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一般内科生活習慣病(高血圧・糖尿病など)

糖尿病の最新データと対策|診断・治療・血糖コントロールをわかりやすく解説

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糖尿病は「血糖(血液中のブドウ糖)」が高い状態が続く病気です。放置すると、脳卒中や心筋梗塞、腎臓病、失明、足の潰瘍など、生活に大きな影響を与える合併症につながります。早く見つけ、正しく治療し、日々の生活でコントロールすることが大切です。

世界の最新分析では、2023年に糖尿病とともに生きる人のうち、診断に到達したのは約56%、診断後に治療を受けたのは約91%、治療中で最適な血糖(良好なHbA1c)だったのは約42%でした。全体で見ると「最適な血糖」に保てた人は約21%にとどまります。今後の改善余地が大きいことがわかります。

さらに、糖尿病の患者数は世界で増加しており、将来見通しでも増えると推計されています。だからこそ私たち一人ひとりが、検診で早く見つけ、丁寧に治療し、生活を整えることが重要です。

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【現状と課題:診断率・治療率・血糖コントロール】
数字が示す通り、受診につながる「診断の壁」、薬を続ける「治療継続の壁」、そして生活習慣の改善や薬の調整により「良好な血糖」を保つ「管理の壁」が存在します。三つの壁を一段ずつ越えることが、合併症を遠ざける近道になります。

ここでいう「良好な血糖」は一般にHbA1cという指標で評価します。HbA1cは過去1〜2か月の平均血糖を反映する検査で、採血で測定。医師は合併症のリスクや年齢、低血糖の危険性、他の病気を考え、あなたに合った目標値(たとえば7.0%前後など)を設定します。

診断率を高める第一歩は、健診・ドックの血糖やHbA1cの確認です。境界域(予備軍)やごく初期の段階で見つかれば、生活改善だけで十分にコントロールできるケースも珍しくありません。だからこそ、「症状がないから大丈夫」は禁物。定期的なチェックが要です。

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【早期発見のコツ:検診・自己チェック・受診のサイン】
糖尿病は初期に自覚症状が乏しいのが特徴です。次の人は要注意。①家族に糖尿病がいる ②肥満・内臓脂肪が多い ③運動不足 ④血圧・コレステロールが高い ⑤妊娠糖尿病の既往がある など。これらは発症リスクを高める要因で、早めの検査が有効です。

「のどが渇く」「尿の回数が増えた」「体重が急に減った」なども、受診のサインになります。口渇や多尿は高血糖の典型的な症状です。見逃さず、かかりつけ医や専門外来に相談しましょう。自宅では、体重・腹囲・血圧・歩数を記録するだけでも変化に気づけます。

検査は空腹時血糖、随時血糖、OGTT(ブドウ糖負荷試験)、HbA1cなどがあります。どれも採血や飲み薬の検査が中心で、痛みや負担は大きくありません。最近は即日でHbA1c結果がわかる医療機関も増え、受診から治療開始までが短くなっています。

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【実践ポイント:食事・運動・睡眠+薬の上手な使い方】
食事は「主食・主菜・副菜」をそろえ、まずは「量と順番」を調整。①野菜・海藻・きのこから食べる ②主食は白より“全粒・雑穀”へ ③たんぱく質(魚・大豆・卵・肉)を各食で適量 ④甘い飲料は「例外の日」に ――この四つを徹底するだけでも血糖は動きます。

運動は「歩数+少し息が上がる運動」を習慣化。目安は一日8000歩、うち中強度(速歩)20分程度。関節に不安があれば水中歩行や自転車。筋肉は“糖の貯蔵庫”。週2〜3回の筋トレ(スクワット等)で、インスリンの効き(感受性)を高め、血糖の安定を助けます。

睡眠とストレスも要チェック。睡眠不足は食欲と血糖を乱し、いびき・睡眠時無呼吸は高血圧や心血管リスクを押し上げます。眠れない・日中強い眠気がある場合は、医師に相談しましょう。生活リズムを整えることが、薬の効きを引き出す土台になります。

薬物療法は目的に応じて組み合わせます。まずは安全性を最優先に、低血糖の少ない薬から。体重や心血管・腎臓の病気があれば、体重減少や心腎保護が期待できる薬を選ぶなど、個別化が重要です。“薬は増やすためでなく、将来の合併症を減らすため”が合言葉です。

治療はマラソンのような長距離走。途中で計画を見直しながら、医師・看護師・栄養士・理学療法士がチームで伴走します。数値だけで一喜一憂せず、生活の中で続けられる形を一緒に探せば、「三つの壁」は越えられます。今日から一歩、始めましょう。

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【参考・引用(リンク付き)】
・Stafford LK, Gage A, Xu YY, 他. Global, regional, and national cascades of diabetes care, 2000–23: a systematic review and modelling analysis using findings from the Global Burden of Disease Study. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025. DOI: https://doi.org/10.1016/S2213-8587(25)00217-7 

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【当院からのお知らせ】
シーサー通り内科リハビリクリニック(那覇市)では、糖尿病外来を開設しています。HbA1cの即日判定、頸動脈エコーによる動脈硬化評価、CTを活用した内臓脂肪の見える化、理学療法士による運動アドバイスまで、ワンストップで対応します。動脈硬化専門医が、合併症予防まで見据えた治療計画を提案します。予約はWeb・電話で。駐車場あり。→ 公式サイト:https://www.shisa-clinic.com/