ブログ
見逃さないで!若年層に増加中の消化器がんと予防法
【若年層に広がる“早期発症の消化管がん”とは?】
近年、50歳未満で診断される「早期発症の消化管がん」が世界的に増えています。
特に大腸がん・胃がん・食道がん・膵臓がんといった部位で顕著な増加が見られ、
アメリカではこれらが若年層におけるがん死亡の主因のひとつとなっています。
なかでも大腸がんは圧倒的に多く、早期発症の消化管がん全体の54%を占めます。
若年層ががんになる原因には、生活習慣や遺伝的要因などさまざまな背景が関係しています。
この記事では、最新の知見に基づき、「リスク要因」「症状と診断」「予防と治療」の3つの観点から詳しく解説します。
【リスクを高める原因とは?:食生活・肥満・遺伝に要注意】
● 生活習慣の影響
・砂糖入り飲料や加工食品の摂取過多
・運動不足、長時間の座位行動
・喫煙やアルコール摂取
これらは、がん発症リスクを確実に高める要因です。特に「ウエスタン型食生活(赤身肉・加工肉・高脂肪食品中心)」は、若年層の大腸がんと強く関連しています。
● 肥満とがんの関係
肥満は慢性炎症やインスリン抵抗性を引き起こし、発がんのリスクを高めます。
BMIが30以上の人は、大腸がん・膵がん・胃がんのいずれでもリスクが1.7〜1.9倍に上昇します。
● 遺伝的要因
リンチ症候群やBRCA遺伝子変異など、家族性のがん体質も大きな要因です。
特に若くしてがんになった場合は、15〜30%が遺伝的要因とされています。
【早期発見のカギ:症状と診断のポイント】
● よくある初期症状
・血便(特に便に混じるタイプ)
・腹痛や便通異常(便秘・下痢)
・体重減少や食欲不振
これらの症状がみられた場合は、痔と決めつけず早めに内視鏡検査を受けることが大切です。
特に大腸がんは、左側結腸〜直腸に多く、出血症状が出やすい傾向があります。
● 診断が遅れやすい背景
若年層は「がんとは無縁」と思われがちで、医療機関の受診や精密検査が遅れることがあります。
しかし、若年層のがんは進行度が高く、診断時に進行がんである割合が高いと報告されています。
【予防と対策:検診・生活習慣の改善がカギ】
● 検診の年齢と対象
アメリカでは2021年に大腸がんのスクリーニング開始年齢を「50歳→45歳」に引き下げました。
家族歴や遺伝的リスクがある場合は、それより早い年齢での検査が推奨されます。
● 若いうちからできる予防法
・野菜や果物、食物繊維の多いバランスの良い食事
・運動習慣の維持(1日30分の有酸素運動など)
・禁煙・節酒の徹底
・適正体重の維持(BMI25未満を目標に)
● 遺伝子検査の重要性
早期発症の消化管がんでは、治療方針や家族への対策を考える上で、遺伝子検査が重要です。
とくに膵がんでは、BRCA変異があれば「PARP阻害薬」が有効なこともあります。
一方、日本では国が推奨するがん検診(がん対策基本法に基づく5がん検診)は以下の通りです。
- 大腸がん検診:40歳以上を対象に、便潜血検査(年1回)
- 胃がん検診:50歳以上を対象に、内視鏡検査またはX線検査(2年に1回)
- 肝臓がん検診:B型・C型肝炎ウイルス陽性者が対象(超音波+血液検査)
- 食道がん検診:定期的な集団検診は未実施。ただし、症状がある場合やリスクが高い人(喫煙・飲酒・逆流性食道炎など)は内視鏡が推奨されます。
- 膵がん検診:現在、公的な定期検診の対象ではありませんが、家族歴がある方や膵囊胞、慢性膵炎などのリスク因子がある場合は、医師と相談の上で超音波やCTなどの精密検査が勧められます。
家族歴や遺伝的リスクがある場合は、これらの推奨年齢よりも早めの検査開始が必要になることもあります。
特に大腸がんに関しては、親や兄弟姉妹が若くして診断されたことがある方は、40歳未満でも医師の判断で内視鏡検査を行うことが推奨されます。
【まとめ:若年がんのリスクに早めの備えを】
かつては中高年の病気とされていた消化管がんですが、
今や20〜40代でも無視できないリスクになっています。
生活習慣の見直し、定期的な検診、症状への早期対応が、未来の健康を守るカギです。
「まだ若いから大丈夫」とは思わず、正しい知識と行動でがんに立ち向かいましょう。
【参考文献・出典】
- Jayakrishnan T, Ng K. Early-Onset Gastrointestinal Cancers: A Review. JAMA. Published online July 17, 2025. doi:10.1001/jama.2025.10218
