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脳卒中脳神経内科

抗凝固療法でも油断禁物!心房細動患者の再発性脳卒中リスクとは

抗凝固薬を飲んでいても安心できない?心房細動患者の再発性脳卒中リスクとは

心房細動(AF)は、高齢化社会においてますます重要となる健康課題です。脳卒中の原因のひとつであり、特に再発を防ぐためには「抗凝固薬(OAC)」の服用が欠かせません。しかし、最新の研究によって、抗凝固薬をしっかり飲んでいてもなお、脳卒中の再発リスクが残ることが明らかになりました。

【1】心房細動とは?なぜ脳卒中を起こしやすいのか

心房細動は、心臓の上の部屋である心房が不規則に震える病気です。これにより血液の流れが滞り、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。この血栓が脳に飛んで血管を詰まらせると、脳卒中(特に脳梗塞)を引き起こします。

そのため、ワーファリンやDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)などの「抗凝固薬」で血液をさらさらに保つことが基本治療とされています。

【2】それでも再発は起きる?驚くべき研究結果

2025年5月に発表された最新の系統的レビューとメタ分析(JAMA Neurology誌)では、心房細動を持ち、すでに脳梗塞を経験した78,733人を対象に、再発率を調査しました。

主な結果は以下の通りです。

  • 抗凝固薬を使用していたにもかかわらず、脳梗塞の再発率は年間3.75%(95%信頼区間:3.17%〜4.33%)
  • 観察研究では年間4.20%、ランダム化比較試験では**年間2.26%**と、試験の種類によって差が見られました。
  • 脳出血も含めた全ての再発性脳卒中の発症率は年間4.88%
  • 特に、抗凝固薬を服用していたにもかかわらず脳卒中を発症した人では、**年間7.20%**の確率で再び脳梗塞を発症

つまり、抗凝固薬の治療を受けていても、5年で6人に1人が再び脳卒中を起こす可能性があるということになります。

【3】私たちにできること:予防と新たな戦略の必要性

この研究は、現行の治療だけでは不十分なケースが多いことを示しています。

再発を防ぐには、次のような取り組みが重要です。

  • 高血圧・糖尿病・脂質異常症のコントロール:これらの病気は脳卒中の追加リスクになります。
  • 禁煙と適度な運動:生活習慣の改善は血管を若々しく保つ基本です。
  • 脳画像や心エコーなどによる精密評価:潜在的なリスク要因を早期に発見し、治療方針を最適化する手段になります。

また、研究者らは「再発のメカニズムの解明」と「リスク層別化(ハイリスク患者の特定)」、さらには「新たな予防治療の開発」が急務であると述べています。

まとめ

心房細動による脳卒中は、抗凝固薬によって予防できる疾患です。しかし、それでも再発リスクが一定程度残ることが明らかになった今、治療の「質」がますます問われる時代に突入しています。

ご自身やご家族が心房細動や脳卒中の経験をお持ちであれば、再発予防について主治医としっかり話し合うことをおすすめします。

出典:

McCabe JJ et al. Residual Risk of Recurrent Stroke Despite Anticoagulation in Patients With Atrial Fibrillation: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Neurol. 2025 May 21. doi:10.1001/jamaneurol.2025.1337
PMID: 40394992

当院では、心房細動や脳卒中後の再発予防に力を入れています。ご相談のある方は、お気軽にお問い合わせください。