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脳神経内科

軽い頭のケガでも脳に影響?子どもの脳の変化を1年追った最新研究

【軽い頭のケガでも脳に変化?見逃せない子どもの脳外傷】

「軽いケガだから大丈夫」と思われがちな頭部外傷。しかし、最新のアメリカの研究では、軽度の小児外傷(pmTBI)でも1年後まで脳に変化が残る可能性があることが分かってきました。

この研究では、8〜18歳の子ども約270人を対象に、ケガから7日後・4カ月後・1年後の3回にわたりMRI検査を実施。その変化を年齢・性別の一致した健康な子ども232人と比較しました。

【脳の“老化”が進む?軽度外傷でも「脳年齢」に影響】

研究では、MRI画像をAIで解析し、実年齢に対する「脳年齢」の差(PAD)を算出しました。すると、**一時的な意識消失や記憶喪失(LOC/PTA)**があった子どもは、1年後も実年齢より脳年齢が高い=“老化”が進んでいることが判明しました。

この変化は、見た目や本人の自覚症状とは無関係に起こっており、「症状がなくても脳にダメージがある可能性」を示唆しています。

【記憶をつかさどる海馬が萎縮?MRIが捉えた衝撃の事実】

脳の構造変化でもっとも注目されたのが、記憶を司る「海馬」やその一部であるCA1領域、歯状回の萎縮です。

  • LOC/PTAがあった子どもは、海馬の体積が1年後も減少
  • 健康な子どもでは、加齢とともに海馬が発達するのに対し、外傷があると発達が止まる、あるいは逆行する傾向
  • 海馬の変化は神経発達の妨げ=記憶や感情の調整の遅れにつながる恐れも

このように、「軽い打撲でも、脳の大事な部分が変化してしまう」という事実は、親や教育関係者にとって看過できないものです。

【症状ではなく“サイン”を見る時代へ:客観的検査の重要性】

もう一つ注目すべき点は、症状の重さと脳の変化が一致しないということです。

  • 倦怠感や頭痛といった自己申告症状と脳の変化に関連性はなかった
  • むしろ、意識消失や記憶喪失といった「客観的な所見」が脳構造変化と強く関連

つまり、「脳のケガは、本人が元気そうに見えても進行している可能性がある」ということです。

これは、将来的な認知機能障害や精神的な問題のリスク評価にも重要であり、MRIや血液バイオマーカーなどの客観的な検査の導入が急務であることを示唆しています。

【まとめ:子どもの「軽い頭のケガ」も油断禁物】

この研究から得られる重要なポイントは次の3つです。

  1. 「軽い」頭部外傷でも、1年後に脳構造の変化が残る可能性がある
  2. 症状よりも「意識消失」や「記憶障害」などのサインが脳の変化を予測
  3. 将来的な脳の発達・記憶・感情制御に影響を与える可能性があるため、定期的なフォローアップが重要

常日頃から頭部は守る様にしましょう!

【引用文献】

Nathaniel U, et al. “Regional and Global Changes in Brain Structure 1-Year Post Pediatric ‘Mild’ Traumatic Brain Injury.” Ann Neurol. 2025. DOI: 10.1002/ana.27259