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脳神経内科認知症

認知症の興奮・妄想に使う薬は危険?抗精神病薬の副作用と注意点

認知症の「怒りっぽさ・妄想・幻覚」に使う薬は安全?

抗精神病薬と死亡リスクの最新研究から考える大切なポイント

認知症というと、「物忘れ」を思い浮かべる方が多いと思います。
しかし実際には、物忘れ以外の症状で困ることも少なくありません。

たとえば、急に怒りっぽくなる、夜に眠れない、家族を疑う、
見えないものが見える、落ち着かず歩き回ることがあります。

このような症状は、認知症の「行動・心理症状」と呼ばれます。
医療の言葉ではBPSDと呼ばれ、ご家族の負担にもつながります。

介護するご家族からは、「性格が変わったように感じる」
「どう対応してよいかわからない」という声をよく聞きます。

こうした症状が強い場合、抗精神病薬という薬を使うことがあります。
ただし、認知症の方に使う場合は、特に慎重な判断が必要です。

抗精神病薬は、興奮、妄想、幻覚、不穏などを和らげる目的で
使われることがありますが、副作用にも注意が必要な薬です。

今回紹介する研究では、アルツハイマー病の方に使われる
4種類の抗精神病薬と死亡リスクの違いが調べられました。

対象となった薬は、アリピプラゾール、オランザピン、
クエチアピン、リスペリドンの4種類です。

米国の電子カルテを使った研究で、対象はアルツハイマー病の
患者さん17,004人と、大規模な内容でした。

結論から言うと、薬の種類によって死亡リスクに違いがある
可能性が示されました。

ただし、「この薬なら絶対安全」「この薬は必ず危険」と
単純に決められるものではありません。

大切なのは、症状の原因を見極め、薬以外の対応を行い、
必要な場合だけ、少量から慎重に使うことです。

【認知症の興奮・妄想・幻覚は薬の前に原因を探す】

認知症の方が急に怒りっぽくなったり、落ち着かなくなったり
した場合、すぐに「認知症が進んだ」と考えるのは早すぎます。

実は、体の不調がきっかけになっていることがあります。
尿路感染症、便秘、脱水、痛み、発熱、睡眠不足などです。

たとえば、高齢者では尿路感染症があっても、
「排尿時の痛み」ではなく、混乱や興奮として出ることがあります。

また、薬の副作用で眠気やふらつきが出たり、
不安や混乱が強くなったりすることもあります。

そのため、まず大切なのは「なぜ今その症状が出ているのか」を
丁寧に確認することです。

生活環境も大切です。部屋が暗い、音が多い、人の出入りが多い、
予定が急に変わることが、不安や興奮につながることがあります。

薬を使う前に、照明、睡眠、声かけ、食事、水分、排便、痛みを
見直すだけで、症状が落ち着くこともあります。

抗精神病薬は、本人や周囲に危険がある場合や、
生活が保てないほど症状が強い場合に検討されます。

つまり、最初から薬で抑えるのではなく、
原因を探し、環境を整え、それでも必要な時に使う薬です。

【アルツハイマー病と抗精神病薬の死亡リスク】

今回の研究では、アルツハイマー病の方に使われる
4種類の抗精神病薬を比較しています。

その結果、アリピプラゾールはオランザピンやクエチアピンと
比べて、死亡リスクが低い傾向が示されました。

また、クエチアピンはオランザピンやリスペリドンと比べて、
死亡リスクが低い結果でした。

一方で、これは実際の診療データを振り返って調べた研究です。
薬の効果を完全に証明する臨床試験とは異なります。

たとえば、どの薬が選ばれたかは、患者さんの症状、体力、
持病、医師の判断などに影響されます。

そのため、この研究だけで「この薬が一番よい」と
決めることはできません。

しかし、認知症の方に抗精神病薬を使う時には、
薬ごとの特徴を考える必要がある、という大切な示唆になります。

高齢者では、眠気、転倒、飲み込みにくさ、肺炎、脳卒中、
心臓への負担などに注意が必要です。

特に、足腰が弱い方、脳卒中の既往がある方、心臓病がある方、
糖尿病や腎臓病がある方では、慎重な観察が欠かせません。

薬を始めた後は、「落ち着いたか」だけでなく、
「ぼんやりしていないか」「歩き方が悪くないか」も大切です。

ご家族は、眠気、転倒、食欲低下、むせ込み、表情の変化、
歩行の変化をメモして、診察時に伝えると役立ちます。

【認知症治療は薬だけでなく全身管理が大切】

認知症の行動・心理症状は、脳だけの問題ではありません。
体の病気、睡眠、生活リズム、介護環境が深く関係します。

今回の研究では、糖尿病治療薬を使っている方では、
薬の種類による影響が変わる可能性も示されました。

糖尿病や脂質異常症がある方では、体重増加、血糖悪化、
脂質異常などの副作用に特に注意が必要です。

抗精神病薬の中には、食欲が増えたり、血糖値や脂質に
影響したりするものがあります。

そのため、認知症の薬を考える時にも、血圧、血糖、脂質、
腎機能、心臓の状態まで含めて判断する必要があります。

認知症の方は、複数の薬を飲んでいることも多いです。
薬が増えるほど、眠気、ふらつき、転倒のリスクも高まります。

だからこそ、「本当に必要な薬か」「量は多すぎないか」
「減らせる薬はないか」を定期的に見直すことが大切です。

抗精神病薬を使う場合は、少量から始め、効果と副作用を確認し、
必要最小限の期間にすることが基本です。

症状が落ち着いてきたら、医師と相談しながら、
減量や中止ができるかを検討します。

ご家族だけで薬を中止すると、症状が悪化することもあります。
必ず主治医と相談しながら調整しましょう。

認知症の治療で大切なのは、薬で静かにすることではありません。
ご本人が安心して過ごせる状態を作ることです。

そのためには、診断、身体のチェック、薬の見直し、
リハビリ、家族支援を組み合わせた診療が必要です。

認知症の行動症状は、ご本人からの「困っています」という
サインかもしれません。

怒りや妄想の背景に、痛み、不安、孤独、睡眠不足、
体調不良が隠れていることもあります。

薬を使う時も、使わない時も、本人の生活を中心に考えることが、
認知症診療ではとても大切です。

まとめ

認知症では、物忘れだけでなく、怒りっぽさ、妄想、幻覚、
不眠、落ち着きのなさが問題になることがあります。

抗精神病薬は、強い症状がある時に役立つことがありますが、
高齢者では副作用や死亡リスクへの注意が必要です。

今回の研究では、薬の種類によって死亡リスクに違いがある
可能性が示されました。

ただし、薬の選択は一人ひとりの症状、持病、生活背景を
見ながら、慎重に決める必要があります。

認知症で困った時は、薬だけに頼らず、体の不調、生活環境、
介護負担まで含めて相談することが大切です。

お知らせ

那覇市・浦添市・沖縄県で、認知症、物忘れ、怒りっぽさ、
幻覚、妄想、不眠、介護の負担でお困りの方は、
シーサー通り内科リハビリクリニックへご相談ください。

当院では、内科・脳神経内科・リハビリテーションの視点から、
認知症の診断、薬の調整、生活習慣病の管理、歩行機能の評価、
ご家族への説明まで総合的にサポートします。

那覇市・浦添市・沖縄県で認知症や物忘れでお困りの方が、
安心して相談できるクリニックを目指しています。

引用情報

Jiang C, Krivinko J, Yu Z, et al.
Comparative Mortality Risk of Aripiprazole, Olanzapine, Quetiapine,
and Risperidone in Alzheimer’s Disease: A Real-World Retrospective
Cohort Study with Treatment Effect Heterogeneity Analysis.
CNS Drugs. 2026.