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ボツリヌス療法リハビリテーション科

脳卒中後の腕や手の「つっぱり(痙縮)」にボツリヌス注射|効果とリハビリの最新知見

【脳卒中後痙縮とは?その原因と影響】
脳卒中の後遺症の一つに、腕や手が強くこわばる「痙縮(けいしゅく)」があります。
これは脳や脊髄の損傷により、筋肉をゆるめる神経の働きが低下し、筋肉が過剰に縮んだ状態です。

痙縮は見た目だけでなく、日常生活に大きな影響を与えます。
服の着替え、食事、歯磨きなどの動作がしづらくなり、衛生面の問題や痛み、介助負担の増加にもつながります。
放置すると関節が固まる「拘縮」を起こすこともあり、早期からの対策が重要です。

【ボツリヌス療法の仕組みと効果】
ボツリヌス療法は、痙縮のある筋肉に「ボツリヌス毒素」という薬を少量注射し、神経と筋肉のつなぎ目(神経筋接合部)の働きを一時的にブロックします。
これにより、過剰な筋収縮が抑えられ、関節を動かしやすくなります。

効果は数日〜2週間ほどで現れ、約3か月持続します。
この「動かしやすくなった期間」にリハビリを集中して行うことで、日常生活での使いやすさが高まります。
安全性は高く、副作用は軽度の筋力低下や注射部位の痛み、まれに倦怠感などです。

【効果を高めるポイント:研究でわかった予測因子】
国内外の研究から、ボツリヌス療法の効果を高める条件が分かってきました。
特に、発症からの期間が短い(3年未満)ほど上肢機能の改善が期待できる傾向があります。
これは、神経や筋肉の可塑性(回復する力)がまだ残っているためと考えられます。

また、肩や肘など近位部の筋力が保たれている人ほど、手の使用頻度が上がる傾向がありました。
つまり、肘や肩を安定して動かせる状態を作ることが、手先の細かい動きの改善にもつながります。

さらに、注射後に十分な時間リハビリを行うことが重要です。
ある研究では、注射後のリハビリ時間が長いほど、日常生活での動作能力が改善しやすい結果が出ています。

【注射後のリハビリ戦略】
ボツリヌス療法の効果を最大限に引き出すには、注射後の「練習の質と量」がポイントです。
具体的には、

  • 食事や整容など実際の生活場面を想定した課題練習
  • 到達(手を伸ばす)、把持(つかむ)、解放(離す)の一連動作の反復
  • 姿勢や体幹の安定化訓練
  • ストレッチや装具(スプリント)による関節可動域の維持
  • 電気刺激療法との併用

これらを組み合わせることで、手の使用頻度が高まり、介助量の軽減や生活の質の向上につながります。

【よくある質問】
Q. どんな人に向いていますか?
A. 痙縮で日常生活や介助がしにくくなっている方が対象です。特に「手が固まって着替えが大変」「爪切りが難しい」といった悩みがある方です。

Q. 何回も受けられますか?
A. 効果は約3か月で薄れるため、必要に応じて繰り返し行います。安全性は高く、長期的に使用している方も多くいます。

Q. 注射だけではだめですか?
A. 注射はあくまで「動かしやすくする準備」。その後のリハビリで「使える動き」に変えることが不可欠です。

Q. 費用はどれくらいですか?
A. 保険適用で行えますが、注射量や部位によって自己負担額は異なります。医療機関でご確認ください。

【まとめ】
ボツリヌス療法は、脳卒中後の痙縮による生活のしづらさを軽減し、日常動作の改善をサポートします。
発症からの期間が短いほど、また注射後のリハビリ時間が長いほど効果が高まりやすいことが研究で示されています。
大切なのは「薬でゆるめ、練習で使える動きに変える」こと。
痙縮にお悩みの方は、医師やリハビリ専門職に早めに相談することをおすすめします。

引用文献

  1. Hung JW, et al. Predictors of clinically important improvements after BoNT-A for post-stroke upper limb spasticity. Toxins. 2022;14:13.
  2. Sheean G, et al. International consensus statement on BoNT for upper limb spasticity. Eur J Neurol. 2010;17:74–93.
  3. Mills PB, et al. Effective adjunct therapies to BoNT-A. Clin Rehabil. 2016;30:537–548.
  4. Abo M, et al. Japanese 400U trial for upper limb spasticity. Toxins. 2020;12:127.

当院のご案内

**シーサー通り内科リハビリクリニック(那覇市)**では、総合内科・神経内科・リハビリ科を併設し、痙縮の評価からボツリヌス療法、作業療法・理学療法まで一貫して行います。
初回は丁寧に診察と検査を行います。

超音波ガイドで安全に注射し、その直後から生活に直結したリハビリを開始します。
「服が着やすくなった」「手が開きやすくなった」など、患者さん一人ひとりの生活目標に合わせたプランを作成します。
ご相談は公式Web予約またはお電話でどうぞ。