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小児インフルエンザとタミフルの関係を専門医が解説 神経精神症状のリスクは本当に高い??
インフルエンザの季節になると,「タミフルで幻覚が出るの?」と心配が増えます。研修医の頃、小児の患者さんにタミフルを処方する際は、幻覚や異常行動などがでる可能性を説明しておくよう指導されていました。
一方で,早期治療は合併症を減らします。最新の大規模研究がこの疑問に答えました。
専門医の立場で,わかりやすく解説します。
【インフルエンザと神経精神症状の基礎】
まず押さえたいのは,病気自体の影響です。インフルエンザは発熱だけでなく,けいれんや意識障害,気分の変調などの神経精神症状を起こすことがあります。
つまり「症状の原因は薬か病気か」は,いつも課題です。ここを丁寧に区別するのが最新研究の強みです。
【最新研究のポイント】
対象は5〜17歳の約69万人,4シーズンの追跡です。
インフルエンザ15万件のうち約67%でタミフルが処方。
入院が必要な重い神経精神イベントを主要評価に設定。
結論は「未治療インフルエンザよりもリスクが低下」。
調整後IRR0.53と約半減する結果でした。
【結果の読み解き】
重要なのは「薬で増えた」のではなく,「治療でインフル由来のリスクが下がった」点です。
特に神経学的イベントの低下が明確でした。
一方で軽い不眠やめまいなどは薬でも起こり得ます。
症状が強い時は医療機関に相談しましょう。
【なぜリスクが下がるのか】
ウイルスの増殖を早く抑えると,熱性けいれんや脳症様の反応が起きにくくなります。
短期で治る薬剤関連症状より,病気そのものの重さを減らす利益が大きいのです。
結果として入院を要する事態が減ったと考えられます。
【保護者ができる実践ポイント】
発症48時間以内の受診と治療開始が鍵です。
高熱,ぐったり,けいれん,ふらつき,意識の変化や異常言動があれば直ちに受診。
服薬中に強い異常行動が続く場合も受診を。
普段の睡眠不足や脱水は症状を悪化させます。
【よくある誤解への回答】
「タミフルで必ず異常行動」は誤りです。むしろ未治療の方が重い事態が起き得ます。
「予防で飲ませれば安心」も違います。予防投与は状況限定で,医師と相談が必要です。
自己判断での常用は避けましょう。
【リスクとベネフィットのバランス】
医療は常に「効果と副作用のつり合い」です。最新の質の高いデータでは,小児の重い神経精神イベントを減らす可能性が,タミフルのベネフィットとして示されました。
不安は主治医と共有し,最適解を選びましょう。
【当院からのひとこと】
当院では迅速検査と総合診療・神経内科の連携で,年齢・基礎疾患・症状の強さを総合評価します。またインフルエンザのワクチンは重症化や合併症などを防ぎます。10月から接種が始まります。是非ご検討下さい。
【まとめ】
・インフル自体が神経精神症状を起こし得ます。
・最新研究では未治療よりタミフルでリスク減少。
・早期受診と適切な内服,異常時はすぐ受診が基本。
【参考文献・引用】
Antoon JW, et al. JAMA Neurology. 2025年8月4日
