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「コーヒーで脳が若返る?高齢者の認知機能とカフェインの意外な関係」
コーヒーと脳の健康:高齢者の認知機能を守る新たな一杯
近年の研究により、日常的な「コーヒー習慣」が高齢者の脳の健康に深く関わっている可能性が示されています。今回は、アメリカの大規模調査「NHANES」を用いた最新の研究結果をもとに、コーヒーと認知機能の意外な関係について解説します。
【コーヒーと認知機能の関連:多く飲む人ほど頭が冴える?】
研究では、60歳以上の2,254人を対象に、1日のコーヒー摂取量と認知機能の関係を調べました。その結果、1日に約480g以上のコーヒーを飲む人は、認知機能テスト(CERAD)の成績が良い傾向が見られました。
- コーヒー摂取量が多いグループは、記憶力・言語能力・情報処理速度の低下リスクが明らかに低いことが確認されました。
- 特にカフェイン入りコーヒーの効果が大きく、1日477.9g以上飲んでいる人では、記憶力低下のリスクが約44%低下していました(オッズ比0.56)。
ただし、飲みすぎには注意も必要で、効果が出るのは「適度な量」を守った場合に限られます。
【カフェインの脳への作用:眠気覚ましだけじゃない多面的な効果】
カフェインは、脳内で眠気を引き起こす「アデノシン」という物質の働きを妨げることで知られています。それだけでなく、記憶や注意力、気分の改善にも関与しています。
- 動物実験では、カフェインがアルツハイマー病の原因物質「アミロイドβ」の産生を抑える働きがあることも示されています。
- また、カフェインはドーパミンやアセチルコリンなど、脳の神経伝達に重要な物質にも作用し、認知症予防の可能性が期待されています。
ただし、カフェインの効果には個人差があり、「摂取量が多すぎると逆効果になる」という“U字型”の関係も報告されています。
【ALPという酵素に注目:コーヒーが脳の炎症を抑える?】
この研究で特に注目されたのが、「ALP(アルカリホスファターゼ)」という血液中の酵素です。
- ALPの値が高いと認知機能が低下するリスクが高く、逆にカフェイン摂取量が多いとALPの値が下がることが確認されました。
- 遺伝的解析(メンデルランダム化)でも、カフェインがALPに影響を与え、それが認知機能の改善に間接的に寄与している可能性が示唆されています。
ALPはこれまで骨や肝臓のマーカーとして知られていましたが、今後は**「脳の健康指標」**としての役割も注目されそうです。
まとめ
コーヒーは単なる嗜好品ではなく、**高齢者の認知機能を守る「脳の味方」**である可能性があります。1日2〜3杯程度のコーヒーが、記憶力の維持や認知症予防につながるかもしれません。
もちろん、飲みすぎやカフェイン過敏な方には注意が必要です。普段の生活習慣を見直すきっかけとして、「今日のコーヒー」を少し意識してみてはいかがでしょうか?
【参考文献】
- Li J, Yu K, Bu F, et al. Exploring the impact of coffee consumption and caffeine intake on cognitive performance in older adults: a comprehensive analysis using NHANES data and gene correlation analysis. Nutrition Journal. 2025;24:102. doi:10.1186/s12937-025-01173-x
