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脳卒中後の歩行改善に効果的な新プログラム『Walk ‘n Watch』が日本にも広がるか?
【脳卒中リハビリの新常識】歩行機能を劇的に改善!カナダ発「Walk ‘n Watch」プログラムとは?
脳卒中後の「歩く力」を取り戻すには、できるだけ早い段階で繰り返し歩く練習をすることが重要です。ところが、実際の医療現場ではリスクを恐れて歩行訓練が十分に行われていないケースも少なくありません。
そんな中、2025年8月に『The Lancet Neurology』に掲載されたカナダの大規模臨床研究が注目を集めています。この記事では、その研究で導入された新しいリハビリ法「Walk ‘n Watch」の特徴や効果について、わかりやすく解説します。
【歩行訓練の現状と課題】
脳卒中を経験した方の多くが「もう一度自分の足で歩きたい」と願っています。実際、世界で毎年1200万人以上が脳卒中を発症しており、歩行機能の回復は非常に重要なリハビリ目標です。
ところが、現場では歩行練習の回数や強度が不十分なことが多く、十分な回復につながっていないことが問題視されています。その背景には、安全性への配慮や人手不足といった課題があります。
【「Walk ‘n Watch」プログラムとは?】
今回の研究では、12のリハビリ病棟(カナダ国内7州)において、「Walk ‘n Watch」と呼ばれる歩行訓練プロトコルを実施しました。これは以下の特徴を持つ新しいリハビリ手法です。
- 1日30分以上の歩行関連トレーニングを実施
- 心拍数と歩数モニターを使用して、個別に強度を調整
- リハビリ前に「6分間歩行テスト(6MWT)」で安全性とレベルを確認
- すべてのリハビリスタッフ(理学療法士)が通常業務の中で実施可能
この方法は、特別な装置や医師の立ち合いを必要とせず、現場の負担を抑えながら効果的な歩行練習を提供できることが特徴です。
【臨床試験の結果とその意味】
この研究には314人の脳卒中患者が参加し、そのうち306人が解析対象となりました。平均年齢は68歳で、発症から約1か月が経過していました。
4週間後の6分間歩行テスト(6MWT)の結果は以下の通りです。
| グループ | 開始時の6MWT | 4週後の6MWT | 改善量 |
| 通常リハビリ | 137.1m | 223.6m | +86.5m |
| Walk ‘n Watch | 163.6m | 297.2m | +133.6m |
Walk ‘n Watch群では、通常のリハビリよりも44メートル(95%CI: +12.7~76.1m)多く歩けるようになったという結果が得られました。これは日常生活の自立度を左右する非常に意義深い差といえます。
さらに、深刻な副作用は認められず、安心して導入できることも確認されました。
【まとめと当院での取り組み】
Walk ‘n Watchは、現場の理学療法士がすぐに導入できる実践的なプログラムです。特別な機器や高いコストを必要とせず、安全かつ効果的に歩行機能を改善できることが示されました。
今後、日本でもこのような「実行しやすく、効果の高い」プログラムの普及が期待されます。
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那覇市にある【シーサー通り内科リハビリクリニック】では、脳卒中後のリハビリに力を入れており、歩行機能や生活動作の回復に特化した理学療法を提供しています。
脳神経内科専門医による評価
経験豊富な理学療法士が対応
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参考文献
Peters S, Hung SH, Bayley MT, et al. Safety and effectiveness of the Walk ‘n Watch structured, progressive exercise protocol delivered by physical therapists for inpatient stroke rehabilitation in Canada: a phase 3, multisite, pragmatic, stepped-wedge, cluster-randomised controlled trial. The Lancet Neurology. 2025;24(8):643–655. doi:10.1016/S1474-4422(25)00201-7
