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脳神経内科頭痛

頭痛薬の飲みすぎで起こる薬物乱用頭痛(MOH)とは?イブ・ロキソニン愛用者は要注意

【市販の解熱鎮痛薬と「依存性成分」の話】

頭痛がすると,ついドラッグストアで
市販の解熱鎮痛薬を買ってしまいますよね。

イブ,ロキソニン,バファリンなどは
テレビCMでもおなじみの薬です。

しかし近年,これらの一部の製品に含まれる
「依存性のある成分」が問題視されています。

2025年4月には,イブに含まれる添加物が
韓国で「違法薬物」として規制されました。

日本では普通に買える薬なのに,国が変わると
扱いがまったく違う,というのがポイントです。

では,いったいどの成分が問題で,
私たちの頭痛にどう影響しているのでしょうか。

今回の記事では,
・依存性成分とは何か
・薬の飲み過ぎで起こる「薬物乱用頭痛」
・市販薬との上手な付き合い方
の3つの観点から,分かりやすく解説します。

【依存性成分アリルイソプロピルアセチル尿素とは】

問題となっている成分は,
アリルイソプロピルアセチル尿素という物質です。

名前が長いので,医療者の間では
「ア尿素」と略されることもあります。

この成分は「解熱鎮痛成分」そのものではなく,
鎮静・催眠作用をもつ“添加物”の位置づけです。

眠気を和らげたり,不安感を抑えたりすることで
「なんとなく効いた気がする」感覚を強めます。

一方で問題なのは,
・依存性がある
・眠気などの副作用が出る
・他の成分と組み合わさると作用が強くなる
といった点です。

市販の解熱鎮痛薬には,
・解熱鎮痛成分(アセトアミノフェン,イブプロフェンなど)
・制酸剤
・カフェイン
・生薬成分
・鎮静成分(ア尿素,ブロモバレリル尿素)
などが一緒に入っていることが多くあります。

とくに「カフェイン+ア尿素」や
「カフェイン+ブロモバレリル尿素」という組み合わせは,
効き目の実感を高める一方で,
依存性や飲み過ぎのリスクを高めると考えられています。

【薬の飲み過ぎで起こる「薬物乱用頭痛(MOH)」】

ここで重要になるのが,
薬剤の使用過多による頭痛,
つまり薬物乱用頭痛(medication-overuse headache:MOH)です。

本来,頭痛を楽にするための薬なのに,
「飲み過ぎるほど頭痛が増えてしまう」状態を指します。

日本の「頭痛の診療ガイドライン2021」でも,
OTC医薬品(市販薬)の不適切な使用によるMOHが
大きな問題として取り上げられています。

今回紹介した研究では,頭痛専門外来の患者さんのうち
市販薬を主に使っていた人を詳しく調べています。

その結果,
・市販薬だけで頭痛を我慢している人が多い
・とくに40代以上の女性に多い
・重症なのに,適切な専門治療にたどり着いていない
といった実態が見えてきました。

さらに市販薬の中身をみると,
ア尿素やブロモバレリル尿素,カフェインなど
依存性のある成分を含む製品の使用が目立ちました。

「効いているから,つい同じ薬を飲み続ける」
「効き目が切れる前に,早めに次を飲んでしまう」

こうして回数が増えていくことで
脳が“薬ありきの頭痛モード”に固定され,
薬が原因の頭痛が慢性化してしまうのです。

【市販頭痛薬との上手な付き合い方と受診の目安】

では,市販の解熱鎮痛薬は
もう使ってはいけないのでしょうか。

そんなことはありません。
正しく使えば,とても頼りになるお薬です。

大切なのは「量」と「頻度」と「期間」です。

一般的な目安としては,
・月10日以上,痛み止めを飲んでいる
・3か月以上,そうした状態が続いている
・薬を飲んでも頭痛がすっきり取れない

このような場合は,MOHを疑った方がよいと言えます。minds.jcqhc.or.jp+1

また次のようなときも,
自己判断で市販薬を続けるのは危険です。

・これまでと違うタイプの頭痛が出てきた
・しびれ,ろれつが回らない,視野がおかしい
・発熱や首の痛みを伴う強い頭痛がある

こうした場合は,脳卒中や髄膜炎など
命に関わる病気が隠れている可能性もあります。

「いつもと違う」「今までで一番ひどい」と感じたら,
すぐに医療機関を受診してください。

【頭痛外来でできること:専門治療と生活サポート】

頭痛が頻回にあり,市販薬に頼りがちな方には
頭痛に詳しい医師の診察を強くおすすめします。

専門外来では,頭痛ダイアリーで頻度を確認し,
片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛などをきちんと分類します。

そのうえで,
・発作時に使う薬(トリプタンなど)の調整
・予防薬(抗てんかん薬,抗CGRP抗体薬など)の導入
・ストレスや睡眠,姿勢の見直し
などを組み合わせて治療を行います。

薬物乱用頭痛が疑われる場合は,
飲み過ぎている薬を徐々に減らしながら,
別の薬や予防療法に切り替えることも重要です。

本人だけでなく,家族や職場の理解を得ながら
頭痛と付き合う「長期戦略」を立てていくことが
頭痛治療の成功には欠かせません。

【シーサー通り内科リハビリクリニックからのご案内】

当院(シーサー通り内科リハビリクリニック/那覇市)でも,
片頭痛や緊張型頭痛,薬物乱用頭痛のご相談を受けています。

頭痛専門医・脳神経内科専門医としての経験をいかし,
頭痛ダイアリーや画像検査も用いながら,
お一人おひとりに合った治療プランをご提案します。

「市販薬を飲み過ぎている気がする」
「最近,頭痛の回数が増えてきた」
「新しい頭痛治療薬について知りたい」

そんなときは,我慢せず一度ご相談ください。
予約はWeb問診やお電話から受け付けています。

頭痛で「当たり前の毎日」が奪われないように,
一緒に,無理のない頭痛コントロールを目指しましょう。

【参考文献・参考サイト】

1)解熱鎮痛薬による頭痛誘発、その原因成分とは.ケアネット,2025年12月1日公開.

2)日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会 監修.
 頭痛の診療ガイドライン2021.医学書院,2021年.

3)韓国におけるアリルイソプロピルアセチル尿素規制と
 イブ等市販薬の持ち込み禁止に関する各種情報.