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脳卒中リハビリ|脳の再生を高める最新知見:ミクログリアと神経新生の関係
【はじめに】
脳卒中の回復はリハビリの量と質だけでなく、脳の「再生力」にも左右されます。最近の研
究では、脳の免疫細胞であるミクログリアが、脳室下帯(SVZ)にいる神経幹細胞のふるまいを変え、再生の成否に影響することがわかってきました。今回は一般の方にもわかる言葉で、「脳の掃除係」ミクログリアと神経新生の関係、そして日常のリハビリで生かせる視点を解説します。
【基礎知識|キーワード:ミクログリア・SVZ・神経新生】
ミクログリアは脳内の免疫細胞で、傷ついた細胞の片づけや炎症の制御を担います。SVZ(脳室下帯)は大人になっても神経のもと(神経幹細胞)が存在する「再生の畑」です。脳卒中などで脳にダメージが起きると、SVZの環境が変化し、幹細胞の増殖や若い神経細胞(ニューロブラスト)の生存率に影響が出ます。ミクログリアは本来サポート役ですが、状態によっては過剰に働き、芽生えたニューロンの生き残りを妨げることもあります。
【最新研究の要点|キーワード:ApoE‐LRP8・炎症・貪食(どんしょく)】
最新の動物研究では、脳梗塞モデルでSVZの血管透過性が上がり、血液成分(フィブリノーゲン等)がしみ出すとミクログリアが活性化し、未熟な神経細胞を飲み込む(貪食)頻度が増える傾向が示されました。さらに、ApoE(アポE)というタンパク質と、その受容体LRP8(幹細胞側)のやり取りが強まる時期に、ニューロンの生存が低下する手がかりも示されています。つまり「炎症の質」と「片づけの過剰さ」が重なると、せっかく芽生えた神経が育ちにくくなる可能性があるのです(詳しくは後掲の論文参照 )。ポイントは、ミクログリアの状態が一様ではなく、時間と環境(血管漏出、炎症シグナル)で変化すること。したがって、リハビリのフェーズごとに「過負荷を避けつつ炎症を鎮め、神経新生を後押しする」視点が大切です。
【実践への落とし込み|キーワード:睡眠・運動負荷・生活習慣】
①回復初期は「過度な炎症」を抑えつつ血流と代謝を整える:十分な睡眠、脱水回避、血圧・
血糖の安定化が基本です。これらは脳の微小環境を整え、再生を妨げる炎症シグナルを減らす助けになります。
②運動は「小刻みな刺激」を積み重ねる:息が上がり過ぎない中等度の有酸素運動や反復課題練習を、休憩を挟みながら回数で稼ぎます。過負荷は炎症を悪化させ、ミクログリアの「攻撃的モード」を招き得ます。
③複合課題で「神経の回路づくり」を促す:手足の運動に目や言葉、記憶課題を組み合わせることで、芽生えたニューロンのネットワーク参加を後押しします。
④栄養は「タンパク質+地中海食系」を軸に:魚・オリーブ油・ナッツ・野菜を中心に、筋肉と脳の両方の回復素材を十分に確保します。アルコールは控えめに。
⑤不安や抑うつへの早期対処:心理的ストレスは睡眠障害や炎症を介して回復を遅らせます。必要ならカウンセリングや適切な薬物治療を併用しましょう。
【リハビリ現場の工夫|キーワード:タイミング・個別最適化・安全性】
・タイミング:急性期は「安全確保+廃用予防」、回復期は「複合課題で可塑性を刺激」、維
持期は「習慣化と再発予防」に軸足を移します。
・個別最適化:麻痺の程度、注意・記憶の状態、疲労感、既往症によって負荷量と休息配分を調整します。同じメニューでも「回数×短時間」に分割すると炎症ドライブを抑えやすいです。
・安全性:転倒・誤嚥・血圧急上昇は厳重にチェック。装具や杖・歩行器の適切な選択は、訓練の質と量を安定させ、神経回路づくりの繰り返しを支えます。
【まとめ|今日からできる三つの要点】
1)睡眠・栄養・水分・血圧血糖の「土台づくり」で脳の微小環境を整える。
2)中等度負荷の運動と複合課題を「小刻み」に積み上げ、過負荷と炎症の増悪を避ける。
3)不安・抑うつや痛みを放置せず、早めに専門家に相談して回復の妨げを減らす。
【当院からのご案内(コマーシャル)】
シーサー通り内科リハビリクリニック(那覇市)では、脳神経内科専門医と経験豊富な理学療法士が、脳卒中後の段階に合わせた「小刻み×複合課題」の個別プログラムをご提供します。医療保険リハに加え、自費リハ(40分4,000円・20分2,000円・税別)もご用意。神経可塑性を高めるニューロリハ機器や生活指導まで、ワンストップでサポートします。ご相談はお気軽にどうぞ。
【参考文献・リンク(一般向け)】
・Nath S, et al. Interaction between subventricular zone microglia and neural stem cells… NatureCommunications, 2024. DOI: 10.1038/s41467-024-53217-1(学術
論文のため専門的ですが、図を見るだけでもイメージが掴めます)
