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眠剤・抗うつ薬・頻尿薬に注意?抗コリン作用と認知症リスクのポイント
抗コリン薬は、体の「アセチルコリン」という
神経の伝達物質の働きを弱める薬の総称です。
アレルギー薬、睡眠薬、抗うつ薬、頻尿の薬、
吐き気止めなどに含まれることがあり、
高齢になるほど使う機会が増えます。
一方で抗コリン作用は、口の渇きや便秘だけでなく、
せん妄(急な混乱)や転倒、記憶力低下と
関係する可能性が指摘されてきました。
そこで近年注目されるのが「抗コリン薬負荷」です。
これは、抗コリン作用をもつ薬がどれくらい
積み上がっているか、という考え方です。
今回紹介する研究は、抗コリン薬負荷を
**ACMI(Anticholinergic Medication Index)**という
指標で数値化し、認知症や死亡との関係を
大規模コホートで確かめたものです。
【研究のポイント:UK BiobankとAll of Usで検証】
研究は2つの大規模データで行われました。
英国のUK Biobankと、米国のAll of Usです。
どちらも前向き追跡で、抗コリン薬の使用歴と
その後の認知症発症を関連づけています。
解析では、死亡を「競合リスク」として扱い、
年齢、性別、併存症、遺伝要因(APOE)なども
調整して評価しています。
ACMIは、登録された抗コリン薬リスト(88種類)を使い、
ベースラインで処方された薬の数などから
抗コリン薬負荷を算出する仕組みです。
【結果:抗コリン薬負荷が高いほど認知症と死亡が増える】
まず結論として、抗コリン薬が処方されている人は、
そうでない人より認知症リスクが高い傾向でした。
ACMIに載る薬が「1剤増えるごと」に、
認知症リスクは上昇していました。
英国のUK Biobankでは、認知症のハザード比が
**1.15(95%CI 1.09–1.21)**でした。
米国のAll of Usでも上昇が再現され、
ハザード比は**1.06(1.04–1.09)**でした。
さらに重要なのは「死亡」との関係です。
抗コリン薬負荷が高いほど、全死亡も増えていました。
UK Biobankの死亡は1.23(1.19–1.27)、
All of Usの死亡は**1.16(1.13–1.19)**でした。
つまり抗コリン薬負荷は、認知症だけでなく、
全身の予後にも影響する可能性が示されています。
【実生活での活かし方:やめる前に“見直す”が正解】
ただし、この研究は観察研究です。
「抗コリン薬が直接認知症を起こす」と
断定はできません。
抗コリン薬が必要になる背景の病気そのものが、
認知症リスクと関係している可能性もあります。
それでも、できる対策はあります。
ポイントは「自己判断で中止しない」ことです。
まずは、お薬手帳を見ながら、
抗コリン作用のある薬が複数ないか確認します。
眠気止め、抗アレルギー薬、睡眠薬、頻尿薬、
抗うつ薬などが重なると負荷が上がりやすいです。
次に、同じ効果で抗コリン作用が少ない代替薬が
ないかを主治医や薬剤師に相談します。
また、減薬できない場合でも、
最小限の用量、必要最小限の期間にするだけで、
負荷を下げられることがあります。
認知症予防は、脳だけの話ではありません。
睡眠、運動、血圧、糖代謝、難聴、うつ、
これらの整備も同時に大切です。
当院でのご案内(コマーシャル)
シーサー通り内科リハビリクリニックでは、
**多剤併用(ポリファーマシー)**や
抗コリン薬負荷のチェックを含めて、
生活習慣病と脳の健康を総合的に評価します。
「薬が増えてきた」「最近もの忘れが気になる」
「眠剤や頻尿薬を長く使っている」など、
気になる方はお気軽にご相談ください。
引用
- Asiimwe IG, et al. The anticholinergic medication index and dementia risk: evidence from the UK Biobank and All of Us research program. Age and Ageing 2025;54:afaf326. https://doi.org/10.1093/ageing/afaf326
