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多発性硬化症・視神経脊髄炎脳神経内科

MOG抗体陽性の脊髄炎ってどんな病気?症状・診断・治療をわかりやすく解説

MOG抗体関連脊髄炎とは?あまり知られていない神経の自己免疫疾患

「MOG抗体関連脊髄炎(MOGAD)」は、聞き慣れない病名かもしれませんが、
視力の低下や手足のしびれといった症状で発症することがあり、
見逃されると日常生活に大きな影響を与えることもあります。

この記事では、MOG関連抗体脊髄炎について、
その原因や症状、診断、そして最新の治療法について、やさしく解説します。

【MOG抗体関連脊髄炎とは?〜原因としくみ〜】

MOG抗体関連疾患(MOGAD)は、脳や脊髄、視神経に炎症を引き起こす自己免疫性の病気です。

MOGとは「ミエリン・オリゴデンドロサイト・グリコプロテイン」の略で、
神経を覆うミエリン(絶縁体のようなもの)に存在するタンパク質の一種です。

MOG抗体をもつ人の体では、免疫が誤ってこのタンパク質を攻撃してしまい、神経の炎症が起きると考えられています。

この病気は、かつて多発性硬化症(MS)や視神経脊髄炎(NMOSD)と診断されていたケースも多く、
最近になってMOG抗体の検査が普及し、独立した病気であることが分かってきました。

【どんな症状が出るの?〜視神経・脊髄・脳に現れるサイン〜】

MOG抗体関連疾患は、以下のように様々な神経症状で発症します。

◯ 視神経炎(最も多い)

  • 片目または両目の急激な視力低下
  • 物がかすんで見える・色が分かりづらい
  • 光を見たときの痛み(眼球の奥が痛い)

小児にも多くみられる特徴があり、回復は比較的良好ですが、繰り返す場合もあります。

◯ 脊髄炎

  • 手足のしびれや力が入りにくい
  • 歩行困難・バランスが取りにくい
  • 排尿・排便の障害(頻尿や尿閉など)

MRIで脊髄の広い範囲に炎症が見られることが多いのが特徴です。

◯ 脳炎・脳幹炎

  • 頭痛・発熱・嘔吐・けいれん
  • 意識障害や情緒の変化
  • 小児では「ADEM(急性散在性脳脊髄炎)」として現れることがあります

症状は突然現れ、時に重症化することもあります。
ただし、適切な治療で症状が改善するケースが多く、MSやNMOSDに比べて予後は良好なことが多いです。

【どうやって診断するの?MOG抗体検査がカギ】

MOG抗体関連疾患の診断には、症状やMRI画像だけでは不十分であり、
血液検査でMOG抗体の有無を確認することが決め手になります。

診断の流れとしては以下のようになります。

  • 神経症状の確認(視力低下・しびれ・けいれんなど)
  • MRI検査(脳・脊髄・視神経に炎症がないか確認)
  • 血液検査でMOG抗体の測定
  • 必要に応じて髄液検査視神経誘発電位検査

MOG抗体は他の自己抗体と異なり、時間の経過で陰性化する場合もあるため、
症状が出た早期に採血して検査することが大切です。

【治療法は?再発を防ぐための最新治療と生活の工夫】

MOGADの治療には、**急性期の治療と、再発を防ぐ治療(予防治療)**の2つがあります。

◯ 急性期治療(発作時)

  • ステロイドの点滴治療(ステロイドパルス療法)
     炎症を素早く抑える効果があります。
  • 効果が乏しい場合には、血漿交換療法や**免疫グロブリン療法(IVIG)**を併用することもあります。

視神経炎や脊髄炎では、早期の治療開始が回復の鍵となります。

◯ 再発予防の治療

MOGADは再発を繰り返すタイプと、1回で終わるタイプがあります。
再発が確認された場合は、以下の治療が検討されます。

  • ステロイドの少量長期投与
  • 免疫抑制剤(アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルなど)
  • 抗体製剤(リツキシマブなど)

ただし、MOGADでは再発しない人も一定数いるため、治療方針は個別に調整する必要があります。
そのため、専門医による定期的なフォローアップがとても重要です。

【生活で気をつけたいこと】

  • 無理をしない・十分な休息をとる
  • 感染症を予防する(免疫抑制中は特に注意)
  • ストレスをためすぎない
  • 視覚や運動機能のリハビリに積極的に取り組む

当院では、神経リハビリ専門の理学療法士によるトレーニングや、
再発予防の内服管理、生活支援まで丁寧にサポートしています。

【まとめ:MOG抗体関連脊髄炎は早期診断と適切な対応がカギ】

MOG抗体関連脊髄炎(MOGAD)は、近年注目されている自己免疫性神経疾患です。
視力の低下や手足のしびれといった症状で発症し、時に重症化することもあります。

しかし、正しい診断と治療により、改善が期待できる病気です。
もし気になる症状がある場合は、早めに神経内科を受診することが大切です。

【参考文献・引用】

  • 日本神経学会「自己免疫性脳脊髄炎の診断と治療 2022」
  • 脳神経疾患情報ステーション(難病情報センター)
  • Reindl, M., Waters, P. et al. MOG antibody-associated disease. Lancet Neurol (2022)