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片頭痛の予防薬「カンデサルタン」は効く?最新ランセット試験を解説
【導入】
新しい臨床試験で、高血圧薬カンデサルタンが片頭痛予防に有効であることが示されました。費用や副作用の点で使いやすく、CGRP標的薬が使いにくい場面でも期待されます。最新データを一般向けにわかりやすく解説します。
【カンデサルタンとは】
カンデサルタンは「ARB」という血圧を下げる薬の一種です。血管を収縮させる物質アンジオテンシンⅡの働きを弱め、血圧を安定させます。脳内の痛み経路や血管反応にも関わる可能性があり、片頭痛の予防に転用されてきました。
【試験のポイント】
今回の研究はノルウェーなど10施設で行われた、無作為化・三重盲検・並行群・プラセボ対照の第2相試験です。成人457人が16mg、8mg、プラセボを1日1回12週間内服し、月間の片頭痛日数の変化を主評価項目に比較しました。
【主要結果:有効性】
9〜12週の平均で、16mg群は月間片頭痛日数が2.04日減少。プラセボ群は0.82日減で、差は−1.22日と有意でした。「50%改善」の割合も16mg群49%に対し、プラセボ28%でした。数値は十分に臨床的意義があると評価できます。
【低用量8mgの示唆】
副次解析では8mg群も2.20日減と有効で、16mg群との差は有意ではありませんでした。「反応する人には低用量でも足りる」可能性が示唆され、忍容性の面からも実臨床で扱いやすい所見です。
【安全性:めまいがやや増】
有害事象は「めまい」が最も多く、16mg群30%、プラセボ13%でした。多くは軽度で、中止に至る例は少数でした。血圧薬なので低血圧傾向や立ちくらみに注意し、開始時は体調と血圧を丁寧に見ます。
【過去研究との整合性】
2003年JAMAのクロスオーバー試験、2014年のプロプラノロール比較試験でも有効性は示されてきました。今回の大規模並行群試験で、エビデンスの層が厚くなった形です。
【CGRP時代の位置づけ】
CGRP抗体やゲパントは強力ですが、費用やアクセスが課題です。ガイドラインでもARBの位置づけが議論されており、今回の結果は一次医療でも扱える口服選択肢の価値を後押しします。
【誰に向く?】
月2〜8回の発作があり、日常生活に支障が出る人が目安です。β遮断薬や抗てんかん薬で副作用が強い、費用面で継続が難しい、血圧もやや高めで一石二鳥を狙いたい――そんな場面が候補です。※妊娠中・授乳中は不可。
【用量と始め方】
実臨床では8mg開始→様子を見て16mgへと段階的に増量する案が一般的です。朝夕どちらでもよいですが、立ちくらみが出やすい方は就寝前の内服も検討します。自己判断での増減は避け、必ず医師に相談してください。
【効果判定のコツ】
頭痛日記で「片頭痛日」「痛みの強さ」「頓挫薬の使用」を記録しましょう。12週を目安に、月間片頭痛日数が2日以上減る、あるいは50%減を狙います。達成できたら継続、未達なら用量や他薬の併用を再検討します。
【生活習慣の併用】
睡眠の安定、脱水の回避、過度のカフェインやアルコールの調整、規則正しい食事と軽い運動は、薬の効果を底上げします。トリガーの把握と回避は最もコスト効率の高い「予防薬」です。
【限界と今後】
試験は12週間で、長期効果は今後の登録研究で確認が必要です。65歳以上や慢性片頭痛(頭痛日15日以上/月)には当てはまりにくく、個別の事情で適否は変わります。主治医と方針をすり合わせましょう。
【まとめ】
カンデサルタンは、効果・安全性・入手性・コストのバランスがよい「現実解」の予防薬です。CGRP薬が使いにくい状況でも、まず検討する価値があります。あなたに合うかどうか、頭痛日記を手に医療機関で相談してみてください。
【当院のご案内】
那覇市の「シーサー通り内科リハビリクリニック」では、片頭痛の個別予防プランを提案します。日記の付け方指導、生活習慣の最適化、内服薬(カンデサルタン含む)やCGRP関連治療の適否判定まで、総合内科・脳神経内科の視点で伴走します。
