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目が覚めたら麻痺…「起床時発症」の脳梗塞を救う可能性とリスク
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発症から何時間も経ってしまった脳梗塞はもう治療できない――そう考える方は多いです。しかし近年、血流(パフュージョン)画像で「救える脳」が残る人を見極めれば、治療の扉は“24時間”まで開く可能性が示されました。
最新の無作為化試験HOPEは、発症4.5〜24時間で血流画像により「救済可能な脳組織」を確認し、アルテプラーゼ点滴の有効性と安全性を検証。90日後に“ほぼ後遺症なし”の人の割合が増え、死亡率は変わらないという結果でした。
本稿では①結論、②対象と検査、③実臨床での活かし方の3点から、一般の方にもわかるように最新知見を整理します。専門用語はやさしく解説しますので、家族の備えにも役立ててください。
【①結論:24時間まで“条件付き”で効果が期待】
HOPE試験は372人を無作為化し、アルテプラーゼ群では90日後に「修正ランキンスケールmRS0–1」(ほぼ後遺症なし)が40%、標準治療では26%。相対リスク比1.52、絶対差約14%の上乗せでした。一方で症候性頭蓋内出血は3.8%対0.5%と増加、90日死亡は双方11%で差はありませんでした。
ここでのmRSは0が後遺症なし、1は軽い症状だが日常生活に支障なし、6が死亡を意味します。「0–1」は“生活にほぼ支障がない”到達点で、患者さんと家族にとって非常に重要な指標です。
つまり、発症から時間が経っていても“救える脳”を画像で確認できれば、点滴治療で良い回復を得る確率を上げられる可能性がある――これが結論です。ただし、出血リスクも確かに上がるため、適応の見極めとチーム管理が不可欠だといえます。
【②対象と検査:誰が適応で、何を調べる?】
対象は発症4.5〜24時間の虚血性脳梗塞で、CTのパフュージョン(血流)画像により「救済可能」(ペナンブラ)が残る人です。これは、すでに壊死した“脳の芯(コア)”と、まだ助けられる“周辺の脳(ペナンブラ)”を数値で分ける検査。
具体的には、虚血コアの体積が小さく、コアと低灌流領域の“ミスマッチ”が一定以上ある、といった基準で選別されます。太い血管の詰まり(大血管閉塞)がなくても適応となり得る点は実臨床で重要です。
「起床時に気づいた」「最終健常時刻が不明」のケースも、時間の中央値(推定オンセット)を使って選べる仕組みでした。日本でも同様に、画像で“脳が助かる余地”を見極めることが鍵です。
なお、機械的血栓回収(血管内治療)を予定している患者は本試験の対象外でした。施設事情で回収術が遅れる・難しい場合に、点滴治療が現実的な選択肢となる場面を想定した設計です。
【③実臨床の意味:地域医療でどう活かす?】
第一に、CTとCTパフュージョンが取れる連携体制が鍵です。画像再構成ソフトは多様でも運用可能で、“現場で回せる”ことに価値があります。救急外来で迅速に撮像・読影し、適応判断を標準化しましょう。
第二に、リスクとベネフィットの共有です。出血の確率は確かに上がりますが、機能予後の改善が期待できる人を見極めれば、総合的な利益が見込めます。説明は平易に、同意は丁寧に行います。
第三に、時間は依然として「脳」です。24時間まで可能性が広がったからといって、悠長に構えるのは禁物。迷ったら救急要請、「FAST(顔・腕・ことば・時間)」で一刻も早く受診を。前方搬送の仕組みも地域で整えておく価値があります。
最後に、併存症や原因別の層別化が今後の課題です。とくに頭蓋内動脈硬化が疑われる患者で恩恵が大きい可能性が示唆されており、病型に応じた最適化が進むと期待されます。
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【まとめ】
・血流画像で“救える脳”を見極めれば、発症後24時間でもアルテプラーゼが機能予後を改善し得る。
・症候性出血は増えるため、適応判断とモニタリングが必須。死亡率は差がなかった。
・地域連携と迅速撮像が、患者のチャンスを広げる鍵。
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【引用情報(一般向け)】
・HOPE試験:Alteplase for Acute Ischemic Stroke at 4.5–24 Hours. JAMA, 2025(オンライン:2025-08-07)
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/10.1001/jama.2025.12063
・EXTEND試験:Perfusion imagingで9時間まで拡大(NEJM, 2019)
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1813046
・TIMELESS試験:4.5–24時間のテネクテプラーゼ(NEJM, 2024)
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2310392
・TRACE-III試験:回収術なしの大血管閉塞でのテネクテプラーゼ(NEJM, 2024)
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2402980
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【FASTとは?】
脳梗塞を疑うサインを覚える合言葉です。
F(Face):顔の片側が下がる、ゆがむ
A(Arm):片腕や片足に力が入らない
S(Speech):言葉が出ない、ろれつが回らない
T(Time):時間との勝負、すぐに救急要請
