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認知症予防:MCIから始める「運動+脳トレ」の最新エビデンスコグニバイクが有用?
【MCI(軽度認知障害)とは?早期発見のポイント】
もの忘れが増えたが、日常生活はなんとか自立できる――それがMCIです。
認知症の前段階とされ、放置すると数年で進行する人がいます。
ただし早期に気づき、生活を整えることで進行を遅らせられる可能性があります。
代表的なサインは「昨日の会話を繰り返し尋ねる」「約束を忘れる」などです。
判断力や注意力の低下、段取りが苦手になるといった変化も見逃せません。
MCIは病名というより“状態”で、原因はさまざま(脳血管・変性・うつ等)です。
まずは専門医の評価で、他の病気や薬の影響を丁寧に除外することが大切です。
検査は問診・神経心理検査(MMSEなど)に加え、画像や血液検査を組み合わせます。
「年齢のせい」と決めつけず、気づいた時点で相談することが最大の近道です。
【運動×認知トレーニングの科学:脳血流と“神経効率”】
最新の臨床研究では、運動と認知トレーニングを組み合わせる効果が注目されます。
MCI高齢者113名を対象に、週3回・7か月の多面的プログラムを比較した試験では、
訓練群で総合認知(ADAS-Cog)が有意に改善し、非訓練群は悪化しました。
さらに海馬周辺(記憶に関与)の脳血流が増え、脳機能の効率低下を抑える所見も。
「神経効率」とは、同じ課題成績でも脳の過剰動員が少ない=無理なく働く状態です。
この研究では非訓練群でBOLD信号上昇(より頑張らないとできない)傾向が出現。
一方で訓練群は成績を保ちながら過剰な賦活増大を示さず、効率維持が示唆されました。
体積(灰白質)の減少自体は短期では変えにくい一方、機能はテコ入れ可能という示唆。
つまり「脳のコンディション」を整えることで、毎日の“動きやすさ”を守れるのです。
運動のみ・脳トレのみより、組み合わせの相乗効果が支持されつつあります。
【今日から始める実践ガイド:習慣化のコツと安全対策】
①有酸素運動(目標週150分):速歩・自転車・水中歩行など息が弾む強度で。
10分×15回の合算でもOK。膝や腰に配慮し、痛みがあれば中止し専門家に相談を。
②筋力+バランス:スクワットやつま先立ち、段差昇降を週2~3回、各10回×2~3。
転倒予防と姿勢の安定は、記憶以外の“生活力”を底上げします。
③認知トレーニング:買い物リスト記憶、暗算、しりとり、地図模写などが有効です。
紙と鉛筆の課題を日替わりで。アプリを使う場合も、飽きない工夫がポイントです。
④ソーシャル(社会参加):会話・合唱・ボランティア・サークルで刺激を広げます。
“人と関わる”こと自体が注意・記憶・感情の多面的なリハビリになります。
⑤睡眠・食事・血管リスク:7時間睡眠、野菜・魚・豆の和地中海食、減塩を基本に。
高血圧・糖尿病・脂質異常の管理は「脳のサビ」を減らす最重要の土台です。
⑥安全第一:急な息切れ、胸痛、強いめまい、転倒リスクがあれば無理をしないで。
薬の調整や持病の安定化を先に行い、段階的に負荷を上げていきましょう。
⑦記録&ごほうび:歩数・実施時間・気分を手帳に。達成日は小さなご褒美を。
「できた自分」を見える化すると、続ける力(自己効力感)が育ちます。
⑧家族も一緒に:同じメニューを共有し、互いに声かけするだけで継続率が向上します。
“習慣は最強の治療薬”。小さな一歩を、確実な二歩三歩につなげましょう。
【まとめ】
MCIは「まだ間に合う」段階です。
運動×認知トレーニング×社会参加を柱に、脳血流と神経効率を高めましょう。
短期で脳の体積は変わらなくても、機能は鍛えられる――これが希望のポイントです。
続けやすい形に落とし込み、医療・リハの専門家と二人三脚で進めていきましょう。
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■参考文献(リンク付き)
Train the Brain Consortium. Randomized trial on combined physical/cognitive
training in aged MCI subjects. Scientific Reports 2017;7:39471.
DOI: 10.1038/srep39471
■当院からのお知らせ(那覇市・シーサー通り内科リハビリクリニック)
当院は「一般内科/脳神経内科/リハビリ」を標榜し、MCIの早期評価と
生活習慣・運動×認知トレの実践支援をワンストップで提供します。
脳神経内科専門医による診察、神経心理検査、脳神経超音波、骨密度測定、
CT活用のメタボ・呼吸評価(内臓脂肪・LAA%)にも対応。
理学療法士による個別運動指導、コグニサイズ指導+コグニバイク、ショックウェーブ治療、
オンライン予約・公式LINEでの情報配信も行っています。
「最近もの忘れが…」と感じたら、お気軽にご相談ください。予約はWebからどうぞ。
