脳神経内科
脳神経内科について
頭痛、めまい、認知症、脳卒中、パーキンソン病など
脳と神経系の疾患に特化した
専門外来です
脳神経内科は、脳・脊髄・末梢神経・筋肉の病気を専門に診る診療科です。頭痛、めまい、しびれ、麻痺、物忘れ、歩行障害など、さまざまな症状に対応します。
当院では、専門医が丁寧な問診と神経学的診察を行い、CTや超音波検査を実施します。
さらに、必要に応じて連携施設へMRI検査や脳シンチ検査なども迅速に依頼いたします。
「これくらい大丈夫かな」と思わず、気になる症状があればお気軽にご相談ください。
こんな症状や病気に
ついてご相談ください
頭痛
めまい
ろれつが回らない
手足のしびれ
うまく力が
入らない物が二重に見える
物忘れが多い
手足や体が
勝手に動くパーキンソン病
脳梗塞・脳卒中
脳出血
認知症
主な症状
- 頭痛
多くの方が経験する頭痛ですが、その診療では、重大な病気が隠れている二次性頭痛を見分けることが重要です。
二次性頭痛の原因には、脳腫瘍、脳血管障害、髄膜炎などがあり、急性期病院での治療が必要となることもあります。
そのため、頭痛を感じたら自己判断せず、早めに専門医の診察とCTやMRI検査を受けることが大切です。
当院では、脳卒中・頭痛専門医が必要に応じて頭部CT検査を早急に実施し、重症例は急性期病院と連携して対応いたします。また、一次性頭痛(片頭痛や緊張型頭痛など)に対しても、適切な診断とサポートを行っています。ぜひご相談ください。- めまい
「ふらふらする」「ぐるぐる回る」といっためまいは、内耳や脳、神経系の異常が原因で起こることがあります。正確な原因を特定するため、詳細な問診、平衡機能検査、超音波検査、CTやMRIなどの画像検査を行います。
脳卒中や脳腫瘍など危険な病気が隠れていることもあるため、めまいが続く、強いときは早めにご相談ください。当院では、脳神経内科専門医が適切な診断と治療を行い、少しでも快適な日常生活を取り戻せるようサポートします。- ろれつが回らない
言葉がはっきりしない、話しづらいといった症状は、脳の言語中枢や口周りの筋肉・神経の異常が関与していることがあります。脳梗塞や脳出血など重篤な病気の初期サインの可能性もあり、早期の診断と治療が極めて重要です。当院では、専門医が丁寧な問診・神経学的診察に加え、必要に応じてCT検査を迅速に実施しています。必要があれば急性期の病院と連携し対応致します。また、リハビリテーションを含めた包括的なサポートで、言語機能や日常生活機能の回復を全力で支援します。話しにくさを感じたら、早めにご相談ください。小さな変化でも受診が大切です。
- 手足に力が入らない
手足に力が入らないといった症状は、脳や脊髄、末梢神経、筋肉の病気が関与している可能性があります。脳卒中、神経変性疾患(ALSやパーキンソン病など)、筋疾患など、多岐にわたる原因が考えられます。当院では、専門医による神経学的診察と、必要に応じたCT検査、超音波検査、血液検査などを組み合わせて原因を特定に努め、必要があれば専門の医療機関と連携して対応します。適切な診断のもと、それぞれの病態に応じた治療やリハビリテーション計画をご提案し、サポートいたします。気になる手足の症状がある場合は、早めにご相談ください。早期対応が大切です。
脳神経内科で対応する
主な病気
パーキンソン病
パーキンソン病は、大脳の下にある中脳の黒質でドパミン神経細胞が減少し、体の動きに障害が現れる進行性の病気です。何年もかけてゆっくり進行するため、初期には気づきにくいこともあります。厚生労働省より指定難病に指定されています。発症頻度は10万人あたり100~180人とされ、65歳以上では10万人あたり約1,000人と高齢になるほど増加します。今後高齢化と共に増加している事が報告されています。40歳以下で発症するケースもあり、この場合は「若年性パーキンソン病」と呼ばれ、早期発見と適切な対応が重要です。気になる症状があれば、脳神経内科専門医にご相談ください。早期診断と治療開始が生活の質を守るカギとなります。
パーキンソン病の主な症状
- 手足が細かく震える
- 筋肉がこわばる、固くなった
- 歩幅が小さくなって歩きにくい
- 声が細くなった、かすれてきた
- 転びやすい
- 動きが全体的にゆっくりになってきた
- 文字がうまく書けない
- 便秘や立ちくらみ
- 頻尿
- 疲れやすい
- 立ちくらみ
- うつ状態
パーキンソン病の進行度
ホーン・ヤール(H-Y)重症度分類は、パーキンソン病の進行度を表す病期分類として広く使われています。H-Y分類は1度から5度まであり、数字が大きくなるほど症状が進行した状態を示します。この分類を参考にして、患者様の状態に応じた治療薬の選択や、治療効果の判定を行うことが重要です。
| H-Y 1度 | 体の左側か右側どちらかだけに症状が出ている状態です。 |
|---|---|
| H-Y 2度 | 左右両側性に症状が出ていますが、姿勢反射障害はみられません。 |
| H-Y 3度 | 姿勢反射障害がみられる時期です。 歩行障害が目立つようになり、日常生活に不便を感じますが、介助は必要ありません。 |
| H-Y 4度 | 歩行は不安定ながら可能ですが、日常生活を送るのにさまざまな介助が必要になります。 |
| H-Y 5度 | 自力での歩行が困難で移動に車椅子が必要、もしくは寝たきりの状態です。 |
パーキンソン病の診断・治療
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診断・検査
パーキンソン病を確実に診断できる単一の検査は、現在のところ存在しません。そのため、症状の経過観察と、脳神経内科専門医による詳細な神経学的身体診察が非常に重要となります。
血液検査や頭部CT、MRIといった画像検査では明らかな異常が認められないことも多く、これらの検査は主に脳腫瘍や脳血管障害など、急を要す疾患を除外するために行われます。診察や検査だけでは診断が確定しない場合、少量のパーキンソン病治療薬(ドパミン補充療法など)を試し、症状の改善をみることで診断の一助とすることもあります。さらに、特殊な血液検査や、脳内のドパミン神経機能を観察する「DATスキャン(ドパミントランスポーターシンチグラフィ)」、自律神経障害の進行を評価するための「心筋MIBGシンチグラフィ」といった特殊検査が診断に役立つ場合もあります。
これらの検査は、当院と連携している専門病院に迅速に依頼し、より正確な診断と適切な治療方針の決定をサポートしています。 -
治療
パーキンソン病の治療は、減少したドパミンを補う薬物療法が基本となります。近年、さまざまな作用機序をもつ内服薬に加え、貼付薬や注射薬も利用できるようになり、症状や生活スタイルに合わせた柔軟な治療が可能になっています。薬物療法以外にも、脳深部に電極を留置して脳神経を刺激する「脳深部刺激療法(DBS)」や、胃ろうから体外式ポンプを通じてレボドパ・カルビドパ配合経腸用液を持続投与する「経腸療法(LCIG療法)」などが選択肢となる場合があります。
これらの高度医療は、必要と判断したら当院と連携する専門施設に紹介のうえ、適切なタイミングでご案内いたします。さらに、近年では皮下に専用デバイスを設置し持続的にドパミン作動薬を投与する「ドーパミン皮下注射療法」も登場しており、患者様一人ひとりに合わせた治療戦略が重要視されています。加えて、ストレッチやバランス運動などのリハビリテーションを早期から取り入れ、身体機能・精神機能を維持し、症状の進行を遅らせながら社会生活の継続を目指すことも大切です。
多彩な治療選択肢の中から適切な方針を選ぶためには、神経内科専門医による的確な評価と長期的なサポートが欠かせません。
脳血管障害(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血など)
脳血管障害とは、脳梗塞や脳出血など、脳の血管に異常が起きて生じる病気の総称です。突然の手足の麻痺やしびれ、ろれつが回らない、言葉が出にくい、片目が見えにくいといった症状が現れることが多く、迅速な診断と初期対応が極めて重要です。脳血管障害は決して珍しい病気ではなく、加齢や生活習慣病に伴って誰にでも起こりうる身近な疾患です。特に脳梗塞では、発症から数時間以内であれば血栓を溶かす「血栓溶解療法(tPA)」や、血管内治療(血栓回収療法)など、特殊な治療を受けられる可能性があります。そのため、症状に気づいたらすぐに救急車を呼んで病院を受診することが命を守る鍵となります。
当院では、急性期が疑われる場合には頭部CTやMRIなどを速やかに実施し、必要に応じて大学病院や総合病院など専門施設へ迅速にご紹介いたします。
後遺症を最小限に抑え、社会復帰を目指すには、発症直後の判断と行動がとても大切です。気になる症状があれば、すぐにご相談ください。
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脳梗塞
脳梗塞とは、脳の血管が何らかの原因で詰まり、血液(酸素や栄養)が届かなくなることで脳細胞が壊死してしまう病態を指します。
発症すると、片側の手足の麻痺、言語障害、意識障害、感覚障害、ふらつきなどの症状が現れます。脳細胞はいったん壊死すると再生できないため、後遺症として麻痺や言語障害が残り、日常生活に支障をきたすこともあります。脳梗塞の原因はさまざまで、大きな血管の動脈硬化によって血流が低下する「アテローム血栓性脳梗塞」、脳の深部にある細い血管(穿通枝)が詰まる「ラクナ梗塞」、心房細動など心臓内にできた血栓が脳に飛ぶことで起こる「心原性脳塞栓症」などに分類されます。特に高齢化に伴い、心房細動を背景とした心原性脳塞栓症の割合が増加しており、重症化するリスクが高いため注意が必要です。日本における脳梗塞の年間発症数は約20〜25万人と推定されており、脳血管障害全体の約7割を占めています。死亡原因としても依然として上位にあり、社会的影響の大きい疾患です。そのため、脳梗塞は発症予防が重要であると同時に、症状に気づいた場合には早期発見・早期治療が極めて重要となります。特に発症から数時間以内であれば、特殊な治療が可能なケースもあります。異変を感じたら、ためらわずすぐに救急車を呼び、医療機関を受診することが、命を守り後遺症を軽減するためのカギとなります。 -
脳出血
脳出血とは、脳の血管が破れたり破裂したりして、血液が頭蓋内に流れ出し、脳を直接損傷する状態を指します。脳出血の発症メカニズムで最も多い原因は高血圧です。高血圧が続くと、心臓から全身に送り出す血液の圧力が高まり、脳の細かい血管にも常に過剰な負担がかかるため、血管の内壁が傷つき、やがて脆弱化して破れやすくなります。高血圧以外にも、脳動静脈奇形などの先天的な脳血管異常や、高齢者に多い「アミロイドアンギオパチー」(たんぱく質の一種アミロイドが脳血管に沈着して脆くなる病態)によって脳出血が引き起こされることもあります。日本国内における脳出血の年間発症数は約4〜5万人と推定されており、脳卒中全体の約15〜20%を占めます。
発症すると重度な麻痺や意識障害を伴うことが多く、脳梗塞に比べても死亡率が高く、後遺症も重くなりやすい特徴があります。
そのため、脳出血の予防には高血圧の適切なコントロールが何よりも重要です。日常的な血圧管理、生活習慣の見直し、必要に応じた降圧治療を行うことで、脳出血リスクを大きく減らすことが可能です。
万が一、急な手足の麻痺、激しい頭痛、意識障害などの症状が現れた場合には、ただちに救急車を呼び、速やかに医療機関を受診することが命を守るカギとなります。 -
くも膜下出血
くも膜下出血とは、脳出血と同様に頭蓋内出血の一種であり、脳の血管が破裂して血液が脳の表面を覆うくも膜下腔に流れ込むことで発症する重篤な脳疾患です。多くの場合、脳の血管の一部に発生した動脈瘤(こぶ)が破裂することによって生じます。動脈瘤は、先天的な脳血管壁の異常や加齢変化を背景に形成されると考えられていますが、脳動静脈奇形や頭部外傷などでも発症することがあります。動脈瘤は破裂するまではほとんど無症状ですが、ひとたび破裂すると「バットやハンマーで殴られたような」と形容されるほど激しい頭痛が突然起こり、嘔吐、吐き気、意識障害、昏睡に至ることもあります。出血量が多い場合には、重篤な後遺症を残したり、生命に関わる可能性も高くなります。日本国内では、くも膜下出血の年間発症数は約2〜3万人と推定されており、発症後の死亡率は30〜50%と非常に高い疾患です。脳卒中全体の発症数としては少数派ですが、若年層〜中高年層に突然発症し、社会的影響も大きいことが特徴です。
また、未破裂脳動脈瘤(まだ破れていない動脈瘤)は日本人成人の2〜5%に存在すると報告されており、特に家族にくも膜下出血の既往歴がある方はリスクが高いことが知られています。加えて、高血圧や喫煙歴がある場合、動脈瘤の発生・破裂リスクがさらに高まるため、生活習慣の改善と定期的な脳ドック・MRI検査によるチェックが推奨されています。くも膜下出血は、予防のためのリスク管理(血圧コントロール、禁煙など)が非常に重要であり、破裂のリスクが高い未破裂動脈瘤に対しては、手術や血管内治療を検討する場合もあります。突然の激しい頭痛や意識障害が出た場合には、迷わず救急車を呼び、できる限り早く専門医療機関を受診することが命を守る第一歩です。
脳血管障害の主な症状―急に起こる事がポイント!
- 意識が悪い
- 頭痛
- 嘔吐
- 片方の手足がしびれる
- 意味不明な言動
- 言葉がうまく出ない
- 片方の手足が動かない
- 顔の半分がしびれて動かない
FASTで見逃さない!!脳卒中のサイン
迷わず119番、脳卒中は時間との勝負です。
脳卒中の治療は、発症からの時間が早ければ早いほど効果が期待できる治療法(血栓溶解療法など)があります。
特に脳梗塞では4.5時間以内の治療開始が後遺症を減らすポイントとされており、「様子を見る」は命取りになることもあります。
脳血管疾患の原因
生活習慣の乱れが脳血管疾患の原因に
脳血管疾患の原因の多くは高血圧、脂質異常症、糖尿病、加齢によって引き起こされることが大半で、自覚症状が現れないことから病状を進行させやすく、やがて動脈硬化を招くようになります。
これによって血管は脆くなるなどして狭窄化し、脳血管の血流が悪くなる、脳血管が破綻する、心臓内で作られた血栓が脳血管まで移動して詰まるなどして、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)を発症するようになります。
脳梗塞の検査・治療
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検査
脳梗塞が疑われる場合、まずは頭部MRIや頭部CTなどの画像検査を用いて、脳梗塞が起きているかどうかを確認します。脳梗塞の原因はさまざまであり、原因に応じた検査が非常に重要です。動脈硬化による血管の狭窄や閉塞が疑われる場合は、「頸動脈超音波検査」を行い、頸動脈の内膜肥厚や血流低下を確認します。心臓から血栓が飛ぶタイプの「心原性脳塞栓症」が疑われるときは、「心臓超音波検査」や「心電図」、「24時間ホルター心電図」により心房細動などの不整脈の有無を評価します。そのほか、深部静脈血栓症や卵円孔開存症(PFO)、抗リン脂質抗体症候群などの血栓性素因を調べるために、血液検査や特殊な心エコー検査(バブルテスト)なども検討されることがあります。脳梗塞は一度発症すると、適切な評価と予防策を取らない限り、再発するリスクが高くなることが知られています。とくに初発時に原因を正確に突き止めていない場合、数か月〜数年以内に再発を繰り返すケースも少なくありません。したがって、脳梗塞の診断と再発予防には、脳卒中専門医による総合的かつ丁寧な評価が不可欠です。原因に応じた治療(抗血小板薬、抗凝固療法、生活習慣の改善など)を行うことで、再発リスクを大きく低下させることが可能です。
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治療
脳梗塞は、早期に血流を再開させることで、脳細胞のダメージを最小限に抑えることができます。治療としては、血栓を溶かす薬(血栓溶解療法)などが用いられます。特に発症から4.5時間以内であれば、「t-PA(アルテプラーゼ)」という血栓溶解薬を使用できる可能性があり、高い効果が期待されます。ただし、t-PAには出血のリスクもあるため、使用には専門的な判断が求められます。近年では画像検査と神経学的診察の結果をもとに、発症から数時間が経過していても、血管内治療(カテーテルを用いた血栓回収療法)が行われるケースもあります。その後は、残された脳細胞の働きを活かし、失われた機能を補うために、リハビリテーションが開始されます。さらに、脳梗塞は一度発症すると再発リスクが高まるため、再発予防の治療も極めて重要です。原因に応じて、抗血小板薬(アスピリンなど)や抗凝固薬(DOACなど)を使い分ける必要がありますが、不適切な選択は出血や再発のリスクを高める可能性があるため、専門医の判断のもとで慎重に行います。また、上記の治療だけでは改善が難しい場合や、再発を防ぐ必要がある場合には、頸動脈内膜剥離術(CEA)や頸動脈ステント留置術(CAS)などの手術療法が選択されることもあります。
脳出血・くも膜下出血の検査・治療
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検査
くも膜下出血が疑われる場合には、まず出血の有無や部位、その程度、原因となる動脈瘤の有無を確認するために、複数の画像検査を組み合わせて評価を行います。頭部CT検査は出血の診断に最も広く用いられており、特に発症直後は高い検出精度が期待されます。出血の程度が軽度だったり、発症から時間が経過している場合には、CTで異常がはっきりしないこともあります。その際には、頭部MRI検査やMRA(脳血管の断面撮影)、脳血管撮影(造影剤を使った血管の詳細な評価)を追加して、動脈瘤の位置や形状、出血源を詳しく確認します。また、画像検査でも出血の有無が明確でない場合には、髄液検査(腰椎穿刺)を行うことがあります。この検査では、背中から髄液を採取し、血液が混ざっていないかを調べることで、くも膜下出血の有無を判断します。
このように、複数の検査を組み合わせて総合的に診断を進めることが、正確な評価と早期治療につながります。 -
治療
脳出血と聞くと、すぐに手術が必要だと思われがちですが、実際に外科治療が必要となるのは、血腫が大きく脳を圧迫し、生命予後が悪化する恐れがある場合に限られます。このような状態では、速やかに血腫を取り除き、出血部位を止める手術(開頭血腫除去術など)が必要です。一方、血腫が小さく脳への影響が限定的な場合は、薬物療法が中心となります。
高血圧による再出血を防ぐために降圧薬を使用するほか、止血薬や、脳のむくみを抑える抗浮腫薬(脳圧管理薬)などが用いられます。できるだけ早期からリハビリテーションを併用し、機能回復を目指していきます。
くも膜下出血の場合には、破裂した脳動脈瘤からの再出血が最も大きなリスクとなるため、できる限り早期に再破裂を防止する治療が必要です。
具体的には、開頭手術によって動脈瘤をクリップで挟んで封じる「脳動脈瘤クリッピング術」や、カテーテルを使って血管内から動脈瘤を塞ぐ「コイル塞栓術」が選択されます。さらに、くも膜下出血では急性期を乗り越えた後も、脳血管攣縮(脳の血管が細くなり脳梗塞を引き起こす状態)や、水頭症(脳脊髄液の流れが障害され脳室が拡大する状態)といった合併症が起こることがあり、注意深い経過観察と適切な対応が欠かせません。
認知症
年齢を重ねると誰でも多少の「ものわすれ」を経験しますが、特に同年代の方と比べて目立つ場合には、専門医への相談をおすすめします。
「ものわすれ」の原因はさまざまで、単なる加齢によるものから、アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、複数のタイプが存在します。なかには、日によって状態が変動する“まだら認知症”と呼ばれる状態もあり、しっかりしている時と、混乱が見られる時が交互に現れることもあります。近年、認知症は社会全体で大きな課題となっています。日本では65歳以上の約7人に1人(約15%)が認知症を患っていると推計され、今後も高齢化の進展とともに患者数は増加が予想されています。2025年には認知症患者数が約730万人に達するとされており、国を挙げた対策が進められています。
また、近年では、アルツハイマー病のごく早期段階(軽度認知障害:MCI)の段階で診断し、進行を抑える新しい治療薬(レカネマブ・ドナネマブなど)が登場してきています。早期に発見し、適切な治療介入を行うことで、進行を緩やかにしたり、生活の質を保つことが期待されています。「最近、ものわすれが気になる」「同じ話を繰り返してしまう」「予定を忘れることが増えた」など、少しでも不安を感じたら、神経学的な診察と必要な検査によって原因を明らかにすることが大切です。原因がはっきりすれば、適切な治療やサポートを受けることができ、将来への備えにもつながります。
てんかん
「てんかん」は、脳内の神経細胞が異常な電気的興奮を起こすことで、痙攣や意識障害、行動異常などの発作が反復して起こる慢性的な脳の病気です。
病的な電気興奮が脳のどの部位に生じるかによって、症状は非常に多様で、運動発作、感覚異常、精神症状などさまざまな形をとります。これらの異常な電気活動は脳波検査(EEG)で異常脳波として検出されるため、診断には脳波検査が必要不可欠ですし、脳の構造異常や器質的な病変を評価するために、頭部MRI検査やCT検査といった脳画像検査も重要です。原因精査や治療方針決定のためには、場合によっては血液検査(炎症・代謝異常の確認など)を追加することもあります。「てんかん」の患者様は、人口10万人あたり約200~300人とされ、決して稀な病気ではありません。小児期から高齢期まで幅広い年齢層で発症し、適切な診断と治療によって多くの方が日常生活を送ることが可能です。てんかんの診療には、発作の種類や背景疾患を正確に見極め、個別に適切な治療(抗てんかん薬の選択、場合によっては手術治療)を行うことが重要です。そのため、専門医による詳細な問診、神経学的診察、脳波・画像検査を総合的に行うことが推奨されます。「発作かもしれない」「意識を失うことがある」「奇妙な感覚が繰り返し起こる」などの症状がある場合は、自己判断せず、専門医にご相談ください。
てんかんの主な症状
- 泡を吹いて倒れる
- 手や足などがピクッピクッと動く
- 身体の一部に力が入って硬直している
- 意識がなくなり、全身が痙攣する
- 数十秒程度、意識が途切れる
- 手足が突然熱くなったり、冷たくなる
- 動作を突然やめる
- うつろな表情になり返答がなくなる
てんかんの原因・発症しやすい人とは
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原因
てんかんの原因は多岐にわたり、出生時の仮死、脳の損傷、脳炎や髄膜炎、脳梗塞、脳出血、脳外傷など、明らかな脳の異常が背景にあることがあります。このように原因が特定できるものを「症候性てんかん」と呼びます。一方で、特に幼児や小児に多く見られ、明確な異常が検出できない場合は「特発性てんかん」と呼ばれます。
遺伝的な体質や脳の発達上の特性が関与している可能性も指摘されています。 -
なりやすい人
てんかんは、年齢・性別・人種に関係なく発症する可能性がある病気です。発作は、脳の神経細胞(ニューロン)に突発的に発生する激しい電気的な興奮によって引き起こされます。乳幼児から高齢者まで、幅広い年齢層で発症が見られますが、特に小児期と高齢期に発症率が高いことが知られています。人口100人あたり0.5〜1人(0.5〜1%)がてんかんを発症するとされており、決して稀な病気ではありません。
なお、日本国内では推定約100万人のてんかん患者様が存在しています。てんかんは決して特殊な病気ではなく、誰にでも起こりうる可能性がある身近な疾患です。
てんかんの治療の流れ
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Step01
神経学的診察
脳、脊髄、末梢神経の機能を評価するための一連の検査と問診です。患者の意識状態、精神状態、運動機能、感覚機能、反射などを詳しく調べ、神経系の異常を特定します。
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Step02
診断
迅速に診断を行い、治療を開始致します。
頭部CTなどの画像診断が必要であれば行います。 -
Step03
治療
治療計画をもとに治療を進めていきます。
てんかんの検査と治療方法
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検査
- 脳波検査(EEG)
脳の電気的な活動をリアルタイムで記録する、てんかん診断において最も重要な検査です。
発作が起きた部位では特徴的な波形(異常脳波)が現れるため、脳のどの領域に異常があるかを特定できます。
また、脳波検査は発作の種類を判定するためにも役立ち、治療方針の決定に欠かせません。
当院では、脳波検査は提携している専門医療機関に迅速にご紹介し、正確な診断に繋げています。 - 画像検査(MRI・CT)
脳腫瘍や脳の奇形、脳血管障害など、症候性てんかん(特定の脳の異常によって引き起こされるてんかん)の有無を調べるために、MRI検査やCT検査を行います。 - 血液・尿検査
先天性代謝異常、中枢神経感染症、免疫異常など、てんかんの原因となる全身性疾患を調べるために血液・尿検査を行います。
また、治療開始後も、薬剤の適正使用を確認するために、血液検査による副作用チェックや血中薬物濃度測定を継続的に行います。
- 脳波検査(EEG)
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治療
「てんかん」の治療は、基本的に薬物療法が中心となります。
それぞれの発作型に応じて、第一選択薬、第二選択薬が定められており、患者様により適した薬剤を選択して治療を進めます。
治療中は、薬の血中濃度が有効な治療域に達しているかを定期的に確認しながら、薬の量を慎重に調整します。できるだけ少ない種類・少ない量の薬で発作を抑えることが副作用防止にもつながりますが、薬剤量が少なすぎると発作が再発するリスクもあるため、バランスの取れた管理が必要です。
近年では新しい抗てんかん薬も登場しており、従来の薬ではコントロールが難しかった患者様にも、より適した選択肢が広がっています。治療コントロールが難しい場合には、複数の薬を併用することもありますが、それでも十分な発作抑制が得られない場合には、外科的治療やデバイス治療が検討されることがあります。 例えば、近年では迷走神経刺激療法(VNS療法)という、首に小型装置を植え込み電気刺激を加える方法も選択肢に加わっています。また、発作の起点となる脳の部位が明確な場合には、手術(焦点切除術など)による根治的治療が考慮されることもあります。
その際には、専門性の高いてんかんセンターと密に連携し、適切な医療機関へのご紹介を行います。患者様一人ひとりに適切な治療方針を一緒に考え、より良い生活の実現を目指していきます。
リスクを知ることから。各種検査で脳疾患の早期発見をサポート
元気な毎日を送るために、脳・神経・心臓の健康状態を定期的にチェックしてみませんか?
当院では、脳血管や神経機能、循環器系の異常を早期に見つけるため、さまざまな精密検査を行っています。具体的には、脳卒中や認知症リスクを評価する血液検査、頭部や胸部を断層画像で確認できるCT検査、頸動脈や心臓、甲状腺などの状態を確認する最新の超音波検査、骨粗しょう症の評価に役立つ骨密度検査、いびきや日中の眠気が気になる方に向けた睡眠時無呼吸検査などがあります。さらに、動悸や息切れ、めまいなどがある方に対しては、心房細動などの不整脈を検出するための「約1週間装着可能なパッチ型ホルター心電図」も導入しており、日常生活に近い状態で心電図を記録することが可能です。このほか、てんかんや意識消失の原因検索のための脳波検査、手足のしびれや末梢神経障害の評価を行う神経伝導速度検査も、提携する専門医療機関にて対応しています。症状がない場合でも、脳や神経、心臓の小さな変化が重大な疾患の前兆であることも少なくありません。早期にリスクを発見し、生活習慣の見直しや治療を行うことで、脳卒中や認知症、不整脈の発症を未然に防ぐことができます。当院では、すべての検査結果について医師が丁寧にご説明し、将来を見据えた対策や生活習慣のアドバイスを行っています。「念のため一度調べておきたい」「最近少し不安を感じる」といった場合も、どうぞお気軽にご相談ください。
脳卒中、認知症のリスク低減へ。生活習慣病予防健診。
生活習慣病は、脳卒中や認知症など深刻な脳疾患のリスクを高める要因となることが知られています。当院では、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病に着目し、脳の健康状態を包括的に評価する脳の予防健診を実施しています。血管年齢の評価に加え、血液検査や詳細な問診を通じて、生活習慣病が脳に与える影響を早期に把握し、脳疾患のリスクを下げるための生活習慣の改善アドバイスや、今後の経過観察プランをご提案いたします。
「まだ症状はないけれど、将来が心配」「健康な脳を維持したい」という方も、ぜひお気軽にご相談ください。早期発見と早期対策が、健康な毎日を支える第一歩です。

専属セラピストによる
リハビリを行っています
当院では、専属セラピストによる疾患別リハビリテーションを提供しています。
特にパーキンソン病や脳梗塞、その他すべての脳神経内科領域に対応できる経験豊富なセラピストが、医療保険を利用したマンツーマンのリハビリテーションを懇切丁寧に実施いたします。
また、脳科学を応用し、麻痺した手足のみならず、それらに運動指令を出す脳の仕組みに着目した「ニューロリハビリテーション(神経リハビリ)」にも積極的に取り組み、麻痺の改善を目指しています。
さらに、脳神経疾患だけでなく、腰痛や関節痛、骨折・術後リハビリなど、一般的な整形外科疾患に対するリハビリテーションにも幅広く対応しています。
ご希望の方は、まず診察・診断のうえ、リハビリのご予約を承りますので、お体の不安を感じた際は、どうぞお気軽にご相談ください。