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多発性硬化症・視神経脊髄炎脳神経内科

発症15年前から始まる?多発性硬化症の前駆期に現れる症状と受診の目安

【多発性硬化症の前駆期とは】
多発性硬化症(Multiple Sclerosis, MS)は、免疫の異常によって脳や脊髄に炎症が生じ、神経の信号が正しく伝わらなくなる神経疾患です。発症のきっかけは突然に見えることが多いですが、実はその何年も前から体に小さな変化が現れていることがあります。この診断前の期間は「前駆期」と呼ばれ、最近の研究では発症15年以上前から異変が始まっている可能性が指摘されています。

カナダ・ブリティッシュコロンビア州で行われた大規模研究では、2038人のMS患者と同条件の対照群を比較し、発症25年前までさかのぼって受診履歴を分析しました。その結果、発症14年前から全診療科での受診頻度が増加し、発症直前の年にピークに達していました。特に「原因が特定できない体調不良」や「漠然とした不快感」での受診は、発症15年前から少しずつ増えていたのです。

【発症15年前から見える初期症状とサイン】
前駆期の早期から目立つのは、精神面の変化です。うつ症状や不安感などで精神科を受診するケースは発症14年前から増え始め、12年前には有意に多くなっていました。こうした症状は、脳内で免疫反応や炎症が進み始めている影響と考えられています。

続いて現れるのが視覚や感覚に関する異常です。発症9年前から眼科の受診が増加し、視力低下や色の見え方の変化、片目の痛みといった視覚症状が数年前から出始めます。さらに、しびれやふらつき、慢性的な痛み、睡眠の質の低下など、神経症状に近いサインも見られるようになります。神経内科への受診は発症8年前から増え、直前の年には急増していました。

救急外来や画像検査の利用も直前期に増えます。救急受診は発症5年前から、放射線科での検査は3年前から増加傾向を示し、いずれも発症直前にピークを迎えていました。こうした時間経過を整理すると、多発性硬化症は「心の変化」→「視覚・感覚の異常」→「神経症状」という流れで進む可能性が高いといえます。

【早期発見と受診のポイント】
前駆期の症状は多様で、単独では多発性硬化症を疑うのが難しいことがほとんどです。しかし、うつや不安、原因不明のしびれや視覚異常、強い疲労感が複数重なって長引く場合は、かかりつけ医で全体的な評価を受けることが大切です。特に若年から中年の女性はMSの好発年齢にあたり、早めの神経内科受診が望まれます。

診断にはMRIや血液・髄液検査が用いられます。最近では、MRIで確認できる「中枢静脈サイン」や「縁取り病変」といった所見、血液や髄液中のバイオマーカーによる早期診断の研究が進んでいます。こうした技術の進歩によって、将来的には前駆期の段階で診断できる可能性も高まっています。

日常生活では、症状がいつ、どのように現れ、どのくらい続いているのかを記録しておくことが重要です。この情報は診察時に大きな助けになります。また、十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理など、生活習慣の改善はMSの進行を抑える可能性があります。

多発性硬化症は決して「突然の病」ではなく、発症のかなり前から体が小さなサインを出しています。こうした初期症状や前駆期の変化に気づき、医療機関とつながることが、早期発見と進行予防の鍵となります。

■引用情報
Ruiz-Algueró M, et al. Health Care Use Before Multiple Sclerosis Symptom Onset. JAMA Network Open. 2025;8(8):e2524635. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.24635

■当院のご案内
那覇市の「シーサー通り内科リハビリクリニック」では、多発性硬化症やその疑いのある患者さんに対し、初期症状の評価からCT・血液検査、リハビリ、生活習慣改善までトータルでサポートしています。うつや不安、視覚異常、しびれ、慢性疲労といった複数の症状が続く場合は、早期診断のための神経内科受診をおすすめします。Web問診やオンライン再診にも対応し、地域の皆さまが安心して相談できる体制を整えています。