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リハビリテーション科一般内科

高齢者の転倒予防|最新エビデンスと家庭でできる対策まとめ

【はじめに】

転倒は高齢者の骨折や寝たきりの大きな原因です。
しかし、適切な運動と住環境の工夫、そして医療の連携で、リスクは着実に下げられます。本稿では最新研究を踏まえ、家庭で実践しやすい手順を専門医の視点でわかりやすく解説します。

【転倒とは?なぜ起こる?】

「転倒」とは、立っている位置から思わず低い場所へ崩れ落ちること。
年齢による筋力低下、ふらつき、見えにくさ、足の痛み、薬の副作用、段差や滑りやすい床などが重なって起こります。痛みだけでなく、骨折・入院・活動量低下・認知機能や生活の質の低下にもつながります。一方で、原因は多面的でも、対策も多面的に組み立てれば有効です。

【最新エビデンスの要点】

最近の臨床試験では、下肢筋力とバランスを鍛える運動に、地域での健康教育を組み合わせる方法が注目されています。たとえば中国農村部の大規模クラスター試験では、運動+教育群で、「1年間に一度でも転ぶ人」の割合が29.7%に対し通常ケアは38.3%。
オッズ比0.67と有意に減少し、生活の質指標の改善も認められました。
(いわゆるオタゴ運動を簡素化したメニューが核となっています)

【【観点①:運動】転倒を減らす“効く”トレーニング】

要は「太ももとお尻の筋力+片脚で立つバランス」を鍛えること。
週2〜3回、20〜40分を目安に、以下を安全範囲で続けましょう。
①準備体操:足首回し、膝の曲げ伸ばしで関節を温めます。
②筋力:椅子からの立ち座り(30秒で回数測定も可)、踵上げ、
 横歩きスクワット。回数は“楽に10回→余裕が出たら+2回”を目安。
③バランス:机に手を添え、片脚立ち10〜20秒×左右。慣れたら、
 目線を固定しつつ支持を軽くして難度を調整。転倒しない環境で。
④仕上げ:ゆっくり歩行5〜10分で“動きのつながり”を整えます。
専門用語の補足:
・チェアスタンドテスト=30秒間に立ち座りできた回数のこと。
・TUG(Timed Up & Go)=椅子から立ち3m往復し座るまでの秒数。
どちらも家でも測れ、改善が「効いているサイン」になります。

【【観点②:住環境】家の中を“つまずかない設計”に】

段差や滑り、暗さは“転倒の誘因”です。今日できる見直しを列挙。
・通路の整理整頓:電気コードやラグのめくれを除去し動線を直線化。
・照明:廊下とトイレに足元灯。夜間はスイッチを探さない配置に。
・床材:風呂のマットは滑り止め付き。濡れた床はすぐ拭く習慣を。
・手すり:玄関の上がり框、トイレ、浴室、階段の“起点と終点”に。
・履物:踵がカパカパしない面ファスナー靴。厚底やサンダルは回避。
・メガネと補聴:見えにくさ・聞こえにくさの改善は“注意力”を助け、
 危険の察知に直結します。定期的な度数や電池のチェックを。

【【観点③:医療】薬・持病・骨の評価で“転ばない体”に】

内服の“飲み合わせ”はふらつきの一因です。主治医と次を確認。
・眠気や血圧低下を起こしやすい薬は、時間帯や量を調整できるか。
・立ち上がりのめまい(起立性低血圧)は、血圧の座位・立位測定を。
・末梢神経障害、パーキンソン症状、認知症、脳梗塞後遺症がある方は、
 理学療法と多職種連携が効果的。歩容や歩幅を専門的に評価します。
・骨粗鬆症評価(骨密度・栄養):骨折予防は“転んだ後の被害”を軽減。
 タンパク質とカルシウム、屋外歩行でのビタミンD生成も意識を。
・足爪・胼胝・外反母趾:足裏の痛みは“かばい歩き”を生みます。
 爪切りは角を深追いせず、靴内の当たりは中敷きで調整しましょう。

【実践のポイント:安全第一で“少しずつ+続ける”】

開始は“余裕を残す強度”から。筋肉痛はOKでも、痛みが鋭いなら中止。
転びやすい方は、机・壁・手すりなど“二重の支持”を必ず確保します。
1〜2週間ごとに回数や時間を“ほんの少し”増やすのが上達の近道。
できた日をカレンダーに印を付けると、習慣化が一気に進みます。
家族や友人と一緒に取り組む“ゆるい約束”も継続の強い味方です。

【よくある質問Q&A】

Q:ウォーキングだけでも転倒は減りますか?
A:歩くこと自体は良い習慣ですが、転倒予防の“要”は下肢筋力と
 バランス練習です。ウォーキング+筋トレ+片脚立ちが王道です。
Q:階段は避けるべき?
A:怖さがある間は無理をせず、まず平地で筋力・バランスを回復。
 手すり・滑り止めを整え、安定してから段階的に再開しましょう。
Q:どれくらいで効果が出ますか?
A:2〜3か月で“立ち座りが楽”“ふらつき減少”を実感する方が多いです。
 数値化(回数・秒数)も併用し、客観的な伸びを確認しましょう。

【まとめ】

転倒は“偶然”ではなく、筋力・バランス・住環境・医療の四輪で、
系統立てて予防できます。今日からできる一歩を、小さく確実に。
続けた時間こそが最大の味方です。無理なく、でも粘り強く。

【参考文献・リンク(一般向け)】

JAMA Original Investigation:
A Fall Prevention Program Integrated in Primary Health Care for Older People
(家庭医療と連携した運動+教育で転倒が有意に減少)
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/10.1001/jama.2025.12724

WHO “Step Safely” 技術パッケージ(生涯にわたる転倒予防戦略)
https://www.who.int/publications/i/item/9789240021914

Cochrane Review(地域在住高齢者の運動介入は転倒を抑制)
https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD012424.pub2/full

USPSTF 推奨(転倒リスクの高い65歳以上:運動介入に中等度の純便益)
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/10.1001/jama.2024.8481

【当院コマーシャル】

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