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脳神経内科

「うつ病に効く自然療法?森林浴が脳に与える影響を解説」

【うつ傾向の女性に朗報!森林浴がもたらす癒しの力とは】

森林浴(しんりんよく)とは、森の中をゆっくり歩きながら自然の力を五感で感じ、心と体の健康を整える療法です。日本発祥のこの取り組みが、科学的にもうつ状態の改善に役立つ可能性が明らかになりました。

今回ご紹介する研究は、うつ病やうつ傾向のある女性に対し、森林浴がどのような効果をもたらすかを詳しく検証したものです。

【1. セロトニンと森林浴:抗うつ効果のカギとなる脳内物質】

うつ病に関係が深い物質のひとつが「セロトニン」です。セロトニンは“幸せホルモン”とも呼ばれ、気分を安定させる作用があります。うつ病の方では、このセロトニンの量が少ない傾向にあります。

研究では、31名のうつ傾向の女性(平均年齢40.1歳)を対象に、森林浴と都市散策の効果を比較しました。すると、抗うつ薬を使用していない女性では、森林浴の後にセロトニンが有意に増加することが分かりました。これは、森林浴によって脳のセロトニン分泌が促され、気分の改善につながる可能性を示しています。

一方で、抗うつ薬を服用している方ではセロトニンの上昇は見られませんでした。これは薬の影響でセロトニンの血中濃度が低下していたため、森林浴の効果が目立たなかったと考えられます。

【2. オキシトシン・IGF-1の増加:ストレス軽減と脳の修復を助ける】

森林浴後には「オキシトシン」や「IGF-1(インスリン様成長因子-1)」というホルモンも有意に増加しました。

オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、心の安定や不安軽減に関わります。このホルモンが森林浴によって増えることで、人とのつながりを感じやすくなったり、ストレスが和らいだりする効果が期待できます。

IGF-1は脳の「海馬」という記憶をつかさどる部分で新しい神経細胞の生成を助ける物質です。IGF-1の増加は、うつ病の回復を後押しする可能性があり、自然の中を歩くことが脳の“修復”に役立つかもしれません。

【3. 主観的な気分や睡眠の質にも効果:1週間持続する癒し】

参加者の気分や疲労感、睡眠の質についても、森林浴後に大きな改善が見られました。

  • 抑うつスコア(SDS) は森林浴後に明らかに低下し、その効果は1週間後まで持続。
  • 気分プロフィール(POMS) では、「怒り」「混乱」「疲労」などのマイナス感情が減り、「活力」「友好性」といったポジティブな気持ちが上昇。
  • 主観的疲労睡眠の質(起床時の眠気、睡眠の長さ) も改善されました。

都市部での散策でも多少の効果は見られましたが、森林浴の方が明らかに優れていたことが示されています。

【まとめ:自然の力を日常に取り入れて心と体を整えましょう】

今回の研究は、自然の中を歩くというシンプルな行為が、科学的にも心の健康に役立つことを証明しました。

特に、抗うつ薬を使用していない軽度のうつ傾向の方には、森林浴がセロトニンの増加を通じて気分の改善に大きく寄与する可能性があります。また、ストレスホルモンの低下や、良質な睡眠の確保にもつながります。

現代社会では、ストレスや疲労、孤独感を抱える人が少なくありません。時にはスマホやパソコンから離れ、自然の中で深呼吸をしてみる——そんな習慣が、心と体を本来のリズムに戻してくれるかもしれません。

【出典・参考文献】