門薬と医師との対話の重要性
市販薬で片頭痛を「自己管理」する人が多い背景には、「どうせ病院でも同じ薬しか出ない」「病気というほどではない」といった誤った思い込みがあります。
しかし実際には、トリプタン製剤やCGRP関連薬など、片頭痛に特化した新しい治療薬が次々に登場しています。
今回の調査では、片頭痛に特化した薬(例:トリプタン)を使用していたのは全体の13.5%にすぎず、65.5%の人はその存在すら知らないという結果も出ています。
この背景には、片頭痛治療の専門医が全国に少ないことや、診療時間の短さから十分な説明ができていない医療現場の実情も関係していると考えられます。
つまり、患者さん自身が正しい知識を得て、医師と市販薬や治療薬についてしっかり話すことが、未来の頭痛を減らすカギになります。
✍まとめ
- 日本では片頭痛患者の約3/4が市販薬を使用しており、医師との相談が不足している。
- 市販薬の乱用はMOH(薬物乱用頭痛)を引き起こすリスクがあり、慢性化につながる。
- トリプタンやCGRP関連薬といった専門治療薬の認知度が低く、医師との対話が重要。
- 月10日以上頭痛がある方、市販薬を頻繁に使う方は医療機関の受診を検討してください。
📚引用文献
Ishii R, et al. Real-world use of over-the-counter medications by patients with migraine in Japan: OVERCOME (Japan) 2nd study. J Headache Pain 2025; 26:107.
https://doi.org/10.1186/s10194-025-02046-8
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