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パーキンソン病脳神経内科

においで病気を見つける時代へ:犬が探るパーキンソン病の新サイン

はじめに。まだ決定的な診断法がないパーキンソン病。もし「におい」で早く気づけたら心強いですね。最新の研究は犬の嗅覚に注目しています。本記事では一般の方向けにやさしく解説。結論から言うと、犬は有望な補助役になり得ます。

【犬の嗅覚が注目される理由:においとセブム】
パーキンソン病では皮脂の分泌が増えることがあります。皮脂はセブムと呼ばれるワックス状の油分です。このセブムには独特の揮発性物質が含まれます。一部の人はその変化したにおいを感じ取ります。ならば嗅覚に優れた犬はどうでしょうか。犬は病気のにおい検知で実績があります。がんやマラリア、感染症でも成果があります。この流れがパーキンソン病にも広がりました。におい=生体の化学変化の反映という視点です。日々変わる体のサインを嗅覚でとらえる発想です。研究者はセブムのにおいの「型」に注目しました。生体指標の新候補としてのセブムが焦点です。

【最新研究の方法と結果:犬はどこまで当てる?】
今回の研究では二頭の犬を訓練しました。訓練後、全員初めての試料で試験しました。対象は未治療の患者40名の皮膚スワブです。対照はコントロール60名のスワブでした。二頭の犬で二重盲検の手順を踏みました。どのくらい当たったのかが気になりますね。一頭は感度70%・特異度90%という成績。もう一頭は感度80%・特異度98%でした。見落としと誤警報の少なさが示されました。感度は「患者さんを見つける力」の指標です。特異度は「健康な人を誤って陽性にしない力」。二頭とも統計的に有意な識別ができました。

研究は手順も丁寧に作られていました。四つのスタンドに並べて一度に検索します。一列に陽性は最大一本という設計でした。ハンドラーも実験者も位置は知りません。必要時は校正用サンプルで集中を確認。訓練〜試験は厳密管理が徹底されました。また、候補犬十頭から二頭が最後まで残存。本格訓練ののち、38〜53日で盲検へ移行。実戦的条件でも識別性能を示しました。先行報告と比べても遜色ない結果であり、今回は個々の犬の成績で評価した点が新しい特徴です。

【臨床への意味と限界:何に使えそう?】
結論として、犬の嗅覚は有望な補助手段です。パーキンソン病には独特のにおいがある。この考えは結果からも裏づけられます。では明日から診断に使えるのでしょうか。研究チームは犬そのものを診断には想定せず、むしろ新しい検査法の検証に役立つと述べます。スクリーニングや早期のふるい分けが現実的です。実はセブムの変化は運動症状の前から出ます。だから早期段階のサインとして価値があります。将来は長期追跡で前兆検知を確かめる予定です。

他の検査とも比べておきましょう。実験室の新興検査は正確度98%の報告もあります。ドーパミンSPECTも同程度の精度が示唆されます。ただし日常診療の第一選択ではありません。犬は低侵襲で迅速という強みがあります。一方で限界もあります。訓練法や評価法の標準化が必要です。犬ごとのばらつきにも配慮が必要。対照群の設定や環境因子の管理も要点です。将来は誰が嗅いでも再現できる検査へ。犬の成果を化学分析の開発に橋渡しします。

おわりに。犬の嗅覚は「診断の主役」ではないかもしれません。ですが早く気づく補助灯にはなり得ます。セブムという簡便な試料も魅力の一つです。においの科学は、病気の早期発見を後押しします。今後の長期研究と検査法の実装に期待します。

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Rooney N, Trivedi DK, Sinclair E, ほか. Trained dogs can detect the odor of Parkinson’s disease. Journal of Parkinson’s Disease. 2025.