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軽度認知障害(MCI)からアルツハイマー型認知症へ:進行リスクと今日からできる予防
【はじめに】
軽度認知障害(MCI)は「もの忘れが増えたが、生活は自立」の状態を指します。
放置すると一部の方が認知症に進むため、進行リスクと対策を知ることが大切です。
難しい専門用語はできるだけ噛みくだき、家庭で実践できる工夫までまとめました。
【MCIと進行リスクの基礎】
MCIは正常加齢と認知症のあいだに位置する段階で、早めの対策が有効になります。
近年の大規模研究では、年齢が上がるほどアルツハイマー型認知症(DAT)へ進みやすく、
70〜90代で進行が目立つこと、また男性では若い世代で進行しやすい傾向が示されました。
体重が少なすぎる(やせ)は進行リスクを高め、逆に標準〜やや高めは悪影響が少ない結果も。
さらに糖尿病、冠動脈疾患、脳出血の既往、抑うつ、運動不足などが独立したリスクでした。
一方、高血圧や虚血性脳卒中、脂質異常症は調整後にリスク増と結びつかない報告もあります。
「適量の飲酒」「都市部在住」「所得が高い」は、統計上リスク低下と関連が示されました。
ただし飲酒は“適量”が前提で、個々の病気や薬との相性を医師と確認することが大切です。
【用語をやさしく】
アルツハイマー型認知症:記憶障害から始まりやすい最も多いタイプの認知症です。
冠動脈疾患:心臓の血管が狭くなる病気(狭心症・心筋梗塞など)を含みます。
抑うつ:気分の落ち込みや意欲低下が続く状態。治療により改善が期待できます。
【今日からできる予防アクション】
第一は血糖管理です。糖尿病は進行リスクと強く関係します。
主治医の指示で薬や食事、運動を組み合わせ、HbA1cと日々の変動の両方を整えましょう。
第二は「からだを動かす」こと。週150分の中強度運動(速歩など)を目標にします。
いきなり長時間は不要。1回10〜20分×複数回の合計でも脳は十分に恩恵を受けます。
立ち上がり回数テストや、1日6000〜8000歩の歩数目安は、取り組み管理に役立ちます。
第三は抑うつへの対応。気分が晴れない、興味がわかない、睡眠が乱れる等が続けば受診を。
薬物療法に加え、日光を浴びる散歩や人との交流、役割づくりは脳の活性化に効果的です。
第四は栄養と体重。やせ過ぎは要注意。たんぱく質・野菜・果物・良質な脂を適量摂りましょう。減塩・地中海食・和食の良いとこ取りは、血管と脳の両方を守る現実的な選択肢です。
第五は「生活の段取り」。服薬・予定・お金の管理は、家族とアプリ・メモで見える化します。同じ手順を繰り返すルーティン化、片づけやすい収納、失くし物のラベル化も実力を発揮します。
【外来でよくある質問(Q&A)】
Q:MCIは必ず認知症になりますか?
A:いいえ。進む方もいれば、安定する方、改善する方もいます。生活習慣の整備が要です。
Q:お酒は飲んでも良い?
A:体質・病気・薬で異なります。少量なら統計的に不利でない報告もありますが個別判断です。
Q:運動は何から?
A:まずは速歩から。余力があれば筋トレ(椅子立ち・つま先上げ)を週2〜3回追加しましょう。
Q:脳トレは?
A:読み書き・計算・会話・楽器・社会活動など、好きで続けられる活動を複数組み合わせます。
Q:検査や薬は?
A:原因の見極め(甲状腺・ビタミン・睡眠・薬の副作用)と、既存疾患の最適治療が重要です。
【まとめ】
MCIからの進行は「年齢」「糖尿病」「抑うつ」「運動不足」「やせ」の影響が大きいと示されます。一方で、適量飲酒や都市居住といった背景因子は調整後に不利でない可能性が示されました。私たちが今日から変えられるのは、血糖・運動・気分・栄養・生活管理。
できる一歩を積み重ね、家族や医療者と「続けられる計画」を育てていきましょう。
【当院からのお知らせ】
シーサー通り内科リハビリクリニック(那覇市)では、内科・脳神経内科・リハビリを総合的に提供。
認知症外来ではMCI評価、生活習慣の個別計画、運動リハ(PT/OT)、抑うつケアまで一体で支援。
頭痛・脳卒中後のリハ、脂質・糖尿病・高血圧の管理もワンストップで対応します。
公式LINEやWeb問診で予約がスムーズ。ご家族の相談も歓迎です。お気軽にご相談ください。
【引用情報】
Baik K, Kang M, Park YJ, et al. Twelve-year nationwide cohort study identifying risk factors for conversion from mild cognitive impairment to Alzheimer’s disease. Scientific Reports. 2025;15:35418. doi:10.1038/s41598-025-16620-2
