ブログ
集中できない・思い出せない…長期コロナ後遺症の認知障害の原因と対策
【1.ロングCOVIDで“考える力”が落ちるのはなぜ?】
新型コロナ感染から数週間以上たっても、集中力が続かない、物忘れが増える、考えがまとまりにくいといった症状が続く方がいます。いわゆる「ブレインフォグ(脳の霧)」と呼ばれる状態で、長期化する方が少なくありません。
これらは医学的には「ロングCOVIDによる認知機能低下」と呼ばれ、特に働き盛りの年代でも多くみられます。米国では成人の約7%がロングCOVIDに悩んでいるとされ、社会的な問題にもなっています。
今回ご紹介する最新研究(JAMA Neurology 2025)では、長期コロナ後遺症による認知症状が改善するのかを、さまざまなリハビリ手法を比較しながら科学的に検証しています。
本記事ではその内容をわかりやすくご紹介し、日常生活でできる対策もお伝えします。
【2.脳トレ・認知リハビリ・脳刺激治療は効果があるのか?】
今回の研究では、ロングCOVIDで認知機能の低下を感じている328人が参加し、以下の5つの方法が比較されました。
● BrainHQというオンライン脳トレ
● 認知リハビリ(PASC-CoRE)+BrainHQ
● 経頭蓋直流刺激(tDCS:弱い電気刺激)+BrainHQ
● シャム刺激(にせの電気刺激)+BrainHQ
● 比較用のパズルゲーム(アクティブコントロール)
これらはすべて自宅からオンラインで受けられる形で実施され、10週間、週5日というしっかりしたプログラ
ムでした。
結果はどうだったのでしょうか。
研究では、もっとも重視された指標「日常生活での認知機能の困りごと(modified ECog2)」が測定されました。しかしどの治療法も、他の方法より明確に優れた効果は示せませんでした。
つまり…
➡ 脳トレも認知リハビリも電気刺激治療も、どれか1つが特別に効いたわけではなかった
というのが今回の結論です。
ただし重要なポイントが1つあります。
どのグループでも、参加者全体で「少し改善した」と感じている人が多かったのです。
・全体の約74%が「少し良くなった」と回答
・不調と感じた人は7%程度
このことから、治療内容そのものより、「生活リズムが整う」「誰かとつながる」「問題に向き合う」などの要素が改善に影響した可能性が指摘されています。
【3.では、ロングCOVIDの認知症状はどう向き合う?科学的にわかった3つのポイント】
最新研究の結果から、一般の方が日常生活で活かせるポイントを3つにまとめます。
① 時間とともにゆっくり改善する人が多い
研究では、治療内容に関わらず、経過とともに少しずつ症状が改善した方が多くいました。
特に…
➡ コロナ感染からの期間が短いほど改善しやすい
という傾向があり、発症から年数がたつほど改善幅は小さくなる可能性が示唆されています。
② 過度の負荷は逆効果、ゆっくりした回復が大切
ロングCOVIDでは、無理をすると「疲労がぶり返す(PEM=労作後倦怠感)」ことがあります。研究でも最初は76%がPEMを感じていましたが、治療が進むにつれて減少していました。
➡ 急に運動量や仕事量を増やすのではなく、“少しずつ” が重要です。
③ 生活全体を整えると改善が期待できる
今回の研究で示されたのは「治療技法そのものでは大きな差がない」という事実です。
つまり日常生活の中で、
・睡眠の質を整える
・ストレス管理
・軽い有酸素運動
・声をかけ合える家族・周囲の存在
・無理のない活動量の調整(ペーシング)
といった生活全体の改善が、認知症状のケアに大きく関わるということが示されたと考えられます。
【まとめ:ロングCOVIDの“脳の fog”はゆっくり回復が期待できる】
今回の大規模研究では、
● 脳トレや認知リハビリ、電気刺激治療に明確な差はなかった
● どの方法でも多くの人が「少し良くなった」と感じていた
● 過度な負荷ではなく、生活全体の調整が重要
という結論でした。
ロングCOVIDの認知症状は、薬だけで改善するものではないからこそ、「体と脳を休めつつ、生活を整える」ことが鍵となります。
もし「物忘れが増えた」「考えがまとまらない」「集中できない」といった症状が続く場合は、無理をせず早めに医療機関にご相談ください。
🔍 引用情報
Knopman DS, Koltai D, Laskowitz D, et al. Evaluation of Interventions for Cognitive Symptoms in Long COVID: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurology. Published online November 10, 2025. doi:10.1001/jamaneurol.2025.4415
当院からのお知らせ
シーサー通り内科リハビリクリニックでは、
● ロングCOVIDの診療
● 認知機能低下の評価
● 睡眠・自律神経の検査
● 理学療法士によるリハビリ
● 脳神経内科専門医による治療提案
を行っています。
「集中できない」「頭がぼんやりする」などのお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。
