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脳卒中脳神経内科

脳出血は再発する?|CTだけで予測するEdinburgh CT基準と対策

【はじめに】

脳アミロイド血管症(CAA)は高齢者に多い小血管の病気で、脳の皮質に近い
場所に出血(葉性脳出血)を起こしやすくします。「もう一度出血しないか」
という不安は患者さんと家族にとって大きな問題です。近年はMRIが使えない
場面でも再発リスクを予測できる指標が進歩し、救急CTと遺伝情報(APOE)
だけで判断可能な方法が登場しました。本稿ではその要点と予防のヒントを
解説します。

【CAAの基礎知識|原因・症状・検査のポイント】
CAAは脳の血管壁にアミロイドβが沈着し脆くなる病気です。突然の頭痛や麻痺、
言葉が出ない失語で発症し、皮質に近い出血が特徴です。再発率は深部出血より
高く、年5%前後とされます。MRIが理想ですが、体調やペースメーカーで撮影が
できないことも多く、その際はまず非造影CTで出血部位や周囲所見を確認します。
CTで「血腫から指のように伸びる突起」や「円蓋部くも膜下出血」が見られると、
CAAらしさを示す重要なサインとなります。

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【CTだけで分かる?|Edinburgh CT/CT-APOE基準の実力】
MRIがなくてもCAAを層別化するために提案されたのがEdinburgh CT基準と
CT-APOE基準です。両者は「くも膜下出血」「指状突出」をCTで評価します。
大規模解析(8コホート1705例)ではCTのみでも再発リスクを層別化でき、
5年累積再発は低リスク12%、中リスク16%、高リスク26%と差が明確でした。
高リスクは低リスクに比べHR2.97、中リスクはHR1.68と上昇します。

CT-APOE基準では3年再発が低リスク8%、高リスク15%と報告され、高リスクの
HRは2.22で有意に上昇しました。特にAPOE ε2保有は再発増加と独立に関連し、
ε4は無関係でした。つまりCT所見にAPOE ε2を組み合わせると精度が高まります。

CT所見の内訳では、くも膜下出血の合併が最も強い関連因子で、調整後HR1.92と
有意でした。指状突出は弱い傾向に留まりました。


要するに救急CTだけでも「再発しやすさ」を見極められ、APOE ε2の情報が得ら
れればさらに信頼性が高まるといえます。

【再発を防ぐには|今日からできる実践と医療の連携】
第一に血圧管理です。家庭血圧を毎日同じ条件で測定し、目標を主治医と共有
して調整します。減塩、節酒、体重管理も基本です。抗血小板薬や抗凝固薬の
再開はリスクと便益を総合判断し、心房細動や過去の出血部位を踏まえ相談が
必要です。

また睡眠時無呼吸や喫煙も小血管に悪影響です。検査や禁煙支援を活用しましょ
う。転倒や頭部外傷の予防も重要で、手すり設置や夜間照明、靴の見直しが効果
的です。退院後は「いつ救急に行くか」を家族と共有し、症状カードを携行する
と安心です。

不安が強い場合は看護師やリハビリ、地域相談窓口を頼りましょう。定期受診で
CT所見と生活習慣を確認し、予防策を継続することが大切です。CTや遺伝情報
はすべてではありませんが、治療方針の重要な材料になります。「見えるリスク」
を共有し、納得して治療を選ぶことが最も大切です。

【まとめ】
・MRIが難しい場合でもCT所見だけで再発リスクを層別化可能。
・Edinburgh CT基準:低12%・中16%・高26%(5年)。CT-APOE基準:高リスク
 の3年再発15%。特にAPOE ε2が独立に関連。

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・血圧管理、薬剤調整、転倒予防、地域連携で二次予防を徹底しましょう。

【参考文献】

Rodrigues MA, et al. Lancet Neurol. 2025;24:828–839.
「CAA関連葉性脳出血の再発とEdinburgh CT/CT-APOE基準の関連」
→ The Lancet Neurology