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血圧の薬は朝より夜?最新研究で明らかになった効果的な服用タイミング
血圧の薬、朝と夜では効果が違う?最新研究が示す「就寝前服用」のメリット
高血圧は、日本でも多くの人が悩まされている生活習慣病の一つです。治療の基本は、生活習慣の改善と薬物療法ですが、今回ご紹介するのは「薬を飲む時間帯」に関する最新研究です。
2025年に発表された中国の大規模臨床試験「OMAN試験」では、降圧薬の服用時間による効果の違いが検討され、注目を集めています。
【夜間血圧を下げるには「就寝前の服用」が有効】
この研究では、降圧薬(オルメサルタンとアムロジピンの合剤)を朝6〜10時に飲むグループと、夜6〜10時に飲むグループで効果を比較しました。対象は中国国内15施設で集められた720人の高血圧患者です。
12週間の追跡調査の結果、就寝前に薬を服用したグループの方が「夜間の血圧」が平均3.0mmHg多く下がっており、統計的にも有意でした。また、夜間の血圧が適切にコントロールできていた割合も、就寝前服用群の方が高いという結果が出ました(79.0% vs 69.8%)。
これは、夜間の血圧が高いと心臓病や脳卒中のリスクが高まることが知られており、「就寝前の服用」が将来的な合併症の予防にもつながる可能性を示しています。
【なぜ夜に飲むと効きやすい?薬の特性と体のリズムの関係】
研究で使用された薬(オルメサルタンとアムロジピン)は、どちらも長時間作用型で、服用後に効果のピークが6〜12時間後に現れます。これにより、夜に服用することで、深夜から早朝にかけての血圧上昇(いわゆる「モーニングサージ」)を抑える効果が期待できます。
また、就寝中には体の血圧リズムが変化しやすく、腎臓の血流やホルモン分泌が活発になるため、この時間帯に薬が効くように調整することは理にかなっているのです。
【副作用や安全性への影響は?夜に飲んでも大丈夫?】
この研究では、就寝前に服用した場合でも、朝服用した場合と比べて副作用の発生率(例えば、頭痛や低血圧など)に明らかな差は見られませんでした。また、夜間の血圧が下がりすぎてしまう「夜間低血圧」のリスクも上がっていないという結果でした。
さらに、薬の飲み忘れについても、朝と夜で有意な差はなく、就寝前に服用することが患者さんの生活リズムに合わせやすい可能性も示されました。
【まとめ】
OMAN試験の結果から夜間の血圧が高い方や心血管リスクが高い方には、就寝前の服用が有効な選択肢となり得ます。
ただし、すべての降圧薬にこの結果が当てはまるわけではありません。また、体質や他の病気との兼ね合いもあるため、服用のタイミングについては必ず医師と相談して決めましょう。
【参考文献】
- Ye R, Yang X, Zhang X, et al. Morning vs Bedtime Dosing and Nocturnal Blood Pressure Reduction in Patients With Hypertension: The OMAN Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open. 2025;8(7):e2519354. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.19354
