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認知症予防に“歩数”が効く?Nature Medicineの最新研究をわかりやすく解説
【はじめに】
アルツハイマー病は発症の20年以上前から脳の変化が進むことが知られており、
この「前臨床期」にどれだけ介入できるかが予防の鍵だと考えられています。
今回、Nature Medicine に掲載された最新研究では、
“日々の歩数”というシンプルな指標が、脳の変化と密接に関係していることが示されました。
本記事ではこの研究内容を、一般の方にもわかりやすく解説します。
【① 運動とアルツハイマー病の関係:何がわかったのか】
研究は 296 名の健康な高齢者を対象に、最大 14 年追跡した大規模試験です。
参加者は認知症を発症しておらず、日常生活は問題なく送れていました。
特徴は、歩数を“機械で客観的に測った”点です。
多くの研究が自己申告のアンケートに依存する中、大きな強みといえます。
研究結果の最も重要なポイントは、
**「歩数が多いほど、“脳内のタウたんぱく”の蓄積が遅くなる」**という発見です。
タウはアルツハイマー病の進行に深く関わる物質で、蓄積が増えると認知機能は悪化します。
つまり歩くことは単に体に良いだけでなく、脳の変化そのものを遅らせる可能性が示されたのです。
興味深いのは、歩数が多い人は 記憶力や判断力の低下が遅かったことです。
歩数 ⇒ タウ蓄積の減少 ⇒ 認知機能低下の遅延
という心理学的・医学的に整合する“因果に近い”構造が示されました。
【② どれくらい歩けば効果がある?1日5000〜7500歩で十分】
研究者たちは、歩数を4区分に分類しました。
- 3000歩以下:非活動的
- 3001〜5000歩:低活動
- 5001〜7500歩:中等度の活動
- 7501歩以上:高活動
最も重要な知見は次の点です。
効果は「中等度(5001〜7500歩)」で頭打ちになり、それ以上増やしても大きくは変わらない。
つまり、
✔ 1日1万歩は必要ない
✔ 5000〜7500歩で十分に“脳を守る効果”が得られる
という、現実的かつ取り組みやすい結果です。
また、基準を満たした人は、認知機能低下の速度が 40〜50%も遅くなる という非常に大きな効果が認められました。
研究チームは「特に運動習慣のない人ほど、歩数を少し増やすだけで効果が得られる」と述べています。
【③ なぜ歩くと脳が守られるのか:科学が示す3つの理由】
この研究では因果の証明まではできませんが、これまでの医学データから次の理由が考えられます。
● 1. 血流が増え、脳細胞が活性化する
高齢者では脳の血流低下が認知症リスクとなります。
歩行は血流を改善し、脳の働きを保つ助けになります。
● 2. BDNF(脳由来神経栄養因子)が増える
BDNF は脳の修復や学習力を高める“脳の肥料”のような物質です。
運動によって増えることがわかっており、タウ蓄積の抑制にも関連します。
● 3. 生活習慣病を予防できる
高血圧・糖尿病・脂質異常症は、アルツハイマー病の重要な危険因子です。
運動により血糖・血圧・中性脂肪が改善し、脳への負担を減らします。
こうした複数の作用が合わさることで、
「歩く」というシンプルな行動が脳の健康を強力に支えていると考えられます。
【まとめ:今日からできる認知症予防は“歩数の見直し”】
今回の Nature Medicine の研究は、
「認知症予防に歩行が有効である」
ことを科学的に裏づける非常に重要な報告でした。
● 1日5000〜7500歩が最も効率的
● 歩くほどタウ蓄積が遅くなり、認知症の進みも遅い
● 特に運動習慣のない人ほど恩恵が大きい
歩数はスマホやウェアラブルで簡単に測れるため、
日々の健康管理に取り入れやすい方法です。
“無理なく続けられる認知症予防”として、ぜひ今日から意識してみてください。
【引用文献(リンク付き)】
Yau WYW, Kirn DR, Rabin JS, et al.
Physical activity as a modifiable risk factor in preclinical Alzheimer’s disease.
Nature Medicine. 2025.
https://doi.org/10.1038/s41591-025-03955-6
【シーサー通り内科リハビリクリニックからのお知らせ】
当院では、認知症予防・MCI(軽度認知障害)の早期発見、
生活習慣病管理、脳神経内科専門医による鑑別診断、
さらに運動療法・リハビリ指導まで、一貫してサポートしています。
歩数の記録方法や運動の始め方なども丁寧にアドバイスいたします。
認知症が気になる方、家族の物忘れが心配な方は、どうぞお気軽にご相談ください。
