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アルコールと脳卒中の関係とは?最新研究でわかったリスクと対策
アルコールが引き起こす脳卒中の負担とは?〜世界と日本の最新事情〜
【1. 飲酒と脳卒中:どんな関係があるのか?】
脳卒中は、脳の血管が詰まったり破れたりして起こる病気です。主に「脳梗塞」と「脳出血」に分けられ、後遺症が残ることも少なくありません。
その原因のひとつとして、近年注目されているのが「高アルコール摂取」です。特に1日60g以上(日本酒3合以上)の飲酒が続くと、脳梗塞のリスクが約1.35倍、脳出血ではなんと1.82倍に上昇することが示されています。
飲酒によって血圧が上がったり、血液の流れが悪くなったりすることで、脳の血管に負担がかかり、脳卒中の引き金になると考えられています。
さらに、アジア人に多い「ALDH2遺伝子の変異(お酒に弱い体質)」を持つ方は、飲酒によって血管へのダメージが強く出やすく、特に脳出血のリスクが高まると報告されています。
【2. 世界の動向:減る死亡率、増える後遺症】
2025年に発表された最新研究では、1990年から2021年にかけて、アルコールによる脳卒中による死亡率は世界全体で約40%減少しました。これは、禁酒政策や救急医療の進歩、スタチンなどの予防薬の普及が背景にあります。
しかし一方で、「後遺症を抱えたまま生きる人(障害調整生命年:YLD)」の割合はほとんど改善しておらず、「生き延びても障害が残る」という“生存−障害のパラドックス”が問題となっています。
また、地域によって差も大きく、高所得国では大きく改善した一方、ベトナムやブルガリアなどの中所得国では、死亡率も障害も増加しています。とくに東南アジアでは、伝統的な強い酒や粗悪なアルコール(メタノール混入など)が原因で、脳血管へのダメージが強いと指摘されています。
【3. 予防と対策:個人と社会にできること】
個人でできる予防策としては、まず「飲酒量を減らす」ことが重要です。適度な飲酒を心がけ、特に週に何度も大量に飲む「一気飲み」や「はしご酒」は脳卒中のリスクを高めます。
また、高血圧や糖尿病を持っている方は、アルコールとの相互作用で血管へのダメージが大きくなるため、より一層の注意が必要です。
社会全体としては、以下のような取り組みが効果的とされています。
- 強い酒への課税強化(例:カナダでは最低価格導入で入院が減少)
- アルコール広告への規制(例:日本の「アルコール健康障害対策基本法」)
- 地域のリハビリ体制の充実(例:訪問リハビリの普及)
- 女性や高齢者に特化した予防教育(性差・年齢差に基づくアプローチ)
特に中高年女性では、年齢とともにアルコール代謝が低下し、少量でも脳卒中リスクが高くなることがわかってきています。
おわりに:アルコールと脳卒中の正しい知識を
「適度な飲酒は健康に良い」とよく言われますが、脳卒中に関してはリスクが明確に示されています。たとえ少量であっても、体質や年齢、他の病気の有無によって影響は大きく変わります。
大切なのは、自分自身のリスクを知り、過度な飲酒を控えること。そして社会全体で「飲みすぎない文化」を育てていくことです。
【参考文献】
Qian N, Lu C, Wei T, et al. (2025). The global burden of stroke attributable to high alcohol use from 1990 to 2021: An analysis for the global burden of disease study 2021. PLOS ONE. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0328135
