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パーキンソン病の薬と骨密度の関係
骨粗しょう症・骨折リスクを脳神経内科専門医がわかりやすく解説
パーキンソン病(PD)は、手の震えや体のこわばりで知られる神経の病気です。
じつはこの病気、骨の健康とも深い関係があることをご存じでしょうか。
パーキンソン病の方は、そうでない方と比べて骨折しやすく、
なかでも股関節(大腿骨近位部)の骨折は特に多いとされています。
さらに、治療に使われる薬(抗パーキンソン病薬)が骨に影響を与える
可能性も指摘されてきました。
2026年に医学誌『Bone』に掲載されたシステマティックレビュー(複数の研究を
まとめた総合的な解析)をもとに、その最新エビデンスをわかりやすくお伝えします。
【パーキンソン病と骨折リスク】なぜ骨が弱くなるのか
パーキンソン病の患者さんは、一般の人に比べて骨折リスクが2〜3倍高いといわれています。
これには複数の原因が重なっています。
・ビタミンD不足
・筋肉量の低下(サルコペニア)や体重減少
・動きにくさによる運動量の低下
・転倒しやすい姿勢のくずれ
・腸からの栄養吸収の低下
・脳や神経にかかわるホルモンバランスの変化
骨を作る「骨芽細胞」と骨を溶かす「破骨細胞」には、
それぞれドーパミンの受け皿(受容体)があることもわかっており、
パーキンソン病で起こるドーパミン不足が、直接的に骨の代謝に影響する
可能性も研究者の間で注目されています。
17の研究・計232万人以上を対象とした大規模なメタアナリシスでは、
パーキンソン病が股関節骨折・椎体以外の骨折リスクをいずれも高めることが示されています。
骨折後の回復は健常者よりも困難で、死亡リスクも上がることが知られています。
【L-ドパと骨密度の関係】ホモシステインという「中間物質」がカギ
パーキンソン病の最も主要な治療薬は「レボドパ(L-ドパ)」です。
1970年代から使われ続け、現在も多くの患者さんが服用しています。
L-ドパが体内で代謝される(分解される)過程で、
「ホモシステイン(Hcy)」というアミノ酸の一種が増えることがわかっています。
通常、ホモシステインは血液中にごく少量しか存在しません。
しかしこれが過剰になる(高ホモシステイン血症)と、
動脈硬化、認知症、そして骨粗しょう症との関連が報告されています。
ホモシステインが骨に悪影響を与えるメカニズムとしては、次のことが挙げられます。
・骨を溶かす破骨細胞の働きを促進させる
・骨を作る骨芽細胞の働きを弱める
・骨の土台となるコラーゲン線維の形成を邪魔する
今回のレビューで対象となった7つの研究のうち、
DXA(デキサ)法という精度の高いX線を使った骨密度測定を行った4つの研究の結果は以下の通りです。
▶ L-ドパ使用量が多いほど、股関節・腰椎の骨密度が低い傾向があると報告したものが複数
▶ ただし、L-ドパと骨密度に関連が見られなかった研究も1つ存在
▶ RCT(無作為化比較試験)では、ホモシステインを下げる治療(葉酸・ビタミンB12補充)で
骨密度の年間低下量が抑えられたことが報告された
つまり、L-ドパ自体というよりも、L-ドパ代謝によって増えるホモシステインが
骨密度を低下させる一因である可能性が示唆されています。
ただし、これはあくまで「関連がある」という段階にとどまっており、
「L-ドパが骨密度を下げる」という因果関係は現時点では確立されていません。
【臨床での注意点】パーキンソン病患者さんに必要な骨の管理とは
今回のレビューで取り上げられた7つの研究は、
そのほとんどが小規模(患者数42〜95名程度)であり、
研究デザインのバイアス(偏り)リスクも全体的に高いと評価されています。
また、6つは東アジア(主に韓国・中国・日本)で行われており、
女性が多く含まれていたため、結果の一般化には注意が必要です。
それでも、現在の知識をまとめると、以下のことが臨床的に重要です。
① DXA骨密度検査を定期的に行う
② 骨折リスク評価ツール(FRAX®など)を活用する
③ ビタミンD・カルシウムの十分な摂取を促す
④ 荷重をかける運動(ウォーキングなど)を取り入れる
⑤ ホモシステインを下げる介入(葉酸・B12補充)の可能性を検討する
L-ドパはパーキンソン病の管理に不可欠な薬であり、
骨密度への悪影響の可能性があっても服用をやめることは現実的ではありません。
大切なのは、リスクを知ったうえで骨の健康管理を日常的に意識することです。
抗コリン薬(アセチルコリンをブロックする種類の薬)については、
骨密度への直接的な影響データは乏しいものの、
めまい・ふらつき・起立性低血圧(立ちくらみ)などを引き起こすことで
転倒・骨折リスクを高める可能性が指摘されています。
COMT阻害薬(L-ドパの効果を延ばす薬)については、
ホモシステインを減らす作用があるとの仮説もありますが、確たるデータはまだありません。
まとめ
パーキンソン病の患者さんは、病気そのものや生活習慣の変化によって骨が弱くなりやすい状態にあります。
治療の主役であるL-ドパが骨密度を下げる可能性は示唆されていますが、
現時点では「確実に骨密度を下げる」とは言い切れない段階です。
ただし、骨折が起きてからでは遅い場合もあります。
主治医と相談しながら、骨密度検査・栄養管理・適度な運動を
日常のケアに組み込んでいくことが大切です。
当院のご案内
シーサー通り内科リハビリクリニック
当院は沖縄県那覇市に2025年7月に開院した内科・脳神経内科・リハビリテーション専門クリニックです。
パーキンソン病・脳卒中後の神経リハビリから、骨粗しょう症・骨折予防まで、
総合的にサポートいたします。
■ 診療科目:内科・脳神経内科・リハビリテーション科
■ 専門認定:脳血管リハビリテーション Ⅱ型施設認定
■ 所在地:那覇市銘苅211-17 メディカルプラザめかる 3F
パーキンソン病・骨の健康に不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
専門医が丁寧に診察し、一人ひとりに合ったリハビリプランと骨折予防戦略をご提案します。
引用文献・参考情報
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※ 本記事は医療情報の提供を目的としており、特定の治療法を推奨するものではありません。
※ 受診・治療については必ず担当医とご相談ください。
