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高齢者のインターネット利用と認知症予防|最新研究と実践法
「ネットは難しい」そう感じる方ほど、実はチャンスがあります。最近の研究では、高齢者のインターネット利用が認知症リスクの低下と結びつく可能性が示されています。本稿では、その理由、効果が出やすい人の特徴、そして今日からできる実践法を、内科・脳神経内科・リハビリ専門医の視点でわかりやすく解説します。
【認知症予防の仕組み|キーワード:認知予備能・社会刺激】
脳は鍛えれば応えてくれる臓器です。新しい情報に触れ、考え、交流するほど「認知予備能(予備の脳力)」が積み上がります。この予備能が高いほど、加齢や軽い病変があっても日常機能を保ちやすく、発症や進行を遅らせる力になります。ネット利用は、検索、買い物、地図、動画、メールや通話など多様な課題を通じて脳の複数領域を同時に刺激します。さらに離れた家族や友人と繋がることで「社会的な刺激」も得られ、孤立を防ぎます。
【効果が出やすい人|キーワード:高齢・活動性・デジタル格差】
国内コホート研究では、65歳以上の機能自立者5451人を平均5.5年追跡し、「月に数回以上」ネットを使う人で認知症の発症率が低い傾向が示されました。機械学習(一般化ランダムフォレスト)により、効果には個人差も見えました。概ね、①70代前半〜後半、②これまで社会参加や歩行時間が少なめ、③学歴が高め、④中位所得、⑤中程度の人口密度地域、などで恩恵が相対的に大きいと推定されます。言い換えると、外出や交流が少なく刺激が不足しがちな方ほど、ネットが「代替の刺激源」になりやすいのです。一方で、所得が高くてもデジタル活用が不得手だと効果は伸びにくい可能性があり、単なる普及だけでなく「使い方支援」が重要だと示唆されます。
【今日からできる実践|キーワード:安全・継続・社会参加】
まずは小さく始めましょう。スマホの「音声入力」で検索し、気になる症状や薬の一般情報を調べる練習から。文字が苦手でも音声ならハードルが下がります。次に「家族とのビデオ通話」を週1回。日程を固定し、短時間でも顔を見て話すだけで脳は活性化します。続いて「地図アプリで最寄りの公園まで徒歩ルート」を調べ、週2〜3回の散歩に活かしましょう。オンラインの刺激をオフラインの行動に結びつけると、運動と社会参加が同時に増えます。学びたい人は市町村のスマホ講座や、図書館のデジタル教室を活用。「目的のあるネット利用(買い物、予約、学習)」は続きやすく、記憶・注意・判断のトレーニングになります。セキュリティ面は①パスワードは長く、②不審SMSは開かず、③公式アプリのみ導入、の3点を徹底。迷ったら家族やかかりつけに相談しましょう。
【よくある疑問への答え|キーワード:時間・目・依存対策】
「何分やれば良い?」―目安は1日15〜30分、週4〜7日。テレビや読書とローテーションし、姿勢や照明を整えつつ休憩を挟みます。「スマホ老眼は?」―画面を目から40cm以上離し、文字サイズを大きく。ブルーライトは就寝前1時間は控えます。「つい見過ぎる」場合は、アプリの利用時間制限を設定。予定表に“目的のある使い方”を先に書き込み、SNSは後回しにするのがコツです。
【リハビリ視点のプラスワン|キーワード:二重課題・転倒予防】
散歩中に歩数だけでなく「今日の買い物リストを覚える」「帰宅後に音声でメモする」など、運動+認知課題の“二重課題”を取り入れると前頭葉機能の刺激が増します。慣れたら信号待ちでしりとり、帰宅後に地図で経路の復習、天気アプリで翌日の歩行計画も。小さな仕掛けの積み重ねが、続く力になります。
【まとめ|キーワード:個別最適・支援・楽しむ】
ネットは「若者の道具」ではなく「誰でも使える脳のトレーニング器具」です。効果には個人差があるからこそ、無理のない目標設定と、家族・地域のサポートが鍵。まずは週1つ、新しい使い方を増やしてみましょう。「楽しめることから始める」が最短ルートです。
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【当院からのお知らせ|シーサー通り内科リハビリクリニック】
那覇市の当院では、認知症予防・もの忘れ外来、脳神経超音波、骨密度、CTによる生活習慣病評価、運動+認知のニューロリハを提供しています。スマホの始め方相談や、脳の健康習慣づくりもサポート。初診予約・ご相談は公式サイトまたはお電話でどうぞ。
【参考文献】
・Nakagomi A, Kondo K, Shiba K. Heterogeneity in the association between internet use and dementia among older adults. Arch Gerontol Geriatr. 2025. DOI: https://doi.org/10.1016/j.archger.2025.105912
・Ballard C, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. https://www.thelancet.com/commissions/dementia
