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リハビリテーション科一般内科感染症

ロングCOVIDのリハビリと薬の位置づけ:日常生活を取り戻す実践ガイド

【ロングコロナとは何か:症状と仕組みをやさしく解説】
ロングコロナは、新型コロナ感染が治ったあとも、だるさや息切れ、集中力低下などが続く状態です。発症から数週間〜数か月以上、仕事や家事、運動に支障が出ることがあり、生活の質が大きく落ちます。
原因は一つではなく、慢性の炎症、血管の不調、自律神経の乱れ、ミトコンドリア機能の低下などが示唆。
「慢性炎症」は、体のなかで火がくすぶるイメージで、倦怠感や息切れ、頭が働かない感じを生みます。「自律神経の乱れ」は、脈や血圧、体温調節の不安定さにつながり、立ちくらみや疲れやすさを起こします。「ミトコンドリア不全」は、細胞の発電所の元気がなくなる状態で、少し動いただけでガス欠になります。こうした複合要因が絡み合い、いわば“多型(エンドタイプ)”の病態をつくるのがロングコロナの難しさ。つまり、誰にでも効く“特効薬”を見つけにくく、リハビリや生活調整を核に、薬は補助役になることが多い。

【最新エビデンス:コルヒチンは長期症状を改善するか】
痛風や心血管炎症で使われる抗炎症薬コルヒチンが、ロングコロナにも効くのではと注目されました。
理由は、炎症の起点となる「NLRP3インフラマソーム」を抑える作用があり、理屈として筋が通るためです。
しかし、2025年JAMA Internal Medicineの多施設ランダム化試験は明確な結論を示しました。対象は長引く症状をもつ成人346人、最大26週の投与で、運動能力(6分間歩行距離)が主な評価項目です。
結果は、52週時点でコルヒチン群とプラセボ群に有意差はなく、臨床的に意味ある改善は認めませんでした。呼吸機能、炎症マーカー、生活の質、気分の指標(不安・抑うつ)など副次評価も、概ね差はありません。安全性は概ね許容範囲でしたが、ベネフィットが乏しい以上、日常診療の第一選択にはなりにくい結論です。

以上より、「コルヒチン単剤でロングコロナを広く改善」は支持されず、別方向の治療探索が必要です。

【今日から実践:回復を進めるリハビリとセルフケア、薬の位置づけ】
第一は「ペーシング(配分)」です。良い日も頑張り過ぎず、疲労の山ができない範囲で活動量を刻みます。
「症状日記」をつけ、起床時の疲れ、歩数、心拍、睡眠、仕事量を見える化し、増減の“許容幅”を把握します。
運動は段階的に。最初は息切れを起こさない範囲の歩行や関節可動域訓練、呼吸リハから静かに始めます。
呼吸法は「口すぼめ呼吸」や横隔膜呼吸が有効です。息切れの不安を軽くし、酸素効率を上げやすくします。
起立性不調がある人は、着圧ストッキング、水分・塩分の最適化、下肢筋トレで循環サポートを行います。
ブレインフォグ対策は、短時間の集中→小休止のリズム化、画面時間の制限、スケジュールの単純化が基本。
睡眠衛生は極めて重要です。就床時刻の固定、就寝前90分の入浴、寝室の暗さ・静けさ・温度の整備が土台。
栄養面は、タンパク質・鉄・亜鉛・ビタミンDなど、回復期に欠かせない基本栄養の不足をまず埋めます。
「薬」は症状別に慎重に選びます。痛みには非薬物療法を優先し、必要最低限の鎮痛薬を短期で用います。
不眠・不安には生活介入+必要に応じて短期薬物療法、起立性不調には専門医のもとで段階的に対応します。
補完療法はエビデンスの濃淡が大きい領域です。効果の約束はできませんが安全性の吟味を最優先にします。
研究段階の薬剤(例:代謝系や免疫調整系)も報告はありますが、個別適応と有害事象の監視が不可欠です。
そして何より、過度な期待と失望を避けるため、最新エビデンスに基づいた“現実的な回復曲線”を共有します。
完全に元どおりではなくても、「去年より今が動ける」という、緩やかな右肩上がりを一緒に目指します。

【まとめ:いまできる最適解】
コルヒチンは理論的に期待された薬ですが、高品質試験で“明確な全体効果なし”という結果でした。
したがって、現時点の最適解は、ペーシングを軸にした段階的リハと、症状別の的確なピンポイント治療です。研究は加速しています。エンドタイプ別(炎症優位型、循環・自律神経型など)の個別化に期待が集まります。
一人で抱え込まず、専門職チーム(内科・脳神経内科・リハビリ)の伴走で、回復の階段を安全に登りましょう。

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■参考文献・リンク(主要ソース/クリニックサイトに転載可)
・Bassi A, Devasenapathy N, et al. Effectiveness of Colchicine for the Treatment of Long COVID.
 JAMA Internal Medicine. Published online 2025-10-20. (本文結論要旨を引用)
 https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/10.1001/jamainternmed.2025.5408
・Peluso MJ, Deeks SG. Mechanisms of long COVID and the path toward therapeutics. Cell. 2024.
 doi:10.1016/j.cell.2024.07.054(病態の総説:炎症・自律神経・ミトコンドリア仮説など)
・Bramante CT, et al. Lancet Infect Dis. 2023(急性期メトホルミンで長期症状を減らす可能性の試験)