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手がふるえて字が書きにくい…本態性振戦の原因と最新の非侵襲治療を解説
【本態性振戦とは:手のふるえの原因とセルフチェック】
「手がふるえてコップが持ちにくい」「字が乱れる」。
そんな症状の代表が、本態性振戦(ほんたいせいしんせん)です。
本態性振戦は、手を使う動作でふるえが目立ちやすい病気です。
世界ではおよそ1〜2%の人が経験するとされ、珍しくありません。
ふるえは命に直結しにくい一方、日常生活には大きく影響します。
食事、書字、仕事などがつらくなり、外出が億劫になる人もいます。
セルフチェックの目安は「動作で困るか」です。
食べこぼしが増えた、飲み物がこぼれる、鍵が差しにくい、など。
一方で、ふるえの原因は本態性振戦だけではありません。
甲状腺の病気、薬の影響、パーキンソン病なども鑑別が必要です。
気になる場合は、早めに医療機関で相談するのが安心です。
原因が分かるだけでも、対策が立てやすくなります。
【薬が効きにくい現実:本態性振戦治療の限界と課題】
本態性振戦の治療は、まず薬から始めることが多いです。
よく使われる薬として、β遮断薬や抗てんかん薬などがあります。
ただ、薬だけで十分に改善しない人も少なくありません。
報告では、代表的な薬でも30〜50%は反応が乏しいことがあります。
効いたとしても「ふるえが半分くらいになる」イメージが多いです。
副作用で続けにくい、という悩みもよく聞きます。
では、次の選択肢は何でしょう。
脳の深い部分を狙う治療(手術や集束超音波)もありますが、
体への負担や費用、適応の問題で全員が受けられるわけではありません。
そこで近年注目されているのが、「体の神経を刺激して脳の回路に働きかける」
非侵襲(ひしんしゅう:体を切らない)治療です。
【最新治療TPNS:AI末梢神経刺激で日常生活はどこまで改善?】
最近の臨床試験で検討されたのが、TPNSという治療です。
手首に装着する機器で、腕の主要な神経(3本)を刺激します。
特徴は、AIが刺激の設定を“その人の状態”に合わせて調整する点です。
活動量や動きのデータをもとに、刺激の強さや順番などを最適化します。
試験では、本態性振戦の患者さんがTPNS群と偽装(シャム)群に分かれ、
90日間、日中に装着して生活する形で効果が比べられました。
結果は「日常生活の困りごと」が改善した、という内容でした。
TETRASという評価尺度のmADL(生活動作に関する点数)が、
TPNS群で平均6.9点改善し、シャム群は2.7点の改善でした。
つまり、偽装よりもしっかり上乗せ効果が見られた、ということです。
差が出始めたのは早期というより、2週間以降で広がっていきました。
一方で注意点もあります。
副作用として最も多かったのは皮膚トラブル(かぶれ等)でした。
TPNS群で約3人に1人にみられ、装着型ならではの課題です。
この治療は、薬が効きにくい人の「次の一手」になり得ます。
ただし、すべてのふるえに当てはまるわけではありません。
まずは原因の見極めと、今の困りごとを整理することが大切です。
「字が書けるようになりたい」「食事を人前で普通にしたい」など、
目標が具体的だと、治療選択もぐっと進めやすくなります。
当院からのご案内(コマーシャル)
シーサー通り内科リハビリクリニック(那覇市)では、
手のふるえ・書字のしづらさ・日常生活の困りごとについて、
原因鑑別(内科+脳神経内科の視点)から、生活の工夫や
リハビリ的アプローチまで、まとめてご相談いただけます。
「薬を増やす前に、できることを整理したい」
「本態性振戦かどうか、まず確認したい」
そんな段階でも大丈夫です。お気軽にご相談ください。
引用
・Ondo WG, et al. Transcutaneous Peripheral Nerve Stimulation for Essential Tremor:
A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurology. Published online Oct 20, 2025.
doi:10.1001/jamaneurol.2025.3905
