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睡眠時無呼吸症候群と脳の老化の関係――側頭葉の変化と白質高信号との関連性とは
高齢者の脳を守るために知っておきたい
【閉塞性睡眠時無呼吸症候群と脳の関係】
睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、特に高齢者に多く見られる疾患で、眠っている間に呼吸が断続的に止まることで、体内が酸素不足になる状態を引き起こします。
今回、米国で発表された最新の観察研究により、この酸素不足(低酸素血症)が高齢者の脳にどのような影響を及ぼしているのかが明らかになりました。
この研究では、健康な高齢者37人を対象に、睡眠中の酸素濃度の変化と、脳内の白質病変(白質高信号:WMH)、記憶に関係する側頭葉の構造変化(特に嗅内皮質の厚み)との関係を調査しました。
【REM睡眠中の低酸素が脳に与えるダメージ】
研究では、特にREM睡眠(夢をよく見る浅い睡眠)の時間帯に起こる低酸素状態が、脳への影響として強く関連していることがわかりました。
REM睡眠中の酸素濃度が低いほど、以下のような変化が見られました。
- 脳全体の白質高信号の増加
- 前頭葉と頭頂葉の白質病変の増加
- 嗅内皮質(記憶に重要な部分)の萎縮
特に前頭葉の白質病変の程度が、嗅内皮質の厚みの減少と関係しており、さらにこの変化が記憶力の低下とも関連していました。
つまり、睡眠中の酸素不足が、段階的に脳の構造と機能に影響している可能性があるのです。
【記憶力低下と小血管病のつながり】
白質高信号は「脳の小血管病変」として知られ、加齢や高血圧、糖尿病といった生活習慣病とも関連しますが、今回の研究では、睡眠時無呼吸による低酸素もこの病変の原因の一つとなる可能性が示されました。
さらに、白質病変の進行は、海馬や嗅内皮質といった記憶に関わる部位の萎縮を引き起こし、結果として睡眠後の「記憶の整理」がうまくいかなくなることも示唆されています。
研究に参加した高齢者の中でも、REM睡眠中の酸素が低い人ほど、翌朝の記憶課題の成績が悪くなる傾向が見られました。
つまり、睡眠の質、特に酸素状態が脳の健康を大きく左右するということが、科学的に裏づけられたのです。
【早期発見と対策がカギ】
この研究結果は、以下のような点で私たちの生活に大きな示唆を与えてくれます。
- いびきが大きい、日中の眠気が強い方は要注意
- 脳の健康を守るためには、睡眠の質の見直しが必要
- 高齢者こそ、OSAのスクリーニングが重要
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、CPAP(持続陽圧呼吸療法)などの治療で改善が可能です。認知症や脳血管障害のリスクを下げるためにも、早期の診断と治療が大切です。
【当院でも検査・相談が可能です】
当院「シーサー通り内科リハビリクリニック」では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する検査(簡易睡眠検査の導入予定)、脳の画像診断、認知機能検査などをご提供しております。
いびきが気になる方、ご家族に記憶力の低下が見られる方、生活習慣病がある方は、お気軽にご相談ください。
【参考文献】 Berisha DE, Rizvi B, Chappel-Farley MG, et al.
Association of Hypoxemia Due to Obstructive Sleep Apnea With White Matter Hyperintensities and Temporal Lobe Changes in Older Adults. Neurology. 2025 Jun 10;104(11):e213639.
