ブログ

リハビリテーション科

握力が強い人ほど健康寿命が伸びる?最新研究が示す“プレ肥満”との深い関係」

【プレ臨床的肥満とは?最新の肥満の考え方】
近年、肥満の診断基準は大きく変わりつつあります。単に体重やBMIだけではなく、
内臓脂肪の蓄積や体脂肪率の上昇といった身体の中身の変化に着目した「プレ臨床的
肥満(Preclinical Obesity)」という概念が生まれました。これは、肥満に関連する
重大な機能障害(生活習慣病や関節障害、心血管疾患など)がまだ起きていない状態
を指しますが、この段階でも将来の健康リスクは確実に高くなっていきます。

この概念は2025年にLancet Diabetes & Endocrinology誌で正式に提唱されたもので、
「肥満は単なる体重の問題ではなく、臓器や身体機能に悪影響を与える“疾患”であ
る」という視点を明確にした点が特徴です。では、このプレ臨床的肥満の段階で、
どのような人が将来のリスクを抑えられるのでしょうか。

【握力が強いほど肥満による機能障害の進行が遅くなる】
今回紹介するのは、UK Biobankの約9万3000人を対象とした2025年の最新研究
「Handgrip Strength and Trajectories of Preclinical Obesity Progression」
(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism掲載)です。

この研究では、人々を握力の強さで3つのグループに分け、平均13.4年追跡して、
プレ臨床的肥満がどのように進行していくかを調べました。具体的には、
①機能障害がない段階 → ②1つ目の障害 → ③複数の障害 → ④死亡
という“病気の進行ルート”をたどり、そのリスクを多状態モデルで解析しています。

注目すべきは、「握力が1SD(約11.6kg)強いだけで、進行リスクが大幅に下がる」
という結果です。研究データによると、
●最初の機能障害が起きるリスク:14%減(HR 0.86)
●複数の障害へ進むリスク:8%減(HR 0.92)
●死亡に至るリスク:13%減(HR 0.87)
と、握力の強い人ほど一貫してリスク低下が見られています。

さらに握力を3段階に分けた解析では、最も握力が強いグループは最も弱いグループに
比べ、死亡リスクが約23%も低いという結果も示されました。これは男女ともに
同様の傾向で、人種や生活習慣にかかわらず一貫した効果が確認されています。

【なぜ“握力”が全身の健康指標になるのか】
握力は単なる手の力ではなく、“全身の筋肉量と筋機能を反映する指標”です。

研究では、握力が強い人ほど以下の特徴が確認されていました。
●腹囲が小さく内臓脂肪が少ない
●HbA1cや中性脂肪が低く、生活習慣病のリスクが低い
●炎症マーカーCRPが低い
●身体活動量が多く、喫煙者が少ない
つまり、握力の高さは「筋肉量の維持」「代謝の良さ」「生活習慣の良好さ」を
反映しており、総合的に“健康であることのわかりやすい指標”といえるのです。

また、筋肉はエネルギー代謝を整えるホルモン(マイオカイン)を分泌しており、
筋量の低下は血糖や脂質の悪化、炎症の慢性化を招きます。こうした背景から、
握力の高い人ほど肥満関連の機能障害が起こりにくいと考えられています。

【今日からできる“握力アップ習慣”】
筋トレというと特別な器具が必要なイメージがありますが、握力は日常的な習慣で
十分に鍛えられます。例えば、
●ハンドグリップを1日5〜10分握る
●ペットボトルを持ちながら散歩する
●重い買い物袋を左右バランスよく持つ
●腕立て伏せ・懸垂など自重トレーニング
など、ちょっとした積み重ねでも握力は改善します。

特に中高年は、握力低下が生活機能の低下やサルコペニアの早期サインになるため、
“毎日の握力チェック”も健康管理の一つとしてとても効果的です。

【まとめ】
今回の研究は、「握力の強さ」が肥満の進行と将来の健康を予測する非常に強力な
指標であることを示しました。特にプレ臨床的肥満の段階では、小さな筋力の差が
将来の病気の発症や死亡リスクに大きく影響します。

体重やBMIだけでは見えない“身体の中身”を評価し、筋力維持を意識した生活を送
ることこそ、健康寿命を伸ばす最もシンプルで確実な方法といえるでしょう。

【引用文献】

Xu M, Li M, Zhang Y, et al. Handgrip Strength and Trajectories of Preclinical Obesity Progression: A Multistate Model Analysis Using the UK Biobank. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2025;00:1–12.

【当院からのお知らせ(コマーシャル)】

シーサー通り内科リハビリクリニックでは、肥満・生活習慣病の管理だけでなく、
筋力測定・身体機能評価・運動指導(理学療法士2名体制) を行っています。

「最近疲れやすい」「体脂肪が気になる」「筋力を維持したい」など、どんな相談
でもお気軽にお越しください。
あなたの健康寿命を、私たちが全力でサポートいたします!