内臓脂肪リスクは“お腹まわり”でわかる：WHtR0.5とBRI3.25の目安を医師が解説

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日本では健康診断でBMIがよく使われますが，「体重÷身長²」だけでは内臓脂肪の
多さを十分に反映できません。近年は，身長に対する腹囲の比（WHtR）や体型の丸
みを数値化するBRIが，日本人の心血管リスク把握に役立つことが示されています。
「太っていないのに検診で血圧や血糖が高め」――そんな方にこそ知ってほしい指
標です。この記事では，最新エビデンスと実践法をやさしく解説します。

【なぜWHtR（腹囲÷身長）が大切？：内臓脂肪をシンプルに可視化】
WHtRは腹囲(cm)を身長(cm)で割るだけの簡単な指標です。数式は「WHtR＝腹囲/身
長」。身長差をならして評価できるため，海外・日本の研究で「内臓脂肪の目安と
して有用」と報告されてきました。目標の目安は概ね0.5未満。例えば身長170cmなら
腹囲85cm未満が一つの目安になります。メジャー1本で毎月セルフチェックできる
のが最大の利点で，家庭でも外来でも導入が容易です。

WHtRが注目される理由は，内臓脂肪が血圧・血糖・脂質など複数リスクを同時に悪
化させる“ハブ”だからです。BMIが同じでも，お腹に脂肪が集まりやすい体型は動
脈硬化リスクが高くなりやすい。だからこそ「体重計だけで安心しない」視点が予
防の第一歩になります。

【BRIとWHtRは何が優れている？：日本人大規模データの示唆】
国内16万人超を13年間追跡した最新コホートでは，男性においてBRIとWHtRが将来の
心血管イベント（心血管死・心筋梗塞・脳卒中）をよりよく予測し，BMIや腹囲単独，
ABSIよりも優れていました。男性での最適カットオフは，BRIが3.250，WHtRが0.494。
女性では今回の解析で有意な関連は明確でなく，性差の可能性も示唆されています。
つまり，日本人男性では「WHtR≒0.5，BRI≧3.25」に近づくほど注意が必要という実
務的な目安が得られた，ということです。

研究結果のポイントは二つ。①BMIが高くなくても“お腹まわり”が大きい男性は将来
の心血管リスクが上がりうること。②検診でWHtRやBRIを併記すれば，ハイリスクの
見逃しを減らせる可能性があること。外来でも「身長170cm→腹囲85cmが境目」のよ
うに説明すると，行動変容につながりやすい印象です。

【今日からできる実践：測り方・下げ方・続け方】
〈測り方〉朝食前に立位で軽く息を吐き，臍の高さを水平に1回測定。衣服の厚みは
差し引きます。1か月に1回，同じ条件で記録しましょう（スマホや手帳で十分）。

〈下げ方のコツ〉①「まずは夕食の糖と脂を控える」――ご飯は拳1～1.5個ぶん，揚
げ物は回数を減らし，たんぱく質・食物繊維を増やします。②「週150分の中強度運
動＋週2回の筋トレ」――速歩30分×5日を基本に，スクワットやヒップヒンジなど大
筋群を使う種目を加えると内臓脂肪の燃焼効率が上がります。③睡眠・ストレス対
策――寝不足は食欲と血糖コントロールを乱します。就寝前90分の入浴や就床時刻の
固定化で整えましょう。④減酒・禁煙――アルコールは腹囲増大と高血圧に，喫煙は
血管障害に直結します。「平日禁酒＋週末適量」など現実的なルールから。

〈続け方〉体重計とメジャーの“二刀流”で見える化。体重が停滞してもWHtRが改善し
ていれば成功です。3か月を1クールとし，「開始時→6週→12週」で写真や記録を見
比べると，モチベーションを保ちやすいでしょう。

【まとめ：BMIに“腹囲基準”を足すだけで予防が前進】
・日本人男性では，BRIとWHtRが将来の心血管イベントをよりよく予測。実務目安は
　BRI3.25，WHtR約0.5。BMIが正常でも“お腹まわり”が大きい場合は要注意です。
・自宅でも外来でも，WHtRは「身長170cm→腹囲85cm」を覚えるだけでOK。毎月計測
　し，食事・運動・睡眠・減酒禁煙の基本で内臓脂肪を減らしましょう。
・女性は体脂肪分布やホルモンなどの影響が異なる可能性があり，今後の知見の蓄積
　に期待。個別リスクは医療機関で総合評価を受けるのが安心です。

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■参考文献・引用（リンク）
Ichikawa T, Okada H, et al. Anthropometric indices for predicting incident cardiovascular
disease: a 13-year follow-up study in a Japanese population. Am J Clin Nutr. 2025.
doi:10.1016/j.ajcnut.2025.08.010（https://doi.org/10.1016/j.ajcnut.2025.08.010）

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