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ニューロリハビリテーションリハビリテーション科

治りにくいうつ病に新たな選択肢|脳画像で照射位置を決める加速型TMS治療

治りにくいうつ病に新たな可能性
脳画像で照射位置を決める「個別化TMS」とは

うつ病の治療では、抗うつ薬や心理療法、休養、生活環境の調整などを
組み合わせます。しかし、複数の治療を行っても十分に改善しない人がいます。

このような状態は「治療抵抗性うつ病」と呼ばれ、本人の努力不足や性格の
問題ではありません。病気の仕組みや治療への反応には個人差があります。

近年、薬を使わずに脳へ磁気刺激を与える「経頭蓋磁気刺激療法」が注目
されています。英語の頭文字を取り、TMSと呼ばれる治療法です。

2026年6月、医学雑誌『JAMA Psychiatry』に、脳画像を使って一人ひとりの
刺激位置を決める方法の有効性を検討した研究が報告されました。

研究では、頭皮上の目印だけで刺激位置を決める方法よりも、脳のつながりを
調べて位置を決めた方が、うつ症状の改善が大きい可能性が示されました。

【治療抵抗性うつ病と加速型TMS治療とは】

TMSは、頭の外側に専用の装置を当て、磁気の力によって脳の神経細胞を
刺激する治療です。手術のように頭を切開する治療ではありません。

うつ病のTMS治療では、主に左側の前頭前野と呼ばれる部分を刺激します。
前頭前野は、感情の調整、意欲、判断、集中力などに関係する脳の領域です。

一般的なTMS治療は、一定期間、医療機関へ繰り返し通院して受けます。
一方、今回の研究では、高用量の「加速型TMS」が使用されました。

加速型TMSとは、短期間に複数回の刺激を集中的に行う治療方法です。
短期間で効果が現れる可能性がある一方、専門的な設備と管理が必要です。

研究の対象は、22歳から80歳までの治療抵抗性うつ病の成人40人でした。
参加者は、2つの方法のいずれかで刺激位置を決め、治療を受けました。

一つは、頭皮上の位置を基準に刺激場所を決める従来型の方法です。
もう一つは、機能的MRIを使って脳のつながりを調べる個別化治療です。

機能的MRIは、脳の各部分がどのように連携して働いているかを調べる検査です。
今回の研究では、検査に基づき、それぞれに適した刺激位置を選びました。

【脳画像による個別化TMSでうつ症状がより改善】

研究では、治療から1か月後のうつ症状を、MADRSという評価尺度で比較
しました。MADRSは、うつ症状の重さを医療者が点数で評価する方法です。

個別化した刺激位置で治療したグループでは、MADRSの点数が中央値で
24点低下しました。頭皮を基準にしたグループでは18点の低下でした。

点数の低下が大きいほど、うつ症状が改善したことを意味します。
両グループの差は統計学的に有意で、偶然だけでは説明しにくい結果でした。

また、脳画像を撮影して刺激位置を個別化することで、5人に1人の割合で
従来の方法より良い効果につながる可能性が示されました。

さらに、適切と判断された刺激位置は、同じ人の中では比較的安定しており、
別の人同士では位置が異なっていました。

つまり、うつ病に関係する脳の回路には個人差があり、全員に同じ場所を
刺激するより、一人ひとりに合わせた方がよい可能性があります。

これまで精神科領域では、脳画像検査が研究に使われても、実際の治療成績を
改善するかどうかは十分に分かっていませんでした。

今回の結果は、脳画像を単に診断や研究に使うだけでなく、治療する場所を
選ぶために活用できる可能性を示した点で重要です。

【個別化TMSの限界と治療を受ける前の注意点】

今回の研究結果は期待されますが、すべての治療抵抗性うつ病の人に、すぐに
同じ効果が得られると断定することはできません。

研究参加者は40人と比較的少なく、アメリカの一つの専門施設で行われました。
今後は、より多くの患者を対象とした複数施設での検証が必要です。

また、今回の研究は、通常のTMS治療すべてを比較したものではありません。
高用量の加速型TMSという専門的な治療方法について調べた研究です。

TMS治療では、刺激中の頭皮の痛み、頭痛、不快感などが生じることがあります。
まれですが、けいれん発作などへの注意も必要です。

頭の中や体内に金属や医療機器がある人、てんかんの既往がある人などは、
治療を受けられない場合や、慎重な判断が必要になる場合があります。

うつ症状の背景には、甲状腺機能異常、貧血、睡眠障害、認知症、薬の影響、
脳神経疾患などが隠れていることもあります。

治療を始める前には、精神症状だけでなく、身体疾患や服用薬、睡眠状態を
含めて総合的に確認することが大切です。

強い希死念慮がある場合や、食事や水分が取れないほど症状が重い場合は、
TMSの情報を調べるより先に、精神科などへ早急に相談してください。

【よくある質問・Q&A】

Q.TMSは電気ショック療法と同じ治療ですか?

A.異なります。TMSは頭の外から磁気刺激を与える治療で、通常は麻酔を
必要としません。電気けいれん療法とは刺激方法や治療手順が異なります。

Q.抗うつ薬を飲まずにTMSだけで治療できますか?

A.患者さんの状態によって異なります。薬物療法や心理療法を続けながら
行う場合もあります。自己判断で抗うつ薬を中止しないことが重要です。

Q.脳画像で刺激場所を決めれば、必ず改善しますか?

A.必ず改善するわけではありません。今回の研究では平均的な改善効果が
大きくなりましたが、治療への反応には個人差があります。

Q.一般的な病院でも個別化TMSを受けられますか?

A.機能的MRIの解析や専用装置、専門スタッフが必要なため、実施できる
施設は限られます。治療内容や費用は施設ごとに確認が必要です。

当院でも導入の準備すすめています!

Q.気分の落ち込みが続く場合、何科を受診すればよいですか?

A.精神科や心療内科が中心です。ただし、頭痛、物忘れ、手足の動かしにくさ、
睡眠障害などがある場合は、内科や脳神経内科への相談も役立ちます。

【那覇市・浦添市・沖縄県で気分の落ち込みや脳神経症状にお悩みの方へ】

シーサー通り内科リハビリクリニックは、那覇市にある内科・脳神経内科・
リハビリテーション科のクリニックです。

気分の落ち込みや意欲低下には、睡眠時無呼吸症候群、甲状腺疾患、貧血、
認知症、脳神経疾患など、身体的な原因が関係していることがあります。

当院では、患者さんのお話を丁寧に伺い、必要に応じて血液検査、頭部CT、
睡眠検査などを行い、身体面や脳神経面から原因を確認します。

精神科での専門的な治療が必要と考えられる場合には、適切な医療機関への
受診や連携をご案内します。

なお、本記事で紹介した脳画像による個別化加速型TMSを、当院で実施している
という意味ではありません。治療の適応は専門施設での判断が必要です。

那覇市、浦添市、沖縄県で、気分の落ち込みに加えて頭痛、物忘れ、めまい、
しびれ、睡眠の問題などがある方は、当院へご相談ください。

まとめ

治療抵抗性うつ病に対する加速型TMSでは、頭皮上の目印だけでなく、
脳のつながりを調べて刺激位置を決めることで、効果が高まる可能性があります。

一方、対象者が40人の研究であり、現時点では誰にでも同じ効果が得られる
ことが確立したわけではありません。

今後、より大規模な研究が行われれば、うつ病の治療は「全員に同じ場所を
刺激する治療」から「一人ひとりの脳回路に合わせる治療」へ進むかもしれません。

引用・参考文献

Taylor JJ, Kare MR, Haj-Darwish D, et al.
Connectivity- vs Scalp-Based Targeting of Accelerated Transcranial
Magnetic Stimulation for Depression: A Randomized Clinical Trial.
JAMA Psychiatry. Published online June 24, 2026.
doi:10.1001/jamapsychiatry.2026.1100

JAMA Psychiatry掲載ページ
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/fullarticle/2850583