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脳神経内科認知症

認知症リスクを下げる「健康的な睡眠パターン」:7〜8時間・朝型・日中眠気なしの実践法

【睡眠と認知症の最新エビデンス】
英国UKバイオバンク33万人の追跡では、5項目で点数化した「健康的な睡眠スコア」が高いほど、認知症の発症リスクが低くなると示されました。スコアは0〜5点で、1点上がるごとにリスクは7%、つまりハザード比0.93へ低下。満点(5点)の人は0〜1点の人より全認知症のリスクが25%低く、特に血管性認知症では45%も低い結果でした。いずれも生活背景や基礎疾患を調整後の値です。

【健康的な睡眠スコア:5つの中身】
①睡眠時間7〜8時間/②朝型(モーニングタイプ)/③頻回の不眠なし/④いびきなし/⑤日中の強い
眠気なし—の各項目が1点です。特に「日中の過度な眠気がない」「7〜8時間睡眠」「朝型」の3つは、単独でもリスク低下と関連。短すぎる睡眠(7時間未満)や長すぎる睡眠(8時間超)はリスク増でした。「量」と「タイミング」と「日中の覚醒度」をセットで整える意識が、いちばんの近道になります。

【なぜ睡眠が脳を守るのか】
同研究のMRI解析では、スコアが高いほど灰白質体積が多く、白質病変(WMH)が少ない傾向でした。白質病変は「脳の血管ダメージの跡」のような所見で、加齢や生活習慣で増え、認知機能と関連します。つまり、良い睡眠は「脳の配線(白質)」を守り、結果的に血管性認知症の予防に効きやすい可能性が。なおアルツハイマー病単独の発症リスクとは明確に結びつかず、サブタイプ差が示唆されています。

【40〜55歳での効果がより大きい】
効果は40〜55歳でより顕著でした。若い段階から睡眠を整えると、将来の差が広がりにくくなります。一方で、実生活での「絶対リスク差」は高齢期の方が大きく、どの年代でも“今から整える”価値は十分。「寝だめ」は推奨できず、毎日のリズムで勝負。平日・休日の起床時刻差は±1時間以内が理想です。交代勤務などで難しければ、起床後の朝光・短時間運動・就床前90分の入浴などで補助しましょう。

【今日からできる実践5ステップ】
①起床後に屋外で朝光を浴びる(体内時計を「朝」に合わせ、夜の眠気を前倒しにします)。
②就床・起床時刻を固定(±30〜60分)。「まず起床固定」から始めると全体が整いやすくなります。
③カフェインは就床6時間前まで、アルコールは「入眠は助けても中途覚醒を増やす」ので控えめに。
④就床90分前の入浴・就床前30分のデジタル断食・寝室を暗く静かに涼しく(18〜20℃が目安)。
⑤日中の「強い眠気」を放置しない。睡眠時無呼吸や過眠症の兆しなら医療機関で評価しましょう。

【不眠が続くときの対処】
2〜4週以上の入眠困難・中途覚醒が続いたら、まずは生活リズムの是正に加え、不眠の認知行動療法を。薬に頼りすぎず、刺激制御や睡眠制限など「脳の学習」を活かす方法が第一選択です(専門家に相談)。いびき・無呼吸が疑われる場合は検査で重症度を見極め、CPAPや口腔内装置などの治療を検討します。レム行動障害など異常行動があれば、神経内科での精査が安全です。早めの評価が合併症を防ぎます。

【限界と注意点】
今回の知見は観察研究であり、因果関係を断定できません。自己申告の睡眠項目で誤差もあり得ます。それでも、生活・疾患・遺伝要因を調整した上で一貫した関連が示され、複数の感度分析でも頑健です。「完璧な朝型」を目指すより、自分の生活に沿った“乱れにくいリズム”を設計し、継続することが重要。できることから一つずつ。7〜8時間・日中眠気の軽減・朝光の3点セットだけでも十分価値があります。

【まとめ】
健康的な睡眠パターンは、脳の白質を守り、特に血管性認知症のリスク低下と関連しました。
40代からの取り組みがより効きやすい一方、何歳からでも遅すぎることはありません。今日から一歩を。睡眠は「投資」。小さな習慣の積み重ねが、5年後・10年後の“考える力”を静かに支えてくれます。気になる症状(大いびき、日中の強い眠気、不眠の慢性化)があれば、遠慮なく専門医にご相談を。

【当院からのお知らせ(那覇市・シーサー通り内科リハビリクリニック)】
当院は内科・脳神経内科・リハビリを標榜し、睡眠と脳の健康を重視。いびき・無呼吸の簡易検査、不眠の生活指導、片頭痛や脳血管リスクの総合評価、運動・栄養・生活リズムの個別調整まで対応。「寝ても疲れが取れない」「日中の眠気が強い」「物忘れが不安」—まずはお気軽にご相談ください。公式サイトやWeb問診から24時間予約OK。地域の皆さまと、質の高い“眠りと脳の健康”を育てます。

【参考文献・リンク(一般向け)】
Wei T, Chang J, Zhao Y, et al. Associations of adherence to a healthy sleep pattern with the dementia risk in the UK biobank. Alzheimer’s Research & Therapy (2025). https://doi.org/10.1186/s13195-025-01864-x