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若い頃の生活習慣が鍵!心臓と腎臓を守る「累積心血管健康スコア」とは

アルツハイマー病やがんと並び,日本人の主要な死因に含まれるのが心臓病や脳卒中です。
近年は「腎臓病」も心臓病と強く関連することが明らかになり,心腎連関が注目されています。今回紹介する韓国の大規模研究では,「30歳から40歳までの10年間の心血管健康度」を合計し,将来の心臓・腎臓の病気リスクと関連付けて調べました。

【心血管健康スコアとは?】
米国心臓協会が提唱する「Life’s Essential 8(理想的な8項目)」が基準です。
①体格指数(BMI)②血圧③コレステロール④血糖⑤喫煙習慣⑥運動⑦食事⑧睡眠。
今回の韓国研究では,食事と睡眠データは得られず,残る6項目で評価しました。
各項目を0〜100点で点数化し,平均を「心血管健康スコア(CVH)」としました。
そして30歳から40歳までの複数回健診のスコアを合計し「累積CVH」と定義しました。

【研究の結果:高いスコアは心腎イベントを大幅に減らす】
対象は24万人超の40歳の男女。10年間の累積CVHが高いほど,その後10年での病気発症率が低下。
最もスコアが高い層(上位20%)では,心臓病や腎臓病の年間発症率は0.05%と極めて低値でした。
累積CVHが「100点×年」高まるごとに,心血管疾患リスクは34%,腎臓病リスクは35%低下。
性別や社会的背景を問わず一貫した結果が得られ,どの要素も重要で偏りはありませんでした。

【なぜ「累積」が大事なのか】
従来は40代や50代での単回測定が中心でしたが,今回は「10年間の積み重ね」が焦点です。
喫煙の「パックイヤー」やコレステロール値の「mg/dL×年」と同じ考え方で,
悪い状態が長く続くとリスクが増え,良い状態を維持するほど守られるという結果です。
特に30代の時期に良好な生活習慣を続けることが,将来の心腎リスク低減に直結しました。

【生活へのヒント】
・運動習慣は「週150分の中強度運動」などを継続するだけでスコアが上がります。
・禁煙は言うまでもなく最重要。数年でリスク低下効果が現れます。
・体重・血圧・血糖の安定化は,健診ごとに意識することで点数を維持できます。
・食事と睡眠も含めればさらに効果的で,日本での今後の研究が待たれます。

【まとめ】
この研究は「若い頃からの健康習慣の積み重ね」が中年期の心臓・腎臓リスクを大幅に減らすと示しました。
「今はまだ若いから大丈夫」と考えるのではなく,30代からの毎日の選択が将来を左右します。心血管健康スコアは,健康寿命を延ばすための分かりやすい指標となるでしょう。

【当院のご案内】

那覇市の「シーサー通り内科リハビリクリニック」では,高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病管理から,心臓病・脳卒中の予防まで幅広く診療しています。
最新のCTや骨密度測定も導入し,心血管・腎臓の健康を総合的にサポート。
定期健診や生活習慣改善の相談も承りますので,お気軽にご予約ください。

【参考文献】
Jhee JH, Ha KH, Son D, et al. Cumulative Cardiovascular Health Score Through Young Adulthood and Cardiovascular and Kidney Outcomes in Midlife.
JAMA Cardiol. Published online October 1, 2025. doi:10.1001/jamacardio.2025.3269
JAMA Cardiology 論文リンク