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運動は脳を鍛える?|記憶・注意・実行機能を高める最新エビデンスとやり方
【はじめに】
「最近もの忘れが増えた」「頭の回転が鈍い気がする」――そんな不安に、運動は有力な対策です。最新の研究をまとめた大規模レビューでは、運動が“記憶”“注意”“実行機能”を幅広く底上げしました。しかも効果は年齢や持病の有無を問わず確認され、軽い強度の運動でも有意な改善が得られています。
【背景:なぜ運動が脳に効くのか】
運動は脳の血流を増やし、神経栄養因子(BDNFなど)を分泌させ、神経細胞同士のつながりを強化します。さらにストレスや慢性炎症を下げ、気分と睡眠を整えることで、学習や記憶の土台を広く支えます。こうした複合効果が、単なる「体力づくり」を超えて、日常の注意力や段取り力の改善につながります。
【運動と認知機能のエビデンス|記憶・注意・実行機能】
2025年の傘下レビュー(メタ・メタ解析)は、2724本のRCT・25万人超を統合し運動の効果を検証しました。その結果、総合的な認知機能は中等度、記憶と実行機能は小~中等度の改善が一貫して示されました。子ども・若年層では記憶と実行機能の伸びが特に大きく、成人~高齢者でも安定した利益が得られます。
【具体例:どんな運動が効いたか】
有酸素・レジスタンス・太極拳やヨガなどのマインドボディ系、ダンス、“体を動かすゲーム(エクサゲーム)”等。タイプを問わず効果が出ますが、記憶にはマインドボディ系、総合認知にはエクサゲームの貢献が目立ちます。
強度は低~中等度でも十分で、1~3か月のプログラムで“まず上がりやすい”ことも示されています。
【効果を高める運動のやり方|強度・期間・モード】
はじめは“楽~ややきつい”強度でOK。速歩・自転車・水中歩行を20~40分、週3回から始めましょう。体幹と下肢の筋トレを週2回、イス立ち上がりや段差昇降など身近な動きで十分。安全第一で進めます。太極拳やヨガは呼吸と姿勢に集中し、振り付けを覚えるダンスやエクサゲームは二重課題で脳刺激を強めます。
【実践:二重課題と“少し難しい”の設定】
歩きながら暗算、リズムに合わせて3手順を記憶する等、体と頭を同時に使う工夫が鍵です。慣れてきたら速度や課題の難度を小刻みに上げ、脳への“新規性”を保ちます。飽きは効果を弱めます。
1~3か月で手応えを得やすいので、まずはこの期間を一区切りに設計し、継続の仕組みを作りましょう。
【安全に続けるコツ|習慣化と医療連携】
高血圧・心疾患・不整脈・骨関節痛がある方は、開始前に医師や理学療法士へ相談してください。転倒歴がある場合は屋内・プール・ポールウォーク等でリスクを下げ、シューズと水分補給を最適化します。続ける秘訣は“予定表に組み込むこと”。家族や友人と約束し、達成を可視化して小さな成功体験を重ねます。
【よくある疑問Q&A】
Q. 軽い運動でも効果はありますか?
A. あります。低強度でも認知機能の有意な向上が示されています。
Q. どのくらいで変化を感じますか?
A. 目安は8~12週。まずは疲れにくさや注意の持続に手応えが出ます。
Q. 忙しくて時間が取れません。
A. 10分×3回でも合算OK。“ゼロにしない”ほうが脳には得策です。
【チェックリスト:今日からの第一歩】
□ 速歩10分を1日2回 □ 週2回のイス立ち上がり10回×2セット □ 就寝前のストレッチ5分
□ 週1回の太極拳・ヨガ・ダンス等に参加 □ スマホで予定と実績を記録し、達成を可視化する
【まとめ】
運動は“誰でも取り組める脳の投資”です。タイプや強度にこだわり過ぎず、まずは継続を設計しましょう。
軽い強度でも効果は期待でき、1~3か月で手応えが出ます。体力・痛み・持病に合わせて安全に調整すれば、年齢を問わず記憶・注意・実行機能を底上げできます。今日の一歩が、半年後の“冴えた自分”をつくります。
【当院からのご案内】
那覇市の「シーサー通り内科リハビリクリニック」では、頸動脈・頭蓋内超音波などの脳血管評価に加え、理学療法士による運動処方と、太極拳・デュアルタスク・エクサゲームを組み合わせた“脳活リハ”を提供。オンライン予約・公式LINE相談に対応。安全評価→個別プラン→継続支援まで、医師と療法士が伴走します。
公式サイト:https://www.shisa-clinic.com/
【参考・引用(リンク)】
Singh B, et al. Effectiveness of exercise for improving cognition, memory and executive function:an umbrella review and meta-meta-analysis. Br J Sports Med. 2025;59:866–876.
https://doi.org/10.1136/bjsports-2024-108589
以前にもご紹介した動画です。(カナダ脳心血管連合のコマーシャル動画)運動をしないと・・
