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発症年齢が10年遅れる?パーキンソン病と生活習慣薬の関係を解説
【パーキンソン病と薬の意外な関係】
パーキンソン病は、高齢になるほど発症リスクが高まる進行性の神経疾患です。震えや筋肉のこわばり、動作の遅れなどが特徴で、完治する治療法はまだ確立されていません。そんな中、身近な薬がパーキンソン病の発症年齢に影響を与える可能性があることが、新たな研究で示されました。
アメリカ・ロサンゼルスのCedars-Sinai Medical Centerが発表した研究では、約1,200人のパーキンソン病患者を対象に、さまざまな薬の服用履歴と発症年齢の関係を調査しました。その結果、以下の3つの薬を発症前に使用していた人は、発症年齢が平均で4〜10年遅れていたことが分かりました。
- アドレナリン遮断薬(β遮断薬など)
- スタチン(コレステロールを下げる薬)
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬、アスピリンなど)
特にアドレナリン遮断薬を早期から使っていた人では、平均発症年齢が72歳と、使用していなかった人に比べて約10年も遅れていました。
【なぜ発症が遅れるのか?薬の持つ“神経保護”効果】
では、これらの薬がどのようにして発症年齢を遅らせているのでしょうか。研究では、以下のようなメカニズムが示唆されています。
● アドレナリン遮断薬(β遮断薬など)
心臓病や高血圧の治療で使われるβ遮断薬は、交感神経の過剰な興奮を抑える働きがあります。これにより、脳内の炎症や酸化ストレスを軽減し、神経細胞を守る可能性があると考えられています。
特に、プロプラノロールなどの一部の薬は、初期診断で本態性振戦と誤認された患者に多く使用されていましたが、これらを除いた他のβ遮断薬ではより強い関連が見られました。
● スタチン(脂質異常症治療薬)
コレステロールを下げる作用のあるスタチンは、脳内の炎症を抑える働きもあります。アルファ・シヌクレインというたんぱく質の異常な蓄積を防ぎ、神経変性を遅らせる可能性があるといわれています。
スタチンを発症前に使っていた人は、使用していなかった人に比べて発症年齢が約9年遅れていました。
● NSAIDs(アスピリンやイブプロフェンなど)
痛みや炎症を抑えるNSAIDsも、脳内の炎症を軽減する作用があり、神経を守る効果が期待されています。特にアスピリンを長期で使用していた人では、より発症年齢が高い傾向が見られました。ただしβ遮断薬やスタチンと比べて常用には専門的な判断が必要です。生活習慣病があるからといって不必要に常用すべきではありません。
【逆に発症年齢を早める可能性のある要因も】
この研究では一方で、以下の2つの要因がパーキンソン病の発症を早める可能性があることも示されました。
● 喫煙歴
過去10年以内に喫煙していた人では、パーキンソン病の発症が平均して5年早かったと報告されています。ただし、喫煙者の割合が非常に少なく(全体の5%未満)、統計的なバイアスも考慮する必要があります。
● 家族歴(遺伝的要因)
家族にパーキンソン病患者がいる場合、遺伝的な影響で発症年齢が早まる可能性があることも分かっています。特に単一遺伝子異常によるタイプでは、若年発症型が多くみられます。
【まとめ:予防と治療のヒントが身近な薬に?】
今回の研究は「市販薬や高血圧・高脂血症の治療薬が、パーキンソン病の発症を遅らせる可能性がある」という重要な示唆を与えてくれます。もちろん、予防や治療を目的として安易にこれらの薬を使うべきではありませんが、将来的な治療戦略や薬の再活用(ドラッグリポジショニング)に役立つ可能性があります。
今後、より大規模かつ前向きな研究が進めば、私たちの生活習慣や内科的治療が神経変性疾患の予防にもつながる時代が来るかもしれません。
【参考文献】
- Malatt C et al. Adrenergic blockers, statins, and non-steroidal anti-inflammatory drugs are associated with later age at onset in Parkinson’s disease. Journal of Neurology. 2025;272:255. https://doi.org/10.1007/s00415-025-12989-2
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