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もの忘れの前にわかる可能性? 認知症予測に注目される血液検査p-tau217
認知症は血液検査で早く気づける?
p-tau217と軽度認知障害リスクの最新研究
認知症は、症状がはっきり出る前から、
脳の中で少しずつ変化が進むと考えられています。
そのため最近は、できるだけ早い段階で
変化を見つける方法に大きな注目が集まっています。
その中で期待されているのが、
血液バイオマーカーと呼ばれる指標です。
これは、血液の中に含まれる成分を調べ、
脳の病気の手がかりを探す方法です。
今回の研究で注目されたのは、
p-tau217という血液中のたんぱく質です。
p-tau217は、アルツハイマー病に関連する
脳の変化を反映する可能性があるとされています。
今回の論文では、このp-tau217が高い人ほど、
将来の**軽度認知障害(MCI)**や認知症の発症と
関係するのかが詳しく調べられました。
【p-tau217とは? 血液で調べる認知症バイオマーカー】
p-tau217は、タウたんぱくという物質に
変化が加わったものの一種です。
タウたんぱくは脳の神経細胞の中で働きますが、
異常が起こると神経の障害と関わることがあります。
これまでは、脳脊髄液の検査やPET検査など、
やや負担の大きい方法が中心でした。
一方で血液検査なら、
体への負担が比較的少なく、受けやすいのが利点です。
今回の研究は、65~79歳で開始時には
認知機能が保たれていた女性2766人を対象に行われました。
その後、最長25年にわたって追跡し、
MCIや認知症を発症するかが確認されました。
その結果、p-tau217が高いほど、
MCIまたは認知症の発症リスクが高いことが示されました。
特に、p-tau217が1段階高くなるごとに、
MCIまたは認知症のリスクは大きく上昇していました。
さらに、認知症単独でみると、
その関連はMCIよりも強くみられました。
【研究結果のポイント 認知症リスクはどのくらい高まる?】
この研究では、追跡期間中に
多くの参加者がMCIまたは認知症を発症しました。
解析では、p-tau217が高い人ほど、
将来の認知機能低下と強く結びついていました。
とくに認知症では関連がより強く、
研究者らはp-tau217が将来予測に役立つ可能性を示しています。
また、p-tau217を年齢などの情報と組み合わせると、
認知症を見分ける精度がさらに上がりました。
つまり、血液検査だけですべてが決まるわけではありませんが、
年齢や背景情報と合わせて考えることで、
より実用的になる可能性があります。
一方で、注意点もあります。
この研究は高齢女性が対象で、
男性や若い世代にそのまま当てはまるとは限りません。
また、認知症の中でも
どのタイプかを細かく分けた研究ではありません。
したがって、p-tau217が高いからといって、
すぐに「認知症です」と判断する検査ではありません。
あくまで、将来リスクを考えるうえで
有力な手がかりの一つと理解することが大切です。
【年齢・APOEε4・ホルモン療法との関係に注目】
今回の研究で興味深かったのは、
p-tau217と認知機能低下との関係が、
全員で同じ強さではなかったことです。
70歳を超える女性や、
APOE ε4という遺伝的リスクをもつ人では、
関連がより強くみられました。
APOE ε4は、アルツハイマー病のなりやすさと
関係するとされる体質の一つです。
さらに、女性ホルモン療法のうち、
エストロゲン+プロゲスチンを受けた群では、
認知症との関連がより強かったと報告されました。
ただし、これは今後さらに検証が必要で、
すぐに治療方針を変える結論ではありません。
人種による違いも検討され、
白人女性と黒人女性で関連の強さに差がみられた一方、
年齢とp-tau217を組み合わせた認知症予測力は
おおむね似ていたとされています。
この点は、今後の認知症診療で
「誰に、どのように使うか」を考えるうえで重要です。
血液バイオマーカーはとても有望ですが、
単独で万能な検査ではありません。
問診、神経心理検査、画像検査、生活習慣、
血圧・糖尿病・脂質異常症などの管理も含めて、
総合的に評価することが大切です。
認知症は、早めに気づいて備えることで、
生活の整え方や治療の選択肢が広がる病気です。
今後、p-tau217のような血液検査が広がれば、
より早い段階で相談や介入につながる時代が
近づいてくるかもしれません。
当院からのお知らせ
もの忘れ、軽度認知障害、認知症が気になる方、
ご家族の変化が心配な方は、早めの相談が大切です。
シーサー通り内科リハビリクリニックでは、
内科・脳神経内科の視点から、
認知機能低下の評価や生活習慣病管理を含めた
総合的な診療を行っています。
那覇市・浦添市・沖縄県で
もの忘れや認知症の不安でお困りの方は、
どうぞお気軽にご相談ください。
引用文献
Shadyab AH, Zhang B, LaCroix AZ, et al.
Plasma Phosphorylated Tau 217 and Incident Mild Cognitive Impairment and Dementia in Older Women.
JAMA Network Open. 2026;9(3):e261295.
doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.1295
