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「退院後も安心できない」初回てんかん重積から3年後の生存率と再発リスク
初めてのてんかん重積後も油断できない?3年後に再発・死亡するリスクとは
てんかん発作が長時間続く、あるいは何度も繰り返される「てんかん重積状態(Status Epilepticus、以下SE)」は、命に関わる緊急状態です。病院で治療され一命をとりとめたとしても、その後の再発や死亡リスクはどれくらいあるのでしょうか?
2025年に発表されたフランスの全国規模の大規模研究から、その答えが見えてきました。
【1】3年間で1/4が死亡、1/6が再発という衝撃
この研究では、2011年から2016年の間に初めてSEで入院し、生存退院した患者37,930人(中央値年齢55歳)を3年間追跡調査しました。その結果、
- 再発率は16.7%(6人に1人の割合)
- 死亡率は25.0%(4人に1人が3年以内に死亡)
という結果が示されました。
特に、若年層での再発が多く見られた一方、高齢者や男性では死亡率が高く、背景にある原因や併存疾患(がんや心血管疾患など)によっても差があることがわかりました。
【2】どんな人が再発・死亡しやすい?リスク因子を解説
再発や死亡のリスクには以下のような要素が関与していました。
再発のリスクを高める因子:
- 1歳未満の乳児(10〜19歳と比べ2.2倍のリスク)
- 既往のてんかん歴がある人
- アルコールの多飲
- 慢性進行性の病気が原因でSEを起こした場合
- 機械的人工呼吸が必要だったケース
死亡のリスクを高める因子:
- 高齢
- 男性
- がん、心疾患、呼吸器疾患などの併存症
- 慢性進行性の病気がSEの原因であった場合
3年以内の死亡原因として最も多かったのは「がん(32.1%)」で、次いで「心血管疾患(20.2%)」、「感染症・呼吸器疾患(8.3%)」でした。
【3】退院後のフォローが命を守るカギに
この研究からは、「SEが治まっても、その後の数年がとても重要である」ということが見えてきます。特に再発や死亡のリスク因子は退院時にはすでに存在しており、それに基づいたフォローアップの体制づくりが求められます。
今後の課題と対策:
- ハイリスク患者の早期特定
- 神経内科と総合内科の連携による生活習慣病の管理
- がんや慢性疾患への包括的サポート
- リハビリや心理的ケアの強化
SEをきっかけに患者さんやご家族の生活が大きく変わることも少なくありません。医療者としても、単に「退院できたから良かった」で終わらせない支援が必要です。
まとめ
てんかん重積状態(SE)は、一度発症すればその後も再発や死亡のリスクがつきまとう深刻な疾患です。今回のフランスの大規模研究は、SE後の長期的なリスクを明らかにし、私たち医療者や患者、家族に「退院後の備えの大切さ」を改めて教えてくれました。
SE経験者がより安心して暮らせる社会を目指して、医療の側も一層の体制整備が求められています。
出典:
Calonge Q, et al. Recurrence and Mortality After a First Status Epilepticus: A Retrospective Nationwide Study From the French National Health Data System. Neurology. 2025 Jun 24;104(12):e213693. doi:10.1212/WNL.0000000000213693
PMID: 40388696
