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てんかん脳神経内科

てんかんとSUDEP(突然予期せぬ死)を正しく知る|夜間発作・無呼吸とリスク低減

【はじめに】
SUDEP(てんかんに関連する突然予期せぬ死)は、決して珍しくない重要テーマです。
不安を煽らずに、何に注意し、どう備えるかを知ることが第一歩です。最新研究とともに、
ご家庭で実践できる予防のコツを、やさしい言葉で整理してご紹介します。

【SUDEPとは/なぜ起こる?】
SUDEPは、明らかな外傷や溺水などの原因がないのに、てんかんの人に突然の死が起こる状態です。けいれん後に呼吸が止まったり、心臓のリズムが乱れたり、意識が深く低下したりすることが関連します。特に就寝中や夜間の全般強直間代発作は注意が必要で、発作後に“呼吸が再開しにくい”ことが危険です。大切なのは、発作を減らすこと、早く見つけること、呼吸と体位を安全に保つことの三本柱です。

【最新研究で分かった具体的なリスク】
2025年の前向き多施設コホート研究では、約2600人を長期追跡し、SUDEPの危険因子を解析しました。
独り暮らし(独居)はリスクを大きく上げ、過去1年に全般強直間代発作が3回以上ある人も要注意でした。さらに発作中・発作後の“中枢性無呼吸”が長いほどリスクが上がり、目安として発作後14秒超、発作中17秒超の無呼吸が警戒ラインと示されました。呼吸や心拍のモニタリングがリスク評価に有用、という臨床的示唆も得られています(米英9施設の前向きデータ)。

【今日からできる予防と見守り】
①発作コントロールを最優先に:処方どおりに薬を飲み、飲み忘れを防ぐ仕組み(ピルケースやスマホ通知)を作ります。睡眠不足・飲酒過多・発熱・ストレスは発作の誘因になるため回避を。
②夜間の安全確保:就寝中の発作が多い方は、家族と“回復体位(横向きで気道確保)”を練習。嘔吐物の誤嚥を防ぎ、舌根沈下を避けます。枕や布団は顔を覆わない配置にし、窒息のリスクを下げます。
③見守りの工夫:同居者がいる場合は、けいれんや異常呼吸に気づいたら声かけ・体位調整・計時を。アラーム付き機器や検知デバイスは“補助”と考え、医療者と選び方を相談しましょう(過信は禁物)。
④救急時対応:けいれんが5分以上続く、連続する、呼吸が戻らない、紫色のチアノーゼ、
ケガ・頭部外傷を伴う――こうした場合は119番通報を。回復体位と周囲の安全確保を優先します。
⑤生活を整える:規則正しい睡眠、適度な有酸素運動、減量と禁煙、血圧・血糖の管理は発作抑制に寄与。うつ・不安がある時は早めに相談し、服薬アドヒアランスを保つ環境を整えましょう。

【独居・家族が遠方の方へ】
独居は重要なリスク因子です。定期的な安否確認、就寝前後の短いビデオ通話、近所の方との連絡体制、職場への配慮依頼など“小さなネットワーク”を複数持つことが安全につながります。夜間発作の頻度が高い場合は、受診間隔を短くし、薬の見直しや入院下での評価(ビデオ脳波・心肺評価)を検討します。

【受診時に医師へ伝えるポイント】
過去3か月の発作回数・時間帯・様子(けいれんの有無、呼吸の異常、紫色化)、服薬状況、
飲み忘れや副作用、睡眠・飲酒・発熱などの誘因、同居の有無と見守り体制――これらを簡単に記録し、診療で共有しましょう。情報が揃うほど、薬の調整や追加検査の判断が的確になります。

【まとめ】
SUDEPのリスクは“見えないから怖い”のではなく、“見える形で減らせる”ものです。
最新研究によって、独居・全般発作の頻度・発作前後の無呼吸など、注意すべき具体的指標が示されました。ご家族・医療者と連携し、発作を減らす、夜間を安全にする、いざという時の行動を決めておく――この三本柱を今日から進めていきましょう。

【当院からのご案内】
那覇市の「シーサー通り内科リハビリクリニック」では、てんかん外来(薬物治療の最適化、
副作用とアドヒアランスの相談)、睡眠・生活指導、家族向け回復体位トレーニングを実施しています。必要に応じて入院下評価や近隣医療機関と連携し、夜間発作対策を含む個別プランを提案します。オンライン予約・LINE相談に対応。まずはお気軽にご相談ください。公式サイト:https://www.shisa-clinic.com/

【参考・引用(リンク)】
Ochoa-Urrea M, et al. Risk markers for sudden unexpected death in epilepsy: prospective multicentre cohort. The Lancet. 2025;406:1497-1507. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(25)01636-8