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リハビリテーション科

1回5分以下でOK?運動スナックがフィットネスと健康に与える効果

【運動スナックとは?1回5分以下の“すき間運動”】
「運動しなきゃ…」と思いながら、まとまった時間が取れずに先延ばしになっていませんか。
最近注目されている「運動スナック(exercise snacks)」は、そんな方にぴったりの新しい考え方です。

運動スナックとは、1回5分以内の短い運動を、1日に2回以上、週3日以上行うスタイルを指します。内容は特別なものではなく、階段の上り下り、スクワット、もも上げ、腕立て伏せなどシンプルな動きです。

ポイントは、「あえて時間を決めて」「少しきつい中強度~やや息が切れる強度」で行うことです。なんとなく動くのではなく、短時間の“ミニ運動”を積み重ねていくイメージと考えてください。

世界保健機関(WHO)は、成人に「週150~300分の中強度、または75~150分の高強度の運動」を推奨しています。
しかし、運動習慣のない人がいきなりこの量をこなすのはハードルが高く、ここが挫折のポイントでもあります。そこで、「長い運動は無理でも、短い運動ならできる」という発想から生まれたのが運動スナックです。
“毎日ちょっとずつ”を積み重ねることで、運動ゼロから一歩踏み出すための橋渡しになると期待されています。

【最新研究でわかった効果:体力アップは○、血圧・脂質は△】
今回ご紹介するのは、英医学誌 British Journal of Sports Medicine に2025年に掲載された最新のメタ分析です。British Journal of Sports Medicine+1
運動不足の成人・高齢者(計414人)を対象に、11本のランダム化比較試験の結果をまとめています。

研究では、運動スナック群と「特に運動しない対照群」とを比較し、体力や血圧、血液検査などを解析しました。
介入期間は4~12週間で、週3~7日、1日2回以上、ややきつい~かなりきつい強度の運動が組み合わされていました。

まず、大人(若年~中年)では「心肺フィットネス(心肺持久力)」が有意に改善していました。
心肺フィットネスとは、全身に酸素を送る力=持久力で、将来の心筋梗塞や脳卒中、死亡リスクとも強く関係する重要な指標です。

効果の大きさを示す指標では、中等度の改善が認められており、「短時間でも侮れない変化」といえます。
特に、もともと運動していない人ほど、少ない運動でも心肺機能が伸びやすいことが知られており、理にかなった結果と言えます。Scribd+1

一方で、高齢者では「筋持久力(同じ動きを続ける力)」に小さいながら有意な改善が見られました。ただし、研究数が少なく、証拠の確実性は「非常に低い」と評価されており、今後の研究が必要です。気になる血圧、体重、体脂肪、コレステロールなどの「心臓代謝(心臓と代謝の)リスク」に関してはどうでしょうか。
このメタ分析では、いずれも有意な改善は認められず、「運動スナックだけで生活習慣病が劇的に良くなる」とまでは言えませんでした。

ただし、試験期間が4~12週間と比較的短く、食事や他の生活習慣はバラバラであるなど、限界も指摘されています。
長期的に続けることで、体重や血圧に変化が出てくる可能性はあり、今後の長期研究が期待されます。

もう一つ大事なポイントは、「続けやすさ」です。
今回の研究では、運動スナックの実施率(コンプライアンス)は91%、最後まで続けられた人の割合(アドヒアランス)は83%と非常に高い数字でした。

つまり、「長い運動は続かないけれど、短時間なら続けやすい」という、多くの人のリアルな感覚を裏付ける結果といえます。
健康効果だけでなく、「続けられる形で習慣化できるかどうか」が、運動スナックの最大の強みといえるでしょう。

【今日からできる運動スナックの始め方と注意点】
では、実際にどのように始めれば良いのでしょうか。
ここでは、運動不足の方やご高齢の方でも取り入れやすい、具体的な方法をご紹介します。

① 階段を使う
エレベーターやエスカレーターの代わりに、1日2~3回、1~2階分だけ階段を上り下りします。息が弾んで少しきついくらいを目安に、手すりを使いながら安全第一で行ってください。

② デスク前スクワット
仕事や家事の合間に、椅子からの立ち座りを10~15回、1セットとして1日数回行います。
膝や腰に不安がある方は、浅めの立ち座りや、テーブルに手を添えて行うなど、無理のない範囲で調整しましょう。

③ もも上げ・かかと上げ
キッチンでお湯が沸くのを待つ間などに、その場でのもも上げや、かかと上げ(つま先立ち)を30秒~1分行います。
転倒予防のため、必ずキッチン台や机などに片手を添えて実施するのがおすすめです。

④ 外出時は「一駅ぶん歩く」ミニ散歩
バス停1つ分、駐車場から少し遠くに停めるなど、「目的地までの最後の数分だけ早歩きする」のも立派な運動スナックです。
天候が悪い日は、屋内の廊下を使ったウォーキングでも構いません。

◎ 始めるときの注意点
・息が弾むが会話はできる程度(中等度のきつさ)を目安にしましょう。
・胸の痛み、強い息切れ、めまいなどが出た場合はすぐに中止し、医療機関にご相談ください。

・高血圧、心臓病、糖尿病、脳卒中の既往がある方は、自己判断で無理をせず、主治医と相談したうえで強度や回数を決めましょう。
・あくまで「短時間のきっかけ作り」であり、可能であれば将来的にはWHOが推奨する週150分以上の運動を目指すことが理想です。

【まとめ:ゼロから“一口サイズ”の一歩を】
今回の研究から、運動スナックは「運動不足の大人の心肺フィットネスを高める」ことが、比較的確かな証拠とともに示されました。
一方で、体重や血圧、コレステロールなどの改善については、現時点でははっきりした効果は示されていません。それでも、「続けやすさ」と「体力アップ」という点で、運動スナックはとても魅力的な選択肢です。まずは1日2回、1回1~5分の“ミニ運動”から、運動ゼロの生活に小さな穴をあけてみましょう。大切なのは、「完璧な運動」より「続けられる運動」を選ぶことです。
運動スナックをきっかけに、将来的に少しずつ運動時間を増やしていければ、それが一番の理想形と言えます。

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◆シーサー通り内科リハビリクリニックからのご案内◆
当院では、内科・脳神経内科の専門診療に加え、理学療法士による個別リハビリや運動指導も行っています。「運動不足だけれど何から始めて良いかわからない」「心臓や脳に持病があり運動が不安」という方も、お気軽にご相談ください。血圧・血糖・コレステロールなどのチェックとあわせて、患者さん一人ひとりの体力や病気に合わせた“運動スナック”や歩行プログラムをご提案します。
那覇市近郊で運動と生活習慣病の相談先をお探しの方は、シーサー通り内科リハビリクリニックまでご連絡ください。

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参考文献・リンク
Rodríguez MA, et al. Effect of exercise snacks on fitness and cardiometabolic health in physically inactive individuals: systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2025.
https://doi.org/10.1136/bjsports-2025-110027 British Journal of Sports Medicine+1 Bull FC, et al. World Health Organization 2020 guidelines on physical activity and sedentary behaviour. Br J Sports Med. 2020.
https://bjsm.bmj.com/content/54/24/1451British Journal of Sports Medicine+1