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【若年性脳卒中と出産】頸動脈解離後の妊娠に再発リスクはあるのか?
【妊娠後も再発リスクは増えない?―注目の国際研究】
頸動脈解離(CeAD)は、若年層の脳卒中の主な原因の一つです。とくに出産年齢にある女性にとっては、「将来、また妊娠して大丈夫なのか?」という不安がつきまといます。
今回紹介するのは、2025年に発表された国際共同研究「LONG-RECAP」。“妊娠がCeADの再発や脳卒中リスクを高めるかどうか”という疑問に、1013人の患者データから答えを出しました。
この研究によると、妊娠しても再発や死亡率が統計的に有意に増えることはなく、「妊娠しても大丈夫」と言える科学的根拠が示されました。
【出産後に注意したい「再発リスクがやや高まる時期」】
研究では、妊娠後にCeADを再発した患者のうち、半数以上が「産後6週間以内」に発症していました。これは、ホルモンバランスの急激な変化や血圧の上昇が影響していると考えられています。
ただし、それでも再発率はわずか3.5%であり、妊娠しなかった群と比べても統計的な差はなく、「過度な心配は不要」といえる結果です。
なお、帝王切開と自然分娩のいずれが再発リスクに影響するかについては、明確な差は見られませんでした。今後の研究に期待が寄せられます。
【妊娠を希望する女性と医療者へのメッセージ】
この研究は、「過去にCeADを経験したからといって妊娠を諦める必要はない」という、非常に前向きなメッセージを私たちに届けてくれます。
もちろん、妊娠や出産にあたっては医師とよく相談し、適切なフォローアップやリスク管理が大切です。
とくに出産直後の6週間は、やや再発しやすい時期のため、頭痛や神経症状など異変があればすぐに受診することが推奨されます。
出産を希望される方は、安心して医療者と一緒に計画を立てていくことが大切です。
引用文献・出典
Fischer SK, Kaufmann JE, Metso TM, et al. Long-Term Risk of Recurrent Cervical Artery Dissection and Stroke After Pregnancy. JAMA Netw Open. 2025;8(7):e2521539. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.21539
