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デュシェンヌ型筋ジストロフィーに新たな細胞治療|deramiocelが第3相試験で進行を抑制
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、筋肉が徐々に弱くなっていく
遺伝性の病気です。主に男児に発症し、骨格筋だけでなく心臓にも影響します。
治療法は着実に進歩していますが、病気が進行して歩行が難しくなった患者さんの
腕の機能や心機能を長期間守る治療は、現在も大きな課題となっています。
2026年7月、医学誌The Lancetに、進行したDMDに対する細胞治療
「deramiocel(デラミオセル)」の第3相臨床試験HOPE-3が報告されました。
結果は注目すべきもので、deramiocelを投与された患者さんでは、
プラセボ群と比べて上肢機能の低下が有意に抑えられていました。
【デュシェンヌ型筋ジストロフィー|なぜ腕と心臓を守ることが重要?】
DMDは「ジストロフィン」という筋肉を守るタンパク質が正常に作られないことで、
筋肉の障害が徐々に進行するX染色体関連の遺伝性疾患です。
年齢とともに歩くことが難しくなりますが、歩けなくなった後も、腕や手の機能を
保つことは、食事、着替え、車いす操作など日常生活の自立に直結します。
さらに重要なのが心臓です。DMDでは心筋にも障害が起こり、
「心筋症」と呼ばれる状態が進行します。これは生命予後にも大きく関係します。
今回研究されたderamiocelは、他人から提供された心臓由来の特殊な細胞を
利用する治療です。3か月ごとに点滴で静脈内投与する方法が用いられました。
この細胞はジストロフィンそのものを補う治療ではありません。炎症や線維化、
つまり筋肉が傷ついて硬く置き換わる反応を抑える作用が期待されています。
【DMD細胞治療HOPE-3|上肢機能の低下を約54%抑制】
HOPE-3試験には10歳以上のDMD患者106人が参加しました。
deramiocel群54人とプラセボ群52人に無作為に分け、12か月間比較しました。
評価の中心となったのが「PUL2.0」という指標です。これは肩、肘、手などを
どの程度動かせるかを点数化し、DMDの上肢機能を評価する検査です。
12か月後のPUL2.0の変化率は、deramiocel群がプラセボ群より
4.55%良好で、統計学的にも有意な差が認められました。
点数にすると約1.2ポイントの差ですが、研究者らの計算では、
12か月間における骨格筋の病気の進行が約54%抑えられたことになります。
特に肘を中心とした上肢機能では、病気の進行速度がプラセボ群より
約65%遅く、食事などの日常生活動作を守る可能性も示されました。
一方、心臓の収縮力を表すLVEF(左室駆出率)については、全体解析では
改善傾向を示したものの、主要な副次評価項目として有意差には達しませんでした。
したがって、「心機能にも効果が確立した」と断定するのはまだ早く、
上肢機能に対する有効性の方が今回の研究では明確に証明されたポイントです。
【deramiocelの今後|期待できる治療だが長期評価も必要】
安全性については、新しい重大な問題は確認されませんでした。一方で、
過敏反応はderamiocel群で41.5%、プラセボ群で15.4%に認められました。
多くは軽度から中等度で、頭痛、咳、発熱、吐き気、頻脈などが報告され、
その多くは24~48時間以内に改善しています。試験中の死亡例はありませんでした。
そのため、実際の投与には医療機関での十分な観察が必要です。研究でも、
アレルギーに似た反応を考慮し、医学的管理下での点滴が必要とされています。
今回の研究が特に重要なのは、歩行能力が低下した進行期のDMD患者さんを
対象として、第3相試験で主要評価項目を達成した点にあります。
また、特定の遺伝子変異だけを対象にする治療ではないため、研究結果がさらに
確立すれば、幅広いDMD患者さんに応用できる可能性があります。
ただし、観察期間は12か月です。治療効果が何年続くのか、長期安全性、
心不全や生命予後を本当に改善するのかについては今後の検証が必要です。
deramiocelはDMDを「治す」ことを証明した治療ではありません。しかし、
残された筋肉の機能をできるだけ長く守るという新しい可能性を示しました。
DMD治療では薬物療法だけでなく、心臓・呼吸管理、関節拘縮の予防、
リハビリテーションなどを組み合わせた長期的な支援が引き続き重要です。
Q&A|DMDとderamiocelについて
Q.deramiocelは遺伝子治療ですか?
A.いいえ。心臓由来の細胞を利用した細胞治療です。ジストロフィン遺伝子を
直接修復するのではなく、炎症や線維化を抑える作用などが考えられています。
Q.DMDが治る治療なのでしょうか?
A.現段階では「治癒させる」とはいえません。今回証明されたのは、
進行期DMD患者さんの上肢機能低下を12か月間抑制したという効果です。
Q.すでに日本で一般的に受けられる治療ですか?
A.今回の論文では臨床試験中の治療として報告されています。実際の使用可能性や
承認状況については、各国の規制当局による最新情報を確認する必要があります。
シーサー通り内科リハビリクリニックから
筋ジストロフィーをはじめとする神経・筋疾患では、病名を診断するだけでなく、
筋力、歩行、上肢機能、呼吸、心機能を長期的に見守ることが重要です。
那覇市のシーサー通り内科リハビリクリニックでは、脳神経内科と
リハビリテーション科が連携し、神経・筋疾患の評価やリハビリ相談を行っています。
「最近力が入りにくい」「歩きにくくなった」「筋肉が細くなった」など、
神経や筋肉の症状が気になる場合には、お気軽にご相談ください。
引用・参考文献
McDonald CM, Villa C, Soslow JH, et al.
Deramiocel heart-derived cellular therapy in advanced Duchenne muscular dystrophy
(HOPE-3): a phase 3, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
The Lancet. Published online July 29, 2026.
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(26)01385-1 ClinicalTrials.gov:NCT05126758
